セルフカバー・アルバム
「初秋 〜Early Autumn〜
2003年9月26日
1 君に捧げる love song   5 A LONG GOODBYE 8 君の名を呼ぶ   11 星の指輪
2 PAIN   6 NEW YEAR'S EVE 9 紫陽花のうた   12 初秋
3 悲しみの岸辺   7 GIVE ME ONE MORE CHANCE 10 永遠の恋人   13 我が心のマリア
4 ガラスの部屋                
 
 50歳になって初めて発表されたセルフカバーアルバム。この中で唯一の新曲である「1.君に捧げる love song」は今は亡き愛する人に向けて歌われたラブソング。
でもそこでは決して彼女の死を嘆き悲しみ続けるのではなくて、その悲しみを何とか自分の中に受け入れつつ、彼女の面影を抱きながら、それでも「僕は強く生き
てゆくよ」という彼女への誓いが歌われている。このアルバムは悲しみの歌で覆われた印象が強いのですが、いっそのこと全楽曲で愛する人、恋しい人と歌われて
いる人たちが亡くなっていたら・・・と自分に言い聞かせながら聴くと、オリジナルで聴いた印象とまったく異なる深さを感じるから不思議です。「2.PAIN」では彼女の
死を悲しみながらも、それでもそれを受け入れ生きてゆく人間の強さを。「3.悲しみの岸辺」では「君を失くしたら この旅も終わりさ」と歌われているけど、その「君」は
もうこの世の人でなく「彼の心の中から彼女が消えたら」と思って聴くと・・・。「4.ガラスの部屋」ではありし日の彼女との若き日の回想録が。「こんなに遠く離れてし
まった二人の心」って一節が違う意味に聴こえてくるから不思議。「5.A LONG GOODBYE」は彼女の心を引き裂いて別れた男が「はじめからやり直したい」という想
いを綴る歌ですが、彼女がもしこの別れの後不慮の事故か何かで亡くなってしまうとしたら・・・と思って聴いてみると・・・。「6.NEW YEAR'S EVE」では男の魂が生前
の姿となって彼女の前に現れたとしたら・・・「急がないと 最終の電車 ベルが鳴ってる」というのは「1.君に捧げる〜」の『もう行かなきゃ』と手を振る」彼女と同じよう
に、この男がこの世にいられる時間に限界が来たのでは・・・?最後の「さよなら」が染みる。「7.GIVE ME〜」は、この曲に限っては出会った「君」ではなく、昔傷つけ
た人が亡くなっていたとしたら・・・男の心の暗闇は計り知れない。たとえその闇から救ってくれるかもしれない「君」に出会ったとしても・・・。「8.君の名を呼ぶ」では
「君が欲しい 今すぐ」と、いたる場所で君の名を呼んでみても、返ってくるのは街の喧騒や残酷なまでの静寂のみ・・・友達だとしてもいいから生まれ変わって僕の
前に現れてほしいっていう男の心が叫ぶ歌に聴こえます。「ふとみせる〜誰かに恋してるの?」ってフレーズが余計に切なく感じられます。そうすると「9.紫陽花のう
た」は幽霊に恋してしまった男の歌にも聴こえてきますね。「君と暮らしたい」という不可能な願いがすごく切ない。「10.永遠の恋人」は夢の中でしか出会えない恋人
へのメリークリスマス・・・優しいメロディーとは対照的に深い悲しみに近い感情に包まれます。「11.星の指輪」ではあたかも夫婦が子供を預けて夜の街へ出かけて
ゆくような印象ですが、もし奥さんの幻の姿を見ている男の歌だとしたら・・・幸せな歌も一変して悲しみの歌に変わってしまう。そしてこのアルバムのテーマ曲ともい
うべき「12.初秋」。もしこの曲に出てくる主人公の男が、自分が死んでしまっていることに気づいていないとしたら・・・本当はもうこの世を離れてしまっているのに、彼
女を思う強さのあまり「いつか君を見送る時が来たなら」と歌う・・・は、はかなすぎます。「13.我が心のマリア」はもう二度と会うことのできない女性に対して歌われた
楽曲・・・いや「マリア」というのは自分の一番大切な人のことなのかもしれない。肉体は死んでも魂は死なず・・・宗教的な話になってしまうかもしれないけど、やはり
魂はそしてその魂を思い続ける人々の心は不滅なのかもしれませんね。このアルバムは「バラードアルバム第4弾」と銘打たれていますが、ボクの中では「バラード
アルバム」は3部作で完結しています。このアルバムはこの世からいなくなってしまった人たちの魂を生きている我々が想い続けることで、その魂たちはいつまでも
この世に生き続けることができる!ということがテーマなんじゃないかな。浜田省吾の楽曲は、リスナーの聴き方、感じ方によっていくらでも変化する、独特なすばらし
さを持っていると思います。なんせいまだにボクは『片想い』は男の歌だと思っているんですから(笑)。ただボクの場合は聴く力というより想像力かもしれませんね?
(笑)それにしてもきっとこんな聴き方、ボクだけだったりして(笑)。

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