17thアルバム「SAMURAI」

1998年10月14日
 彼のするどい眼光がそのままジャケットになっているのが印象的な17枚目のオリジナルアルバム。まさにサムライの眼
差しをそのままアルバムにした・・・ようなものではないからまた深いんですが(笑)。和太鼓が優しく鳴り響くミディアムテン
ポな「1.Never Give Up」は、少年が自分の存在の意味に悩みながらも前へ進んでいくという物語。すごく覚えやすいメロデ
ィなんだけど、一発で彼の曲だってわかっちゃうところに彼のメロディメーカーの才能を今さらながら感じます。そして次の
曲も100%彼らしいね(笑)。「2.でんでん虫」はどこかで聴いたような童謡をモチーフに歌われた痛快なロックチューン。「3.
オホーツクの海」はギターアンサンブルが印象的な、愛する人が目の前からいなくなってしまった男と女の心情が綴られた
楽曲。一方で激しい感情を歌いながら、もう一方でこういう繊細な心を歌えるからすごいんだよな、彼は。その激しい方の
「4.お釈迦さま」の登場です(笑)。悪徳坊主を主人公に描かれたこの歌は、まさに長渕剛のダークな部分のオンパレー
ド。気持ちいいほど突き抜けてます。そしてのちにシングル化されたこの盤のタイトル曲「5.猿一匹、唄えば侍」へと続きま
す。今の日本の男たちへの切なさ、やるせなさを綴りながらついには彼自身にも牙を向ける曲。猿と人間・・・”生きる”って
事に関しちゃ五分五分・・・いや猿の方が上回ってるかも。「6.ふたつの責任〜愛してる〜」は美しくもはかないバラード曲。
俺は一生懸命に貴女を叱った。そして貴女は一生懸命に俺を疑った・・・そして二人の運命は「7.指切りげんまん」へと繋
がってゆく。二人で一緒にいたかったはずの心たちが、いつの間にか二人になったらなおさら涙が出てくるような関係にな
り、そして別れてゆく恋人たち。いつも君の事だけ思い悩み愛してきたはずだったのに・・・それが重荷になったのかもな、
彼女は。「8.俺たちの心にジングルベル」サンタクロースを待っていた幼き頃の自分と今の自分を見つめる楽曲。たとえ
ブリキのおもちゃでも、その頃はもらえてうれしかったなあ・・・そんな彼の言葉が伝わってくるような心が聴く者を和ませ、そ
して涙させます。「9.どつぼにはまってどっぴんしゃ !!」は即興演奏のような、男と女の愛憎劇を歌った楽曲。いや〜ライブ
では演奏されませんでしたけど、メチャクチャ好きなんですよね、この曲。真剣になるって、命をかけるってことなんだよね。
なかなか実感できないけど。「10.くちづけ」は日本的なSEとシリアスで迫り来るようなメロディが印象的な悲しくも美しいバラ
ード曲。この中で彼は子供たちに対して生きることへのメッセージを放っていますが、それがすごく染みてくるんです。さらに
ラストを飾る「11.ふるさと」彼のルーツに彼自身が迫った告白にも似た名曲。実を言うとこのアルバム、ボクの中ではかな
りナンバーワンに近いアルバムでもあるのです。それだけにこの盤のツアーが途中で中断されたのは本当に残念でした。

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