真島昌利 「夏のぬけがら」

-このアルバムを聴け!Vol.4-


 「リンダ リンダ」で有名なパンクロック・バンドThe Blue Heartsのギタリスト・マーシーこと真島昌利
のファースト・ソロアルバム。ブルーハーツの楽曲はボーカルの甲本ヒロトとギターの真島昌利が半々
ぐらいの割合で書いている。
 
 彼はブルーハーツでは「TRAIN TRAIN」「チェイン・ギャング」「青空」「TOO MUCH PAIN」など、
どちらかというとシリアス・バラード系、リアル系の楽曲を書いている。
 
 そんな彼だから、ファーストソロはかなり激しいものになるだろうと予想していたが、かなり裏切られた。
しかもかなりいい意味で。このアルバムは全編通してアコースティックに仕上げられ、一曲一曲が心に
染み入ってくるノスタルジックなアルバムなのである。
 
真島昌利「夏のぬけがら」
89年11月21日発売・全12曲
   
ここで全曲紹介。(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
 
1. 夏が来て僕等
 少年たちの夏休みのワンシーンを切り取ったかのような曲。親の
範疇の中にいる少年たちにとって、知らない場所に行ったり、夜中
に抜け出して遊んだりすることは何か一人前に秘密を持ったような
感じがしてドキドキしたもんだ。そんな場面が浮かんでくる曲。
   
2. クレヨン
 クレヨンで何かを描くということは、自分の人生を行きぬくこと
に似ているのかもしれないな・・・という感情が浮かぶ曲。1、2
曲とミディアムナンバーが並んでることが結構意外だった。
   
3. さよならビリー・ザ・キッド
 ボク的にこのアルバムの主要曲である。若くして結婚した友人
に捧げられたこの曲に、かなり感情移入してしまう。昔は彼とい
ろいろな夢を持って暴れたが、今になって彼と再会した時に、昔
の面影は失せ、彼は人生に疲れてしまっていた・・・現実と夢を
同時に開花させるというのは難しいことなんだよなあ・・・。
   
4. 風のオートバイ
 「これが最後じゃないのかと いつもそんな切なさで ぎりぎり
のキスをしよう」・・・期間限定の恋というのは、燃えるものだよ
なあ。結婚してしまうと、いつも彼女がそこにいるなんて当たり
前のことのように思えてしまうけど、本当はいつも「これが最後
じゃないのか」と、情熱を持って恋していたいものですねえ。
   
5. 小犬のプルー
 NHK「みんなのうた」で流されていた曲のカバー。この曲、ヒジョ
ーに切なくて好きなんですよねえ。ある街角で出会った少年と小
犬の物語。少年の小犬に対する暖かさと、どうすることもできない
別れが、ボクの心を串刺しにした。
   
6. 地球の一番はげた場所
 このアルバムにハーピストとして参加している友部正人のカバー
曲。このアルバムの中ではかなり明るい曲調でにぎやか。「僕ら
は古新聞を指揮棒にして 冬の星座にうたわせた」「君は顔から
影になり 僕を夕闇の中に置き去りにした」・・・など、さすがと言
わせられる詞に驚嘆。詩人だなあ・・・。
   
7. オートバイ
 誰も乗っていないオートバイが自分の意思で走ってゆく・・・いわく
つきの場所で見たら、「幽霊ライダー」といわれてしまうかも(笑)。冗
談はさておき、かなり詩的な曲。ある場所でくすぶっている少年が「
きっとここ以外に自分の居場所があるはず」と外を眺めていた時に、
オートバイに心が投影されたに違いない(かなり強引な推測(笑))。
   
8. アンダルシアに憧れて
 近藤真彦もカバーしてるため、マーシーの曲の中で一番知名度
のある曲ではなかろうか。だってほとんどのカラオケでマーシーの
欄にはこの曲名しか載ってないもんね。この曲はイタリアマフィア
を舞台とした演劇曲とでも言おうか、かなりバイオリンの音色が
心に残る。この曲もまた、彼の意外な一面を知った曲だったなあ。
   
9. 花小金井ブレイクタウン
 彼の楽曲には地名やアイテムなど、かなり具体的なものが使わ
れる曲が多い。歌詞的には日常のどうでもいいことを歌っているが
これらのことを歌にできるのは彼を置いてほかにはいまい。そして
曲調がとてもノスタルジック。フルートがかなり効果的である。
   
10.カローラに乗って
 かなり楽天的な曲。とにかく「ドライブしようよ〜」という曲。しかし
彼らしさも歌詞の随所で見られ、聴くとなんとなく安心してしまう曲。
彼はきっととてもドライブが好きなんだろうなあ。
   
11.夕焼け多摩川
 真夏の夕暮れというのはなんとなくメルヘンチックになってしまう。
暑くもなく寒くもなくちょうどよい風が川面に吹くと、なんか現実から
離れて別世界に来たような、そんな感じがする。ここに歌われてる
「多摩川」ってのが家から近いから、よけいに親密さを感じるなあ。
   
12.ルーレット
 ラストを飾るのはやはり友人と自分を歌った彼らしい曲。「3.さよな
ら ビリー・ザ・キッド」にも通じてる感じがする。最後の「移動中の列
車の中で オマエの泣き声を聞いた ひなびた寒い街角で オマエ
の笑顔を思い出す」というフレーズが忘れられない。人生はルーレッ
トに賭けているようなもの。勝つか負けるか、今が勝負の時!
 
 フォークでもロックでもない、ジャンル分けに困るアルバム。しかし大勢の人に聴いてもらいたい
珠玉のアルバムなのです。ブルーハーツの彼とはまた違った一面を見つけられるはず。少年から
大人の方まで楽しめるアルバムだと思います。ただしあまり聴きすぎると「夏のぬけがら」になって
しまいそうなのでご注意を(笑)。

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