柿島伸次 2003.8.24 10周年ワンマンライブ 〜WINDING ROAD〜

at 渋谷ネスト

 柿島伸次といえば、ボクにとってまさに青春時代(二十歳くらいの頃)にデビューした、すごく熱い思いを歌にこめた
シンガーソングライターなのです。しかもその真摯な姿勢を持つ楽曲たちとは裏腹に、すごくユーモアにあふれたおし
ゃべりをする本人像。少年のままそのまま育ったというか(←いい意味でです!(笑))その社会の中で自分が何をし
たいのか?どうやって生きていったらいいのか?どんな夢が持てるのだろうか?・・・そんな誰もが持つ迷いを見事に
表現できるアーティストなのです。
 
 そんな彼のライブがあり、誘っていただいた友人に感謝すると共に、初めて彼のライブを観れたことに感謝して、今
この記事を書いています。あまりの距離の近さでライブを観たため、細かいところまでは実は頭から吹っ飛んでいっ
てしまってるかもしれませんが、そこのところはご了承ください(笑)
 
 渋谷のある坂の途中に位置するライブハウス「渋谷ネスト」・・・実はライブハウスでコンサートを観るのは初めてな
ので、「いったいライブハウスで行われるコンサートというものはどんなものなのか?」と期待していました。会場に入
ると、ステージと客席(といってもパイプ椅子)の距離はほとんどない。ギュウギュウにしても100人入れるかどうか?
ぐらいのハコの中。こんな距離で間近で彼のライブに参加することができることに、いったい通常の理性を維持して
いられるのか?(笑)と考えているうちについに開演時間。少し遅れて会場に入ってきた彼は拍手する観客をうれし
そうに見ながら、おもむろにギターを取り出しある楽曲のイントロを弾き始めたのです・・・。
 
<アポロ的全曲解説!>*色の変わってる曲は「アポロ・今日の一曲ライブラリー」で紹介しています*
 
1.WILD HIGHWAY
 軽快なメロディーでギター一本で歌われるこの曲は、名もない道の上を自分は歩いてるけど、自分の
進んでいくべき道は今こんなにも輝いている、と歌うアコースティックなナンバー。でもその道の輝きとい
うのは若僧には見えないような気がします。紆余曲折を重ねても意志を貫き通した人だけが見える道。
 
2.いまここから
 デビューアルバムのスタートを飾る一曲。自分の知らない場所にその一歩を踏み出すのは確かに怖
いこと。でもその一歩を踏み出さなければそこから先へは進めないし、何も始まってはくれない。我がサ
イトの「今日の一曲」の1001曲目の楽曲。その思いって大事だなって思って実は選んだんですよ。
 
3.オーディエンス
 これまでのアルバムには未発表で、ライブで演奏されつづけられてきたという楽曲。「いい年して路上
ライブをこないだやったんだよ」と照れくさそうにしながら話していたっけなあ。でも年齢ってのは関係なく
て、いかに熱くなれるのかってのが大事なんだと思いますよ!柿島さん!(笑)路上でギター一本で歌う
ことって、誰かにやれと言われてやることじゃなくて、自分が心の底から歌いたいからすることなんです
よね。「歌いたい!」って気持ち、大事ですよね。ボクもギターさえ弾けたら歌っていたかもなあ(笑)。
 
4.Lily
 「今まで数え切れないほど演奏してきた曲を演ります」と言って始まったのがこの曲。こんな淋しい夜は
君に抱きしめて欲しい」と男の淋しさを歌ったこのバラード曲ですが、昔ラジオで「一度でいいから大好き
な森高千里さん(←ご本人は「ちーちゃん」と勝手に呼んでいた(笑))の前で演奏したい!」と言ってまし
たねえ(笑)。静かなメロディーの中にも彼女を求める男の絶唱が響き渡る名曲です。
 
5.TVの向こうで
 ユニークなMCの後にシリアスな楽曲をやる・・・この手法は中島みゆきに通ずるものがある!と、また
勝手に思っていたところで(笑)この楽曲の登場。こうやってライブを楽しんでいる間にも、他の国では戦
禍に巻き込まれ、泣いてる、そして死んでゆく誰かがいる。そんな中で自分は何をすればいいんだろうか
・・・という思いが伝わってきます。人は目の前で悲劇が起きなければ他人事と感じてしまう生き物なのだ
ろうか・・・そんなことまで感じてしまいます。そして平和な国だと実感してしまいますね、この国は。
 
