14thアルバム 「Captain of the Ship」

1993年11月1日
 おそらくボクは彼の全アルバムの中でこの盤が最も好きかもしれません。インドを旅行することによって「生きる」とは
何なのか、そして「死ぬ」とは何なのかをとことんまで突き詰めた「3.ガンジス」(約10分)、今の死んでるように生きてい
る若者たちを叱咤激励の意味も込めて歌い綴った絶叫に近いタイトルチューン「9.Captain of the Ship」(約13分)がこ
の盤を語る時に何かと話題にのぼりますが、ボクにとってのこの盤の”核”は「8.結晶」なのです。かつて彼のバラード
曲の中で、これほど繊細でこれほど悲しく、そして人間の中核を突く曲があっただろうか?と思えるほどこの曲には思
い入れがあるのです。『KAZOKU』ツアーでこの曲はステージに雪を降らせながら演奏されましたが、大阪と福岡まで遠
征したのは、まさにこの曲を聴くためだと言っても過言ではありません。さらにこのアルバムのすごいところは、本当に
楽曲のクウォリティがすごく高いこと。人間の欲望を突き詰めた「1.人間になりてえ」、誰でも死にたいと思うときはある。
でもそれでも生きていこうよと歌った「2.泣くな、泣くな、そんな事で」「4.純情地獄の青春は」・・・何てはかないタイトル
だろう。でもその純情を貫くことこそ彼の生きる道なんだろうな。「5.明日の風に身をまかせ」は、せめて人の道に外れる
ことだけはしないように生きていこうよと歌ったメランコリックな曲。同名タイトルのドラマ主題歌「6.RUN」は嘘をつきたく
ないと思いながらも嘘をつき続けて生きている主人公がすごくリアルに感じるロックチューン。”そんなあなたになりたく
て そんなあなたになれなくて”・・・愛する人に追いつきたくて追いつけない女性の心のうちを綴った「7.12色のクレパス」
は悲しいぐらい響いてくる楽曲。吹雪の中にいるような「8.結晶」、激しすぎる「9.Captain〜」を経て、嵐の中を帰ってきた
舟を迎え入れる港のような「10.心配しないで」は、想いを言葉にできない女性とそれを受け入れる男性の優しさが交互
に歌われた心染み渡る作品。とにかく8. 9.10曲目の繋がりがすばらしい!(詳しくは「このアルバムを聴け!」へどうぞ)

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