3rdアルバム
「新たなる香辛料を求めて」

2004年5月26日発売

1. 太陽 〜邂逅編〜   7. 声
2. 紫陽花と雨の狂想曲   8. 生きとし生ける物へ
3. 愛し君へ   9. 革命前夜、ブラックジャックに興じる勇者たち
4. 旅立ちの朝   10.今が人生
5. 青春のメモワール   11.なんにもないへや
6. 例えば友よ    
 
 インディーズ時代を通しても初となるフルアルバム。彼の作品独特な少々ぶっきらぼうな言い回しが印象的な「1.太陽」。さりげなく日常的
な出来事が散りばめられていてすごく親近感を感じる曲です。実は自分が生まれたことってまさに”奇蹟”なんだよね。アップテンポな「2.紫
陽花と雨の狂想曲」はかなり思い込みの激しい男の顛末がコミカルに描かれていますが、一歩間違えればストーカー(笑)。思わずその荘
厳な世界に引きずり込まれてしまいそうになる「3.愛し君へ」は、まだ見ぬ愛しい人を求める男が歌われています。もし君が現れてくれれば
僕はきっと人生のどんな荒波も乗り越えてゆける・・・そんな男の切実な願いを感じます。「4.旅立ちの朝」は愛する”君”が眠ってる間にさよ
ならしようと決心した男の旅立ちが描かれています。思いのままに生きれば生きるほど”君”を傷つけてしまう男の心境、複雑ですよね。若
きボクサーの栄光と挫折を描いた「5.青春のメモワール」は他人事とは思えません。「今日負けたら実家の呉服屋を継ぐ」という彼の決心む
なしく試合の結果は・・・。つづく「6.例えば友よ」にも共感しちゃうな。実は「自由気ままに生きる」ってことほど難しいものはないです。そして
さりげなく曲中にあのアルバムタイトルが(笑)。彼独特のファルセット・ボイスが存分に発揮された「7.声」。この声が届くようにもう隣にはい
ない”あなた”に向けて歌い続ける女性の想いが綴られています。”どうにかなるさとおどけても どうにもならないことがある”・・・う〜む、確
かに!とうなづいてしまう「8.生きとし生ける物へ」。人間ってどんなにキレイにしてたって汚れを隠しているに過ぎない生き物なんですよね。
そこら辺を包み隠さず歌えてしまう彼に感服してしまいます。「9.革命前夜、〜」はオルゴールをバックにした詩の朗読。歴史上の大人物と
ともに並べられたインスタントラーメンと杏仁豆腐(笑)。いくら思いを馳せようと、実は真実はいくらでも目の前に転がっているものなんだ。
「幸せ」という目に見えない希望の地へ向かう青年の思いを歌った「10.今が人生」は彼の置く視点がすごく普遍的な曲だと思いました。たい
そうな希望用語を並べてみたって現実は始まらない。ならば今を一生懸命生きて腹から笑おうってスタンス、すごくわかるな。そしてラスト
の弾き語り曲「11.なんにもないへや」。思わず4畳半の畳の部屋の中でうずくまりながら口ずさんでる男を想像しちゃうんだけど、こういう世
界観って大好きなんですよね。「暗い」っていうより、それが「本音」なんだと思う。実にさまざまなスタイルを持つ曲で構成されたこの盤は彼
の音楽を語る上で外すことのできない核になる名盤だと思います。新たなる香辛料を求めて、彼はさらなる新しい自分への船出をする。

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