6.夕焼けの詩
 キーボードの前に座った彼は、おもむろにこの曲を弾き出しました。「家族に贈る歌をこれから歌いま
す」と歌い始めたこの曲は当たり前のように繰り返される毎日の中で、みんながんばって生きてるんだ、
というメッセージが込められている気がします。そして、だから俺もがんばって生きていこう!と・・・。
 
7.夜明け前に
 キーボードに座りながら、サポートギターの「フルさん」との絶妙なトーク。これがまたウケた(笑)。そし
弾き始めたこの聴き覚えのあるイントロは・・・。彼の楽曲には「ここから始めよう!」って曲が多い。言い
かえれば、何かを始めることに早いも遅いもなく、始めようと思った瞬間が、何かを始める一番いいタイ
ミングなんだ!っていうことを彼は最も歌いたいんじゃないかなあってボクは思ってるんですけどね。
 
8.瞳の中へ
 ちょっと歌声を変えて歌うこの曲は、何人もの男が狙ってる君だけど、君を想う気持ちはどんな男にも
負けないよ、と歌うラブソング。ちょっとヒネクれて考えると、あきらめの悪い男の気持ちを歌った歌にも
聴こえなくもないですが(笑)彼が歌うことによってホントに微笑ましくなってしまうから不思議。オリジナ
ルではアップテンポですが、囁くように歌われたこの日はこの曲の表情がすこし変わった気がしました。
 
9.いつか夏の日に
 そしてノスタルジックな雰囲気を持つこの曲。からかってばかりだったけど、本当は好きだった。でもこ
の気持ちを打ち明けてしまったら、今の君と僕との関係が壊れてしまいそうで・・・そんな若き日を回想
する一枚の絵のような楽曲。ある場所に行くと、その当時のことを鮮明に思い出せることってありますよ
ね。たとえそれが少しつらい思い出だったとしても・・・やっぱりこの曲好きだな〜。
 
10.木村君の悲劇
 6年5組の学級会で合唱祭の曲を決める時誰も手を上げないので、議長さんは日直である木村君を
指名した。木村君はおどおどしながら意見を言わされて行く。みんなは「木村君と同じです。同じです。
同じです・・・」とそればかり。コミカル調に演奏され歌われた楽曲ですが、実は大勢の中に埋もれてるこ
とで安心してしまうという日本人の集団真理を追究したすごく重い曲だと思うのはボクだけでしょうか?
 
11.未来のスーパースター
 ライブもここら辺まで来ると、現実から引き離されてしまった感じがします(笑)。でもこの曲はすごく盛
りあがった曲だってのは覚えてますね〜。今までの彼の音楽を支えてきてくれた人達、そして彼自身が
これから支えていこうとする若者たちとのセッション。すごくいい顔してたなあ、彼は(笑)。
 
12.やさいのうた
 この曲はライブでしかやらない曲だそうです。もう断片的にしか覚えてないんですが、すいませ〜ん!
この前後に行われた彼の超プレミア(?(笑))グッズを争奪したジャンケン大会ははっきり覚えてます。
1st『名前のついてない場所へ』の壁掛け、シングル『TRY AGAIN』の特製耳かき(←!(笑))・・・手にし
たのはふたつとも男性。「女性にあげたかったのに〜!」とはくやしがるのは柿島氏の弁(笑)。
 
13.悲しみの雨はいつか
 まったくの新曲で、彼がTVの向こうに垣間見たイラク戦争を見ながら感じたことをそのまま歌にした
曲だそうです。「僕は思わない 「しょうがない」なんて思わない 争いのない世界に生きたい」と絶唱す
る彼の信念を感じます。「戦争反対」の大多数の声さえ届かないこの社会。それでも「それはいけない」
と思うことをやめてしまったらそこで終わりだ。ぜひたくさんの人に聴いてもらいたい楽曲です!
 
