15thアルバム「家族」

1996年1月1日
1. 三羽ガラス   5. 一匹の侍   9. 家族
2. 傷まみれの青春   6. 耳かきの唄   10.己
3. 明日   7. 何故   11.身をすててこそ
4. 月が吠える   8. 友よ    
 例の事件から復活し発表された渾身のアルバム。発売日は96年1月1日となっていますが、ボクが行った彼のライブ
『いつかの少年 アコースティック・ロード』の東京ドーム公演(95年12月26日)では、もう売店で売られていたのでこれが
年末進行ってやつなんですかねえ?余談ですが(←ホントだ(笑))。ジャケット写真にしろ、歌われている内容にしろ、
あまりにもダークなものであることは否めません。ですが逆にこのアルバムでは隠すことのできない人間に本質が歌わ
れている気がします。このアルバムのキーポイントは何といってもこの盤の核をなすタイトル曲「9.家族」『いつかの少
年』ツアーの全公演の最後の曲としてギターとハーモニカ一本だけで歌われた見知らぬこの曲には、聴く者の心を震わ
せるものがありました。家族とは何か?・・・つらい幼年時代を告白しながら歌い上げる彼の姿勢がたまらなくなります。
もうひとつのポイントは、デビューの頃と今の自分を比較しながらこの国の現状を歌った10分にも及ぶ「6.耳かきの唄」
昔大切だと思われていたものが、今この国ではどこかに置き去りにされてるって強く感じます。ヘイ!ホウ!のスタート
が印象深い「1.三羽ガラス」は彼らしい激しいロックチューン。けじめをとれよ〜チャチャ〜♪最もポップさと明るい光を
感じられる「2.傷まみれの青春」は彼のプライベートが描かれてる。「時代おくれ」って負の印象がつきまとうけど、言い
換えれば何かをずっと貫き通してるってことにもなるんだよね。ボクもできれば「時代おくれ」でいたいです(笑)。人間の
内面に向かっていく「3.明日」、阪神大震災にインスパイアして書かれたという染みるスローな一曲「4.月が吠える」、ハー
ドな男の生き様を、ハードな詞と演奏で聴かせてくれる「5.一匹の侍」と続きます。ピアノ主体の美しいメロディにのせて
歌われた「7.何故」は、ホントに人間の真芯にあるものを歌い当てているような気がします。復活シングル「8.友よ」では
少年時代から大人になる段階で変わっていってしまう人の心のはかなさを綴った静かな一曲。どろんこになって遊んで
いた子供たちが今では靴に土がつくのも嫌う・・・この国の豊かさの代償なのかもしれません。暗闇の中ピアノとハーモ
ニカ、そして彼の歌声だけで綴られた「10. 己」は、まさに彼の心の底からの叫びが歌われています。そしてラストを飾る
優しさあふれる「11.身をすててこそ」。あなたが笑顔でいられるのなら、私にどうか嘘のひとつやふたつつかせてください
・・・”自分のために”から”誰かのために”という姿勢を彼から感じるのはこの曲が初めてかもしれません。そんな名曲。
詳しいことは「このアルバムを聴け!」にも書いてありますので、ぜひお時間の許す方は行ってみて下さいませ。

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