ソロ 9thアルバム
「Glass Age」

1984年12月12日発売

 
 「グラス・エイジ」・・・彼が言うように、なぜ「青春」という言葉に恥ずかしさを感じてしまうのだろう?今にして思えば当時の自分を”青臭く”
感じてしまうからなんだろうな。そんな青春たちを集めた12篇からなる9thアルバム。オープニングとエンディングを飾る「1、12.名もない花」
は、1分ほどの短篇作品。名もない恋に名もない花・・・だからこそ想い出に残るんだよね。「2.桜散る」は自分の前から姿を消した愛しい人
の面影を歌い上げた一編。別の男に走っていった君との想い出を、この桜舞い散る情景に消して欲しいと願う男の悲しみを綴った楽曲。
「3.虹の木」はハワイ・ホノルルの地に消えた恋を歌った曲。別れの情景なんだけど「最後の頁」などデビュー当時の別れの楽曲に比べると
情景・心理描写がすごく進化してるなって思います。ボクごときがですが(笑)。「4.もう愛の歌なんて〜」は、年上の彼女が自分以外の誰か
と結婚する当日、どこかの見知らぬ街で悲しい愛の歌を歌う男を描いた楽曲。青春との別離が、そこにある。「5.Forget-me-not」は、誰よ
りも彼を愛しているのに彼を思うあまり彼から手を引く女性の悲しい心情が綴られた一編。こういう女性像って、いまや骨董品として飾られ
てしまうのかもしれないけれど、ボクは好きだ(笑)。「6.空缶と白鷺」は前々作に収められた「前夜(桃源鳥)」の続編。自分がこうして何気
なく日常を送ってる間にこの世界のどこかで人が不条理に殺されたり、お腹をすかせて死んでゆく。そんな世界の現状を隣の芝生を見る
ように過ごしているこの国は、この後どうなってゆくのだろう・・・という未来への警鐘と、生きるということはいったいどういうこと?という命題
を突きつける傑作。この答えっていつ出るのだろう?いや一生でないのかも・・・。「7.寒北斗」は、聴いてるうちにやはり前々作に収められ
「退職の日」を思い出す。子供の頃にはわからなかった親の思いが、自分が大人になった時にわかるというのは今までも繰り返されてき
たことなんだろうけど、子供の時にわからないってことにはきっと意味があるんだろうな。小さくなった故郷の親を見るたび涙をこぼす・・・わ
かるなあ。「8.下宿屋のシンデレラ」はさだ史上初の他人の詞に曲をつけて歌った作品。「物干し台のマドンナ」・・・なんて素晴らしい響きだ
ろう(笑)。「雨やどり」の別バージョンとも言えよう(笑)。「9.玻璃草子」はシリアスなメロディーが印象的な文学的作品。こういう曲って詞の
意味がはっきりわからなくても主人公の切なさや悲しさはきちんと伝わってくる。それがさだ作品の魅力のひとつでもあるし、彼のこの手の
作品が大好き。「まほろば」の流れをくむ作品だと思う。「10.春雷」はロック色の強い楽曲。今の世の中を”春の嵐”と彼は歌う。自分の心を
だましながら生きてゆく末にこの国の見るものはさらなる嵐か?それとも去った後の静けさか?「11.道の途中で」は、素直に生きてゆくの
がつらい世の中だけど力の限り生きてゆこうよというメッセージを感じる作品。そう、生きてる限り人はいつも”道の途中”にいるんだよな。
「グラス・エイジ」・・・触れれば割れてしまいそうな世代・・・生きてる以上皆その世代・・・いやその世代の中に居続けたいものですね(笑)。

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