14.Rolling DOWN HOME
 ふたたびギターを手に取り、掻き毟るように歌い出したのがこの曲。3rdアルバムのタイトル曲でもあ
るこの曲は、自分が育ち、優しさを学んだと同時に苦しみや悲しみを教えてくれた、自分が転がり続け
ながらも生きてきた街に対して歌ってる。時には重なる挫折で「夢」ってものを疑ったこともあったけど
その挫折があったからこそ今の自分がいるんだっていう気持ちが痛いほど伝わってくる一曲です。
 
15.たった一人の俺
 彼の核となるうちの一曲だと思います。「どう見られるかじゃなく どう思われるかじゃなく 俺がどうす
るかってことさ」・・・結局周りにどんな風に映ろうと、決めた道を進んでいくのは自分自身。ならば世界
中でたった一人しかいない自分を信じて行くことが正しい道なんだと歌ってる。そう、これからも・・・。
 
16.RED or BLACK
 3枚目のアルバムから連続した3曲目の楽曲。この大きな社会の中じゃ、俺は替えのきくスペアパー
ツそのものさ・・・と歌いながらも、俺はいつでもルーレットに賭けていたいと強い思いを抱いている男の
歌。たった一度の人生で、歴史の中ではたった一瞬の出来事でしかない人生なら、もっと自分自身に
賭けていってもいいんじゃないかな・・・と思えた一曲。時間は決して戻らないものなのだから・・・。
 
17.WINDING ROAD
 本編最後の曲はこのライブのタイトル、そして自身初のベスト盤のタイトルでもある壮大なナンバー。
自分は街の中にさらされて、いろんな言葉に傷つけられてきたけど、それでも何度壊れたってその度
に立ち上がってやるさと歌う楽曲。自分のこれからの人生っていうのはまだ誰も踏み入れていない雪
原みたいなもんなんですよね。だから自分がどう歩くかで道が何通りにもなる。まさに名曲です!
 
 

彼は「一曲一曲を印象付けたいから、一曲終わるたびにMCを入れます」とライブ中に言っていました。

そのMCがおもしろくって、まるでライブに来てるのか漫談見に来てるのかわからなくなってしまうほどでし

た(笑)。でもそれがすごくいいアクセントになっていたように思えます。そしてアンコールが始まります!

 
 
18.裸足のままで
 もともとこの曲はギターとハーモニカだけで歌われていますが、ホントにそれ以上の楽器はいらない
と思えるほど、シンプルだからこそ伝わってくるものがあります。その場所に居続けることがたまらなく
ガマンできなくなる時があります。逃げるのは簡単。でもそこでくいしばらなければ自分を試すことを放
棄してしまうも同じ。人間苦しみの中でしか成長できないものなのでは?・・・そう感じる一曲なのです。
 
19.やっぱり青春だ!
 いつまでも熱くいたい・・・っていうのはひとつの望みでもあります。年を重ねれば人間いろんな経験
を積み重ねてきて物事をすり抜けたり、愛想笑いがうまくなったりしてしまいますが、なんかそのまま時
が無造作に流れていってしまいそうな気がする。いつまでも何かに熱心になったり感動できる自分でい
たいなあって思いますね。今更青臭いと言われても、やっぱり青春だ!
 
 

そして彼はふたたびその場から消えた。鳴り止まない拍手の嵐と「シンジ〜!」の声。そこへふたたび

戻ってきた彼はまやもや気恥ずかしそうにギターを手にとり、もう一度歌い始めたのが、この曲です・・・。

 
 
20.僕
 「別に不自由なく生きているのに あんまり心が笑わないのはなぜだろう」と歌い出されたこの曲は、
今の生活ではどこかごまかして生きてしまっている自分に対する自分へ投げかけた言葉たち。でもや
っぱり僕は僕らしく生きていかなくちゃな。やっぱり僕は僕なんだし。軽く歌われている歌だけど、その
言葉のひとつひとつは重く受け止めたいなって思う一曲です。最後にこの曲が聴けてよかったなあ。
 
 
 彼のライブを至近距離で観れた喜びはもうすごいです。彼の息遣いやギターを弾く一本一本の指づ
かいまではっきりとわかる位置で観れたことは忘れることはできないでしょう。近くでライブがあったら
今度は自分でチケットをとって行ってみたいと思います。知らず知らずのうちに彼と一緒に歌ってた自
分・・・まるで二十代前半のあの頃の想いがよみがえってきたような感じがしました。やっぱり青春だ!
 
 そしてエンディングにはボクの大好きな曲『忘れてた歌が今』が流れてきました。この曲もぜひ本人
の歌声で聴きたかったけど、それはまたいつか・・・ということで(笑)。

 

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