熊木杏里 Singles
 
 
 
1st 『 窓絵 / りっしんべん / 時計 』(02.2.21)
 
 「雨も降るけど 雪も降るけど 心の天気に晴れはない」・・・このフレーズが頭から離れていかないタイトル曲。
窓絵の向こうにはまだ自分の知らない世界が広がっている。でもどこかに行こう、とか何かを始めよう、とかそう
いう希望を持てない主人公の心象風景が広がる楽曲。2曲目は”自分は生きている”という自分の存在を自分自
身で感じることのできない主人公の心を描いた歌。”生きてる”ってこと自体が素晴らしいことのはずなのに、この
主人公は誰かがいないと自分が存在してるんだっていう実感を持つことができない。う〜む、十代の頃ボクも似
たような思いしたなあ(苦笑)。3曲目は十八の誕生日に君がくれた時計はその日から命を打ち始め、そして十九
の誕生日・・・つまり君と別れてしまった日にその鼓動を打つのをやめてしまったよ、という二人の時間を刻み続
けた時計をモチーフに描かれた曲。君との思い出を心の奥にしまうように時計を戸棚の奥にしまう・・・悲しいね。
 
 
2nd 『 咲かずとて / 二色の奏で / まよい星 』(02.8.21)
 
 「人は求めないほうが幸せなのだろうか」・・・確かに知らなければよかったこととか、求めなければもっと平穏
な人生が送れたのかも・・・っていうことってあると思う。タイトル曲は、その愛が叶うことのない男性を愛してしま
った女性のどこにもいけない悲しい心情を綴った楽曲。誰かどこかで今この瞬間にも命を失っているというのに
自分は今こうしてそのことに何の影響もなく生きている。その理不尽さに胸を痛める2曲目はシリアスなミディア
ムテンポな曲。でも生まれたことを悩むより、生まれてこれたことを恥じることのない人生を進もうよっていうメッ
セージが響いてきます。3曲目は、自分の今いる立ち位置に悩む主人公の心のうちを描いた楽曲。世の中にい
ろんなものがあふれかえっているから自分の進むべき枝分かれの道の前で迷う・・・いろんな選択肢があるから
人は悩むんだよね。でも逆に決めつけられてしまった道しか進めない人たちがいることを考えればそれは・・・。
 
 
3rd 『 今は昔 / 冬の道 / ちょうちょ 』(03.2.21)
 
 ”時”は偉大な魔法使いであり、仲のよい友達である・・・そんな誰もが止めることのできない”時間”というテーマ
を歌にしたフォークソング。たとえ世の中で何が起こっても、”時”は微笑むことも悲しむこともしない。ただ流れて
ゆくだけなんだけど、そんな”時”をひとつの対象として歌い上げた曲なんだけど、すごく悲しい歌なんだけど、す
ごく好きな曲(笑)。2曲目は、みぞれまじりの雪が降ったあの道を君と二人で歩いたね・・・というもう戻ることので
きない愛しい人と過ごした冬の日々に想いをはせるバラード曲。若かったあの頃には見えなかった夢が今ではお
ぼろげながら見える・・・でもそれは悲しいけどその別れがあったからこそたどり着いたものなのかもしれないな。
暗く沈んだ心のうちを歌にすることの多い彼女の楽曲の中で、珍しく前向きで明るい3曲目(←失礼だ(笑))。あな
たが一緒にいてくれたら、花の蜜を探すちょうちょのように私は風に乗って生きてゆけるような気がするよって曲。
 
 
4th 『 私をたどる物語 / ヒトツ/フタツ / あなたに逢いたい 』(05.4.6)
 
 父に頬をぶたれた少年は、父を憎んで夕暮れの街にうずくまる。母に髪を切られた少女は、母を憎んで母から
生まれたことを悔やむ。だけどそれは違うよ、今こうして君が生きているのは今までのいろんな要素があったから
なんだよ・・・っていうメッセージを感じるタイトル曲。作詞 武田鉄矢・作曲 熊木杏里のコンビが放つ静かに人生を
語る物語。2曲目はNHK連続テレビ小説『こころ』の劇中挿入歌を音源化。願いごとがひとつ叶った。この世の中
にふたつとないひとつ。でもふたつの心をひとつに結びつけることはできなかったね・・・と綴る悲しい楽曲。3曲目
はもう逢うことのできない”あなた”を追い求める主人公の想いを綴った曲。街は季節が来るごとに、その表情を
変える。でも私の心はあなたに逢えなくなってからあの季節のまま・・・”あなた”の存在が自分の中ではこんなにも
大きくなっていたことに気づく彼女。でも、その想いはおそらくもう成就されることのない悲しいものなんでしょうね。
 
