吉井和哉 4th「The Apples」 2011.4.13
 
 東日本大震災により半月ほど発表が遅れた彼の4thアルバム。ここ数作の彼の作品は聴き砕くのに時間がかかる。それは
人の心の「裏側にある本心」をテーマにしているからなのかもしれない。暗闇の中からこっそりと生まれた何かを指し示すよう
なインスト曲「1.THE APPLES」。そこからヘビーな「2.ACIDWOMAN」へとなだれこむ。男の内側にひそむ女性性。その心の葛
藤を表わした曲。さらに”対自分”をストレートに歌った「3.VS」は、さんざん提示しておいて「そんなことありませんか?」と受け
流す作風が彼らしくておもしろい(笑)。「眠り草」という別名を持つ「4.おじぎ草」。逢えば傷ついてしまうのにあなたに逢いたい。
わかっているはずなのにそう欲するのは人の心の脆さなのかもな。一転、軽快なサビが心地よい「5.イースター」。誰でも過ち
を犯す。でもそこからまた歩き出した時、人は生まれ変われたと言えるのではないだろうか。彼独特の言葉遊びが炸裂する
「6.CHAO CHAO」はダジャレのオンパレード!光を感じる曲です。西部の酒場のような雰囲気だったアレンンが中盤からいき
なりメロウなバラードになりまた元に戻る「7.ロンサムジョージ」。人の心の移ろいやすさのようにも思える編曲。挿入されてる
ギターがイカす「8.MUSIC」の裏テーマは「もし音楽のない世界だったら」。彼もゾッとするだろうし、僕もゾッとする(笑)。禁断の
欲望に手を出してしまう人のサガをテーマにした「9.クランベリー。確かにこんなにも多くの感情を与えられなければこんなに
苦しむことなどなかったろうにね。途中からなし崩し的になってゆく難解なメロディーがそのまま心の奥底を映し出している
気がする。”裸の二人が服を着たら なぜもう逢えないの?”は彼の真骨頂だと思う。なんだか数曲一気に聴いた気分になりま
す。生歌と生ギターが絶妙な「10.GOODBYE LONELY」は聴いてるだけでウルっときてしまう。順風満帆な人生を送れてきたの
だとしたら、こんな感情は芽生えてこないよね。唯一のシングル曲である「11.LOVE &PEACE」は黒く縁どられた未来を連想
させる。ただそんなつらい未来だからこそ「愛」の重さが際立ってくるんじゃないかって思う。ひと昔前では当たり前の事だった
んだけどね。ディスコ風のフィーバー 「12.プリーズプリーズ プリーズ」。どっかで聞いたタイトルだと思ったら、やっぱりあのバ
ンドがテーマでした。暴走レディオから流れてきたかのような(笑)「13.HIGH & LOW」。”変わりのない街はなぜか守られている
気がする”そうだよね。「何事もない」って何よりの平和なんだよね。そしてラストを飾る「14.FLOWER」。人はたったひとりだ。
確かにそうかもしれない。でも誰かがいなければ自分は生まていない。そして自分がいるから未来がつくられる。”血のつなが
り”を感じさせる壮大な曲でこの盤は終焉を迎えます。『アダムとイブ』は人の心のサガを描いた重たい物語だ。そしてふたり
が口にしたと言われている『The Apples』は善悪を知る禁断の重たい果実だ。だから人は頭を抱え、感動し涙するのだろう。
Track No.
1. THE APPLES
2. ACIDWOMAN
3. VS
4. おじぎ草
5. イースター
6. CHAO CHAO
7. ロンサムジョージ
8. MUSIC
9. クランベリー
10.GOODBYE LONELY
11. LOVE & PEACE
12. プリーズ プリーズ プリーズ
13. HIGH & LOW
14. FLOWER
 
 
 

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