オフコース 「ワインの匂い」

-このアルバムを聴け!Vol.6-


 2枚続けてオフコースのアルバム紹介となるが、「STILL a long way to go」がボクのはじめて
聴いた傑作アルバムであるとすると、このアルバムはまさにオフコース全てのアルバムの中で
一番オフコースらしさを醸し出したアルバムだと断言できる。それほどこのアルバムの構成、
そして一曲一曲の完成度からいっても、「オフコースに興味を持ったら、まずこのアルバムを
聴いてくださいね」と言えるアルバムである。
 
オフコース 「ワインの匂い」

1975年12月20日発売・全12曲

 
 このアルバムは、まだオフコースが小田和正・鈴木康博のふたりで組んでいた頃の
アルバムで、それまでのアルバムではそれぞれの個性がぶつかり合っていた感がある
が、本作ではそれがうまい具合に融合され、ヒジョーに統一感のある名作に仕上がって
いる。そして全曲紹介!
 
(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
 
1. 雨の降る日に
 このアルバムの導入曲であるこの曲は、ノッケから強い
印象をリスナーに残すこととなる。雨の中を車で走り去る
効果音と、小田の切ないボーカル。雨の降る日には別れた
恋人を思い出してしまう・・・というシチュエーションが、なん
とも言いがたい余韻を残すのである・・・。
   
2. 昨日への手紙
 優しいアコースティックあふれるギターから始まるこの曲は
文字どうり夜明けを感じさせる楽曲。鈴木によるやわらかな
ボーカルが、昨日への別れと、来るべき明日との出会いを
歌っている。昨日でも今日でもない、まさに夜明け前という
のは、なぜか人の心を和やかにするんだよなあ。
   
3. 眠れぬ夜
 オフコースの名を一躍有名にした小田によるシングル曲。
明るい曲調ではあるが、ここで歌われていることは決して開
放感あるものではなく、むしろ恋人に裏切られた男の叫びで
あるが、裏切られたにもかかわらず、その人のことを忘れられ
ない男の葛藤を歌った名曲である。
   
4. 倖せなんて
 ボクはこの曲は「人間の欲望というのは無限である」ことを
歌っているんだと思う。恋人と愛し愛されても、人間という生き
物は慣れてくると、自分の身を全く別の状況に置きたくなるも
のなのではないのかな。かなり皮肉った内容の歌だけれど、
「今日はよく晴れた温かい日です」というフレーズがそういう
内容をオブラートに包んでいるんだと思う。
   
5. ワインの匂い
 恋を繰り返す少女を歌ったアルバムタイトル曲。「別れたひと
の思い出をうたにして 涙を流しては口ずさんでいた〜」という
フレーズがとても印象に残っている。とてもメルヘンチックな曲
調ながら、歌われていることは決して明るいものではない。
   
6. あれから君は
 自分の友人だった男が死に、一人残された彼の妹への思慕
を歌った鈴木による作品。彼女を愛していた主人公は、兄の死
で傷ついた彼女をまるごと受け止めてあげたかったが、彼女は
そうはしなかった。「それでも僕は君を待っているよ」という曲。
この続編に当たるのが「ひとりで生きてゆければ」のB面「あい
つの残したものは」であると思われる。こっちの曲も好き。
   
7. 憂き世に
 このアルバムの中では、一番疾走感を感じる曲で、地球規模の
愛をテーマに歌われている鈴木による作品。人の世はとても冷た
く、自分もその世界に慣れてしまいそうだけれど、自分はやさしい
「人の心」を大切にしていきたい、と歌っている。「いたわる心」
が忘れ去られやすい現代だからこそ、このような曲がもっと陽の目
を見て欲しいと願うのであります。
   
8. 少年のように
 わずか1分強という短い曲だが、大切なメッセージを放っている
曲である。たとえ、とても幸せな日々を過ごせても、あるいは哀しく
辛い日々を過ごしたとしても、どんな生き方であろうとそれは「想
い出」というものに名を変えて消え去っていくものなのだから、前
に前に進んでいこう、というメッセージを感じるのはボクだけかな。
   
9. 雨よ激しく
 大失恋の歌(笑)。自分は一生懸命に彼女に愛を送りつづけて
きたつもりなのに、彼女は他の男との愛を取った。女性の中には
時として「精神的な愛」よりも「物質的な愛」、つまり「自分の欲し
いものを与えてくれる人のほうがいい」という人がまれにいる。も
しかしたら現代の女性にはそちらの方が多いのかも(若い女性の
方、あくまで一部の人のことだから怒らないでね(笑))。
   
10. 愛の唄
 シングル曲ではないにもかかわらず、ファン以外の人にも認知
度の高い、小田による楽曲。ストレートに「愛の唄」と題している
ように、ストレートに「あなたに出会えたよろこび」を歌っている。
考えてみればこの曲が、このアルバムで一番幸せを表している
曲ではないだろうか。
   
11. 幻想
 作詞 小田和正/作曲 鈴木康博。この二人の合作というのは彼
らの楽曲の中でもヒジョーに珍しいが、この曲が大好きである。
「ああ いっさいの世界に目をつぶって みんなを包めればいいの
に 愛がすべてじゃないにしても〜」・・・まさにその通り。そうすれ
ばいがみ合いや争い、しいては戦争だってなくなるはずだもの。
メロディーといい、詞といい、オフコースの中でも代表作であり、
超大作だと思います。
   
12. 老人のつぶやき
 ラストを飾るのは老人の今際の際を切り取ったワンシーン。死ぬ
直前というのは自分の人生が「走馬灯のごとく」頭の中をめぐると
言われていますけれども、ボクも告白できなかったあの娘のことを
後悔するんだろうと思います(キャー、オラはずかしっ)。それはさて
おき(笑)、この曲ではストリングスがかなり効果的に響き渡り、荘
厳ささえ感じます。ジーンとくる曲ですねえ。
   
 オフコースについて世間で語られることがあると、必ずといっていいほど小田和正の楽曲
ばかりが語られますが、決してそうではなく、小田には鈴木が必要で、鈴木には小田が必要
だった。このふたりの奏であうハーモニーこそが「オフコースの真髄」であると、このアルバム
を聴くたびに思うのです。鈴木康博は途中でオフコースを脱退してしまいますが、その後の
小田和正のプレッシャーというのは相当なものだったに違いありません。
 
 それでもボクの胸を打つ楽曲を次々と繰り出してきた小田和正という人物は「やっぱりタダ
モノじゃないなあ」という感想を持つとともに、このふたりのハーモニーの結晶であるこのアル
バムを、ぜひひとりでも多くの人に聴いてもらいたいと思う、今日この頃なのです。(01/3/19)

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