 
5th 『 戦いの矛盾 / 囃子唄 / いつか七夕 』(06.1.25)
 
 この国の矛盾するような問題と真正面からぶつかった3曲です。イラク戦争と絡め、今の自分の位置を「満たさ
れすぎている」と歌うタイトル曲は、たとえどんな状況に陥ったとしても、自分より不幸な身の上の人はたくさんい
て、そんな人たちを思えばもっと大切に命を使おうと思えるよね・・・ってメッセージを感じます。その土地をアメリ
カ軍に支配されている沖縄をテーマにした2曲目では、日本であるはずなのにアメリカと日本の政府の間で宙に
浮かされたままになっている愛しき場所を、彼女の視点で歌ってる。そう、今日も飛んではいけないはずの飛行
機を、あの沖縄の人々は否応なしに見送らなければならないんだ・・・。北朝鮮による拉致被害者をテーマにした
3曲目は、今この国は個人の自由を言葉では保障されているけれど、いざその個人が困った時、実際には何も
保障されてはいないんだよねって、聴いてるうちにそんな気がしてくる曲。そして償うべき償いもせず私達は・・・。
 
 
6th 『 流星 / しんきろう / 君 』(06.5.24)
 
 1曲目はアップテンポできらびやかなアレンジで描かれたラブソング。過去に手をふって二人で今までの喜びも
悲しみも同じ色に塗りかえていこうよ、と歌われた楽曲。人は苦しむために生きてるんじゃないんだよねっていう
テーマがあふれている曲です。2曲目は、人はどこまで生きても迷いやさみしさという”しんきろう”から逃れられ
ないんだっていうテーマを歌った曲。今日を閉じて明日を開く・・・生きるっていうのはただそれだけのことなんだ
けど、それだけのことに人はさまざまな想いを描く。明日を開くということは、まだ見たこともない海原に飛び出し
てゆく船出のようなものなんだよね。プロデューサー吉俣良氏の曲に彼女が詞をつけた3曲目は、出会いと別れ
をテーマにしたバラード曲。大切な人って大きな力をくれる存在なんですよね。たとえもう二度と会うことのできな
い人であったとしても・・・美しさと悲しさが同居する、でも前へ進もうとする主人公の姿が浮かんでくる曲ですね。
 
 
7th 『 新しい私になって / 風の記憶 / 朝の夜ふかし 』(06.11.22)
 
 「ほんじつ私はふられました」というあまりにも潔いフレーズで始まる、資生堂の企業イメージCMソングになっ
たバラード曲。彼女はこの曲の中で「とにかく新しい私になって あなたを忘れます」と誓うけど、きっと忘れられ
ない自分に言い聞かせるように歌っているんだろうなあ。もちろんこの企業のイメージソングなので、このタイト
ルは”化粧”を連想させるのだけど、この歌のテーマは別なところにあるような気がしますね。3rdアルバムにも
収録された2曲目は、人との出会いと別れをテーマにした楽曲。悲しいイントロが印象的だけど、聴き終わる頃
にはそのメロディーが不思議と前向きに感じられるこのアレンジが魅力的です。3曲目は夜明けを連想させる
メロディーと詞が印象的な楽曲。夜明けってもしかしたら世界中でもっとも静かで、もっとも荘厳な瞬間なのかも
しれない。だって何が起こるかわからない一日が始まろうとしている瞬間ですもんね。短篇だけど心に残る歌。
 
 
8th 『 春の風 / 幽霊船に乗って / 遠笛 』(07.2.21)
 
 映画『バッテリー』主題歌。例によって例のごとく映画は観ていませんが(笑)彼女の楽曲の持つ優しさ、そし
てどこはかとなく悲しい旋律が胸を打つ作品です。人は夢を自分の胸にしまいこんで、あきらめる理由を探し
てしまうもの。だけど今は今しかないんだと思えば、自分はきっとどんな困難をも貫いてゆくボールになれるよ
・・・確かにそんなとこ、あるよなあ。終わってしまったはずの恋の相手からかかってきた電話から物語が展開
する2曲目はアコースティックに綴られた作品。忘れたはずなのに、あなたの声を聞くうちに私の体温はあなた
と同じになってゆく・・・何ていいますか、どうにも言葉では説明のつきようのない感情を表現しています。確か
に目的地もない幽霊船で漂流してるかのようだよなあ。遠く離れた愛する人への想いを綴った3曲目。離れて
ゆくあなたの姿と反対にあなたの存在が私の中で大きくなってゆく・・・ひとり待ってる少女の姿が浮かぶ曲。
 
