3rd album
「壊れた扉から」 (1985/11/28)
through the broken door
 
さまざまなスタイルの楽曲が収録されていますが、全二作と決定的に違うのは
どの曲もどこか「破滅」に向かっていっているような雰囲気をにおわせていることです。
前作以上の混沌さがアルバムのいろんな場所から感じられる
俗にいう十代三部作・最後の作品(彼の20歳の誕生日の前日に発表されている)。
 
 
1. 路上のルール  
 この曲を聴いてると、都会の生活にまみれて疲れきった人々の表情が浮かびます。疾走感は

彼らしいのだけれど、明らかに前2作とは違う感は否めません。夢を信じて裏切られ続けてきた

青年。でもどんなにどん底に突き落とされた時にも、汗と音楽は彼から離れては行かなかった
・・・彼の歌手としての決心とも受け取れます。”お前の笑顔をさがしている”が救いですね。
     
2. 失くした1/2  
 今までは自分の感じてきたことを歌ってきた彼が、相手に向かってメッセージを放っている。
前作から一年経たずして、彼はきっと大人の世界でたくさんのつらい目に遭ってきたのだろうな
と、余計な推測で勘ぐってしまいますが(笑)皮肉にもこの曲が彼の作品の中で一番ポップに感
じてしまうのです。それとも自問自答の歌なのか?そうだとしたらこの相手とは・・・彼自身かも。
     
3. Forget-Me-Not  
 この盤の締め切り直前に作られた曲だというのは有名な話ですが、それでもこのアルバムの
中でこの曲が一番好きって人が多いんじゃないかなって思います。君と僕はこの街の中ではち
っぽけな存在。やがて僕らの愛もこの街に飲み込まれてしまうんじゃないか・・・そんな不安を抱
きながらも、君と初めて出会ったあの日の空を忘れないと決心する、悲しいバラード曲です。
     
4. 彼  
 はっきりいって歌詞の意味がわからない。というか、とても抽象的なんですよね。メロディだけ
聴いてるととてもかっこいいのですが。ただここで描かれている世界も決して安らぐ場所などな
くて、切羽詰った緊迫感を感じます。”彼”と第三者的に描かれていますけど、尾崎さんがこの
”彼”を通して描こうとしていたのは、行き先を見失った尾崎さん自身なのかもしれませんね。
     
5. 米軍キャンプ  
 おそらく曲の「暗さ」「重たさ」からいうと、彼の楽曲の中で1,2を争うんではなかろうかと思える
ほど暗闇な作品。だけどボクはすごく好き・・・というか、すごい曲だと思います。ここにはもう
OH MY LITTLE GIRL』の頃のような恋人たちはいません。若くして人生の重みを知ってしまった
恋人たちの悲しすぎるストーリーが描かれています。彼の鬼気迫るボーカルには圧巻です。
     
6. Freeze Moon  
 想像絶する『米軍キャンプ』の暗さから一転(笑)エレキギターがかきむしられ、夢に辿り着け
なかった少年達の表情をシャウトする彼がそこいます。中期の彼のテーマ曲と言っても過言で
はないほど彼に似合いすぎてる曲です。今まで生きてきた人生も、そして今この瞬間を生きる
自分もきっと何かが違う・・・そう言い聞かせながら少年たちは今夜も街をさまよい続けます。
     
7. Driving All Night  
 『Freeze Moon』の流れを汲んで疾走するロックチューンです。だけどそこにはもう『十七歳の
地図』の頃の彼はいません。街は人を勝者と敗者に別けたがる。そして敗者に別けられた若
者たちは、行く当てもなく街の国道を走り続ける。でも勝者って、敗者って何だろう?とにかく
この曲は彼が死に向かって走り続けているように感じてしまうのです。走れば走るほど・・・。
     
8. ドーナツ・ショップ  
 非常に珍しい曲だと思います。この曲、サビの部分に歌詞がない。「フゥゥフゥ〜」がサビで
す。でもやっぱり彼の曲らしさを感じますね。好きで一緒にいるはずなのに、寂しさばかりを感
じてしまう恋人たち。ふと思ったんですけど、この二人は『FORGET-ME-NOT』のその後の二
人なのかもしれませんね。彼はいつまでも何かを探し続ける。何なのかがわからない何かを。
     
9. 誰かのクラクション  
 キミョウキテレツな歌詞で綴られたアルバム最後の曲。とにかく歌詞と歌詞がしっくりこない
のです。”ピアノの指先のような街の明かりの中”〜?ボクの想像力が乏しいだけなのかもし
れません。が、もしかしたらこの曲は感覚で聴く曲なのかもしれません。言葉でではなく、イメ
ージで感じるべき曲ではないのかと。そしたら最近になってわかってきたような気がしました。

 

尾崎豊トップページへ