この年あたりのライブから、彼のツアーには「ON
THE ROAD」というタイトルが冠せられている。それは |
「ただ何もない道の上をひたすら走りつづけてゆくこと」という意味がこめられているのかもしれない。そんな |
彼の初のライブ盤。1981年の年末・広島郵便貯金ホールのものと、1982年1月の初の日本武道館の模様が |
収められている。このライブアルバムの選曲では、もちろんこの時点のニューアルバム『愛の世代の前に』 |
からの選曲も多いが、基本的には「何か大きな壁にぶつかろうとも、それに立ち向かって前に進んでいく」 |
主人公像をもつ曲が選ばれているような気がするなあ。タイトル通りの「1.壁にむかって」、未来に夢を持て |
なくなった「2.明日なき世代」、生きることはいつのまにか誰かと争うことに置きかえられていると歌う「3.土曜 |
の夜と日曜の朝」、人生を重ねるごとにその時々の壁を歌ったデビュー曲「5.路地裏の少年」、俺たちは闇 |
を駆け抜け乗り越えてゆこうと歌う「6.終りなき疾走」、ティーンネイジャーの目で見た生きる上での壁を歌っ |
た「7.独立記念日」「8.反抗期」と、TO WALLな楽曲が並ぶ。そして明日なき世代の実情を歌った「9.東京」、 |
生きてゆくことは決して待ってくれない刹那感が聞き手に伝わってくる「10.愛の世代の前に」が中盤を支え |
る。だからこそ逆に数少ないバラード収録曲が今まで以上にすごく心に染みてくる。何も与えてやれない自 |
分を責める「4.陽のあたる場所」や、今の仕事を続けてるうちに自分は一体何処へたどりつけるのか?とい |
う不安を歌った「11.MIDNIGHT BLUE
TRAIN」がとてつもなく響いてくる。そしてラストに「12.ON THE ROAD」 |
という彼の主題歌ともいうべき新曲のロックチューンが加えられている。この頃の彼にとって『ON
THE ROAD |
』というライブツアーは、走りつづけた先に何があるのかを確かめにゆく作業だったのかもしれない。ただそ |
の先に”答え”というものが待っている確証はなかったというのに・・・。 |