 
9th 『 七月の友だち / ゴールネット / 朝日の誓い 』(07.7.25)
 
 学生時代にあこがれてた友だちをテーマに描いた表題曲。誰も彼もわけへだてなく付き合うって一見簡単
そうに見えて実は難しいことですよね。でもそういう友だちって確かにいたよなあ。自分にはできないってその
時はそれしか思わなかったけど、今にしてみればすごいヤツだった(笑)。2曲目は自分の夢をゴールネットに
見立ててそのネットを揺らしたいと歌う曲。夢を”いすのないフルーツバスケット”とたとえているのがスゴイと
思いました。夢ってたしかにそんな存在すら確証のないものなんですよね。だからみんなが迷いながらそれを
目指し、そして倒れてゆく・・・。静かに奏でられたピアノイントロが印象的な3曲目。何かを目指す時そこが100
%で今の自分が何%かって考えがちだけど、実はスタート時点の自分が100%で、そこからどれだけ残してい
けるかっていうのもひとつの考え方なんですよね。ちなみに今自分に残ってるのは・・・何%なんだろう・・・?
 
 
10th 『 春隣(はるどなり) / 時の列車 / 時計(re-birth version) 』(08.5.21)
 
 「春隣」とは「もうそこまで春が来ている」という意。今は君といっしょにはいれないけれど、いつか隣に君を
感じることができる、そんな日がきっと来る。その日が来た時こそ寒かった冬が明け春になり、辺り一面花が
咲き誇るんだ・・・そんな少年の想いを綴った曲のような気がします。なんだか一個人のことじゃなく、もっと普
遍的なイメージのする作品ですね。優しく温かいメロディーがすごく染み渡ってきます。2曲目は旅先で今とは
違う自分に会いたいと願う女性の気持ちを綴った曲。この曲に出てくる「時の列車」というのは単に旅先まで
自分を連れて行ってくれるものではなくて、生きているだけですでにその列車に乗っているんだよってことをさ
してる気がします。いつでも人は「時の列車」に乗っかって新しい場所へ向かってるってことなんですよね、き
っと。3曲目は彼女がデビューするきっかけになった曲の新録音。10枚目で初心に戻ろうってことなのかな。
 
 
11th 『 モウイチド / 晴れ人間 』(08.9.24)
 
 力強さを感じるポップな1曲目。心から正直になれれば、これほど楽になれることもないですよね。そしてそ
の正直さをさらけ出す勇気さえあれば言う事ナシ!・・・なんだけど、どうしても失敗した時のことを考えると引
っ込み思案になってしまいます。もう立ち直れないんじゃないかって思えば思うほど余計に怖れをなしてしまい
がち。だけどそれでも何か大きな壁にぶち当たっても、もう一度自分を信じて前へ突き進んでいこうよ!と歌
われた威勢のいい曲です。2曲目も聞いてるだけで元気になれそうな彼女の作品らしからぬ(笑)ポップな曲。
そりゃあ「雨人間」よりも「晴れ人間」でいる方が人生も楽しいし「生きてる」って実感も沸くってもんですよね。
確かに悲しいことやストレスに感じることも多々あるでしょうが、そこは素直に受け入れて次の日まで持ち越さ
ない!ってそんな人間になれたら・・・いいよね(笑)。いや、そういう人間を目指さなけりゃつまらないよね。
 
 
12th 『 こと / 誕生日 』(08.10.22)
 
 大切なのは今目の前に君がいること。たったひとりじゃ何もできない。ゼロもゼロのままでしかない。だけど
君が目の前にいてくれることでゼロも1になる。共に生きていくことが力になる・・・そんなラブソングなんですけ
ど、こんなに悲しみを感じるのはなぜなんだろう?”強くあるなら弱くあること”って一節がさらに胸を締めつけ
ます。心の弱さを持ってるからこそその弱さを守ろうとする力が強さになるってことなんだろうなあ。そんな切
ない表題曲に続く2曲目はその名の通りのバースデー・ソング。特別な人間になんてなる必要はないんですよ
ね。ただそこに存在するだけで人は特別で奇跡的なことなのだから。「誕生日を迎える」ではなく「誕生日まで
辿り着いた」って表現がすごくリアルに響いてきますね。たとえば病気だとか事件に巻き込まれたりとか、世
の中にはいつもいろんなことがある。その日は、ある意味生き延びてこられた記念日といえるかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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