ひげをたくわえたりりしい彼のうつむきかげんな表情が印象的なジャケットです。前作のタイトル『風待通りの人々』と今作『夢の吹く頃』 |
は、どこかで連動しているような気がしてしまうのはボクだけかな?どちらの盤も「”夢”という風が吹くのを待っている人々」を描いたような |
イメージを不思議と思い浮かべるんですよね。「1.ETERNALLY」はさだ版「ディズニー映画主題歌」とでもいうべきロマンティックな一編。 |
やさしさが注ぎ込まれている作品です。「2.雨の夜と淋しい午後は」は、そんな情景に出くわすたびに思い出してしまうかつて愛した女性を |
歌った楽曲。哀しい思いをして別れたはずなのに、美しさだけが残っているっていうのが恋というものの不思議なところですよね。「3.昨日 |
・京・奈良〜」はかの名曲「パンプキンとシナモンティー」の流れを汲むコミックソング(って言っていいのかな?(笑))。修学旅行のあらゆ |
る思い出をコミカルにつめこんだ軽やかな逸品です。「4.理・不・尽」は、まさに世の中の理不尽さに疲れた男の哀歌。どうか僕の弱い心 |
が理不尽さに飲み込まれないように抱きしめておくれ、っていう男の弱さを歌った曲です。思いっきり共感してしまった曲でもあり(笑)。タ |
イトル曲「5.夢の吹く頃」は、自分ひとりの力だけでは夢を達成することはできない。いろんな要素が絡み合っていざその日が来るまで、自 |
分の準備を怠るな!と檄を飛ばされているようなシリアスな曲。「6.二軍選手」は売れない歌手とプロ野球の二軍選手との交流を描いた作 |
品。歌にしろ野球にしろ、陽の目を見なくたって自分が好きかどうかが大切なんですよね。好きなことをしてご飯が食べられる・・・憧れで |
すよね。もちろんその裏側には大変な苦労があるのだろうけど。「7.マグリットの石」は”あいそ笑いで生きるより
ののしりの中で死にたい” |
という一節が胸に残る楽曲。この世で最初に何かをした、もしくは発見した人たちっていうのは皆こんな風な人生を送ったのだろう。でも |
やはり嘘をついてしまう。誰かに笑ってほしいから・・・。「8.紫野」は人間が生まれてからいろんな経験や恋をしながら変わってゆくさまを |
歌ったバラード曲。彼の作品独特の京都のあらゆる風景が歌詞中に盛り込まれていますが、それがこの作品の荘厳さを高めている気が |
します。「9.あなたを愛したいくつかの理由」は妹の佐田玲子さんとのデュエット曲。愛っていうのは相手がいなくなってから考えるっていう |
彼の理論に思わずふむふむと思ってしまいます(笑)。そうなんですよね。相手の大切さっていうのはいなくなってから初めてわかるってい |
う場面ばかり。だから難しい(笑)。「10.天狼星に」はアコースティック・ギター一本で綴られた楽曲。大好きな父親よりも好きな男性ができ |
てしまった女性の思いを綴った曲。彼の元へ向かう夜汽車の中で通りすぎる駅の数だけ不安も広がってゆくっていう描写が素晴らしい。 |
人は生きているだけで、すでに”夢”という風を受け入れる準備ができてるんじゃないかな?とまで思ってしまった名盤なのであります。 |