jaguar hard pain 1944-1994

-このアルバムを聴け!Vol.1-


 ボクの好きなバンドのひとつに、ザ・イエローモンキーがいる。
今ではメジャーになってしまった感があるが、その昔、このバンドはボクの心を
いつまでも締め付ける傑作アルバムを作ってしまったのだ。
 
jaguar hard pain 1944-1994 1994/3/1発売
 
 もともとボクがイエローモンキー(略すのが気に入らないのでイエモンとは言いません)を
最初に聴いたのは、弟が持っていたシングル「熱帯夜」だった。
けっこうメロディアスで妖しい雰囲気が気に入って、聴きまくった。
 
 ボクは一曲でも心に残る曲があるアーティストに関しては昔までさかのぼって
「他にもいい曲があるんじゃないか?」という冒険をするくせがあるので、
その当時出ていた3枚のアルバム

 「夜行性のカタツムリたちとプラスチックのブギー」(デビッドボウイのバンド名のパロディー)

 「未公開のエクスペリエンス・ムービー」(欧州を感じさせる。女装の吉井和哉がイロッぽい)

そして「jagaur hard pain」を聴いた。
 
 この「jaguar hard pain」を初めて聴いたとき、発売されて数ヶ月しか経っていなかったが、
遠い昔に作られたような印象をうける、コンセプト・アルバム(ひとつのストーリー仕立てのアルバム)
だった。ジャケットの1ページ目にはこう書いてある。
 
 「ジャガーとは1944年、異国の戦地にて戦死した若者の名前です。
彼はとても野性的な瞳をしていて、性格も狂暴で女にだらしが無く、わがままでナルシストで楽天家で、
それでいて泣き虫でおセンチで少しだけ純粋で・・・
と、正に僕たちの考える”人間の本来の姿”の象徴でもあるのです。
 
 そしてこのジャガーとは、あなたのまわりに確実に存在する
”肉体は死んでも魂だけは永遠に生きている”人達の象徴でもあるのです。
 
このお話はジャガーが死ぬ瞬間に祖国に残してきた、恋人”マリー”の魂を見てしまったために
肉体が滅んだことにも気づかず、魂だけが時を越え50年後の現在へタイムスリップしてしまい、
時代のズレを感じながら恋人マリーを捜すというストーリーで、
永遠に死なない人間の魂がテーマです。
 
 そう、「人間の魂」というテーマがボクの魂を震わせたのだろう。
そしていきなりここで全曲紹介!(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
 
1.SECOND CRY
ジャガーの自己紹介的な一編。兵士の彼に敵の弾丸に当たり絶命するシーンからこの物語は始まる。1944年から1994年へ。
「僕はジャガー 確か殺された 僕はジャガー あの娘の前で〜」
2.FINE ! FINE ! FINE !
魂となった彼は心の異常なまでのハイテンションさを感じる!
「FINE, FINE, FINE, SO VERY FINE  君の頭に愛を込めて〜」
3.A HEN な飴玉
このタイトルはアノ薬にかけられている。この世界では薬でもなんでもやり放題!
「世紀末のエンドレスゲーム さあ かまずになめちゃお〜」
4.ROCK STAR
生と死の間の世界ならロックスターにだってなれる。
「ロックスターになれば 羽が生えてきて ロックスターになれば たまに夜はスウィート〜」
5.薔薇娼婦麗奈
欲望にまみれたジャガーはビルとビルの谷間で少女・麗奈を買う。
「この世は金 金さえあれば 怖くないね 僕の麗奈 お願いだ この僕と手をつないで地獄を見に行こう〜」
6.街の灯
恋人捜しもラクじゃない。街の中にはさまざまな愛憎が渦巻いている。
「すきとおる青い空の下 お酒を飲んでのらりくらり 恋人捜しも楽じゃないのさ ましてやわが身はボロ雑巾〜」
7.RED LIGHT
超衝撃作。赤いライトの下でジャガーは少女のすべてを抱きながら・・・。
「君の夢見る 夢みたい 狂わせてよ 毎夜毎夜  君の大切な VAGINAが泣いてる〜」
8.セルリアの丘
セルリアの丘に立ったジャガーは、まだ捜し出すことのできない恋人マリーの面影を抱いて・・・。
「可愛い君の影を引きずり 冷たい海に溺れそうな夜は 色とりどりの罪で着飾り 月に君の夢を見る〜」
9.悲しきASIAN BOY
唯一のシングル曲。迷える若い兵士は愛と誠に苛まれながらも夢を見ていた・・・。
「ほら うしろで神様が剣をかざして待っている 夢よ飛び散れ花となれ〜」
10.赤裸々 GO ! GO ! GO !
ジャガーは恋を求めて蟻地獄で逢う事を約束する。
「花びらみたいに汚れのないような顔しているのに 異常者みたいにとがった愛撫が本当は大好き〜」
11.遥かな世界
遥かな世界の入り口でマリーを待つジャガー。どんなところへ行こうと、ふたりでいれば・・・。
「遥かな世界へ 幻のような君の中で 眠ろう いたくない もう痛くない〜」
12.MERRY X'MAS
やっと出逢えたふたり。魂の姿になってもお互いを想う心は永遠に変わらない・・・。
「部屋の真ん中に鏡を置いて 君とふたりで紅をひくのさ 最後の夜に 最高の夜に この世に背を向けよう〜」
 
 まあかなり抽象的な解説になって(なってないかな?)しまったけど、
とにかく通して聴いてもらえばわかると思う。
ストーリーの流れが曖昧に感じるかもしれないが、この曖昧さも魅力のひとつなのだ。
 
 中でも特にお気に入りなのは「SECOND CRY」「薔薇娼婦麗奈」「RED LIGHT」「セルリアの丘」
「MERRY X'MAS」である。
 
 ボーカル兼プロデューサーの吉井和哉氏は、
前作「未公開のエクスペリエンス・ムービー」の最後の曲「シルクスカーフに帽子のマダム」という曲で、
マリーとジャガーを登場させている。(「ジャガーはライフルであの世行き〜」という出だしの曲)
 
 またこの後の4thアルバム「SMILE」には「マリーにくちづけ」という曲もある。
そして特筆すべきは吉井がこのジャガーを演じるために「丸坊主」にしたという点であろう。
 
 とにかく今でもこのアルバムを聴くと、胸を締め付けられるほどノスタルジーを感じる。
メジャー3枚目にしてこんな大作を作ってしまう彼らは只者じゃない。
 
 存在がメジャーになってきて、かつてよりも少し毒が抜けてきた感じがするが、
皆に認知された今だからこそ、彼らにはこのアルバムを越える、そして心を震わせてくれる
コンセプトアルバムをぜひ作って欲しい!
 
 とにかくこのアルバムを聴いてくれ!そして僕と同じ、または違った感情が生まれたら、
メールちょうだいね。

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