ソロ 17thアルバム
「家族の肖像」

1991年7月25日発売

1. 春     5. 猫に鈴     9. 秘恋
2. ハックルベリーの友達     6. October リリー・カサブランカ〜     10.奇跡 大きな愛のように〜
3. ヨシムラ     7. 秋の虹      
4. 神様のくれた5分     8. 戦友会      
 
 「家族と春夏秋冬」をテーマに掲げられたコンセプト・アルバム。トップバッターとして「春」を飾るのはその名の通り「1.春」。やっと出会った
本当の「恋」。この恋を掲げて今度こそしあわせにしてあげたいと決心する男の旅立ちが描かれています。「2.ハックルベリーの友達」は「い
つまでたっても子供のような心を忘れたくない」と願う彼の思いが表れたにぎやかな楽曲。久々に会ったあいつの目が曇ってた・・・って言
われないようにしたいな(笑)。そして彼が実際にそんな場面に出くわす弾き語り曲「3.ヨシムラ」。昔一緒に遊んでいた友達に何十年後かに
出くわした時に相手が自分のことを覚えていなかったってこと、ボクも何度かあるんですけどやっぱりどこかがっかりする反面なぜかホッと
してしまう。なんでかな?そして舞台は「夏」へ。「4.神様のくれた5分」は待ち合わせのちょっとした間に見かけた、かつて自分の着ていた
制服で下校する学生たちにあの頃の自分を重ねる女性の気持ちが綴られています。あの頃感じていた悲しみも今ではいい思い出・・・優
しい歌です。「5.猫に鈴」はビーチサウンド。誰にも捕まらない高嶺の花の君。猫の鈴でもつけようかと話していたら、彼女が家で飼ってる猫
に鈴をつけてきたと言い出したから「へっ?」となってしまった男たち。微笑ましい歌ですね。そして季節は「秋」へ。「6.October」はもう目の
前にいない愛する人への想いを歌った楽曲。今日は彼女の誕生日。いったい誰と祝っているのだろう?・・・思い出の色はあせても君の面
影は決して色あせない。『秋桜』で花嫁から母親への想いを歌った彼は「7.秋の虹」でその逆を歌っています。生まれてからの娘の成長を
思い返しながら、うれしい反面離れていってしまう娘への母親の寂しさが切ないメロディーと共に歌い上げられています。こうして歴史は繰
り返されるんですね。「8.戦友会」へ出かけた父親をモチーフに描かれたこの曲は、父親の描写と曲調はコミカルですがその裏に隠された暗
い青春が胸を締めつけます。否が応にも兵士に仕立て上げられ戦地で友人の死を何度も見てきた父親。それでもあの時代の人間はみな
一生懸命に生きようとしていた・・・襟を正さずには聴けない楽曲。その戦争に引き裂かれた愛を描いた「9.秘恋」。祖母の形見にあった写
真の青年と祖母の恋が成就していれば自分はここにはいなかった、と考えれば複雑な思いがしてしまうけど、ただ亡くなるまで心に秘めた
恋を持ち続けていた祖母のことを考えれば、込み上げてくるものがあります。冬を経て季節はふたたび「春」に。「10.奇跡」は誰かを愛する
ことは、神の所業にも匹敵するほど人に力をくれるんだよってテーマを持つ壮大な名曲。そしてその愛によって新しい家族が生まれてゆく。
彼の数あるアルバムの中で、最も喜怒哀楽の激しさを感じる一枚です。だって「家族」って一番気が置けない最も身近な単位ですもんね。

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