2nd album

「回帰線」(1985/3/21)

Tropic Of Graduation

 

12inchシングル『卒業』で火がつき、初めてチャート誌1位を記録したヒットアルバム。

どちらかといえば前作よりもロック色が濃くなっており、少年と青年の間を行き来している感がある一枚。

「学校」という枠組みの中から放り出された彼は何を求めたのか・・・そして彼の言う自由とは・・・。

そんなテーマをこめた珠玉の10曲が収められています。

 
 

1. Scrambling Rock'n Roll

 
 のっけから「自由になりたくないかい?」とリスナーをあおる尾崎豊の肖像が浮かび上が
る激しいロックチューン。街はどこ行くあてもない孤独な男と女の吹き溜まりだ。やがて自
分が望んでいた夢や希望さえかき消されてしまいかねない場所。だけどその夢や希望を
あきらずに立ち向かっていこうよっていうメッセージが込められた楽曲。ハードです(笑)。
     

2. BOW !!

 
 サラリーマンの友達の前ではかなり歌いにくい曲なんですよね(笑)。否が応でも社会に
飲み込まれてゆく若者たちは、確かにドンキホーテみたいです。確かボクもそうだった・・・
はず(笑)。”死んでもブタには喰いつくな”・・・ただ時と場合によってはブタに喰いつかな
きゃいけない時も出てくる・・・って言ってる時点でこの曲で言うブタですね、ボクは(笑)。
     
3. SCRAP ALLEY  
 このタイトル”スクラップ・アレイ”というのは、尾崎豊が関係してた暴走族の名前らしい
ですね。19にして父親になった友人と車の中でバカやってた頃を回想していく・・・というの
がこの曲の大きな流れなわけですけど・・・19でもう回想かよ(笑)。でも友人はもう父親と
して家族を守るという生きがいを手にしてる。そんな友人に贈った歯切れのいい楽曲。
     
4. ダンスホール  
 デビューのきっかけになったオーディションで歌ったうちの一曲として有名ですが、個人
的には演歌の世界に近い印象があります。ディスコで酒をふるまう少女は、これから先
どうなっていってしまうんだろう・・・そんな彼女を不安げに優しく見守る少年の視点で描
かれた曲。これも個人的ですがアルバムアレンジより弾き語りの方が伝わってきます。
     
5. 卒業  
 自分の高校時代の想い出が元になっている彼の代表曲のひとつ。校舎のガラスを割
ったのは彼ではなく彼の友達だけど、この一節により大多数の大人達から偏見の目でみ
られてしまったようです。けど彼だって胸中はガラスを割ってまわりたいほど思いつめて
いたのだろう。ボーカル・メロディ・アレンジ全体にわたって素晴らしいですが、特に”卒業
していったい何わかるというのか”からラストまでの怒涛の攻撃が聴く者を熱くさせます。
     
6. 存在  
 尾崎豊の「明」の部分を代表する曲だと思います。だけどここで歌われていることは決
して明るいことではなくて、否が応でも生存競争の中に引きずり込まれてしまう社会の中
で「自分」という”存在”をしっかり持っていこうっていう決心にも受け取れます。すべてのも
のを受け入れることができたら・・・自分の”存在”は今にも増して輝くのかもしれない。
     
7. 坂の下に見えたあの街に  
 少年が両親からひとり立ちして、これから見知らぬ街で暮らしていこうとする旅立ちの
歌。今まで気づかなかった親の温かさや優しさが、旅立つ少年に改めて家族というもの
の大切さを感じさせてくれるという、今もっとも必要とされているテーマなのかもしれませ
んね。揺れ動く少年の巣立ちが描かれたすがすがしい、でもちょっと寂しい歌なんです。
     
8. 群衆の中の猫  
 実は彼のバラード曲の中で最も好きな曲なんです。黄昏てゆく街の中で、きらびやかな
街の灯りしか見ない君と、君だけを見つめていたい僕。時々君を見失いそうになる僕だ
けど、君を守る傘になりたい・・・そんな健気な少年の姿が、彼独特のかすれた歌声とメ
ロディで綴られていきます。彼だけにしか出せない世界観がそこに広がっている名曲。
     
9. Teenage Blue  
 彼の楽曲に初めて”ドラッグ”という単語が登場する曲。この曲実に苦手なのです。怒
られるかもしれませんが、アルバムを聴く時にはこの曲は確実に飛ばします。この曲だ
け妙に背伸びしてるというか、気取りすぎてるなっていう印象を受けてしまうのです。彼な
りのブルースなのでしょうけど、やはり好きになれない。メロディは好きですが(笑)。
     
10.シェリー  
 シェリーという架空の女性に向かって歌いつづける彼の代表曲。孤独は時に自分を見
守っていてくれる存在を欲します。”お前が見つめていてくれさえすれば、俺はたとえ何度
倒れようともまた立ち上がって歩き始められるだろう”・・・彼は決して強い男じゃない。ど
ちらかといえば弱い男だ。でもそんな彼だから共感してしまう自分に気づく歌なのです。

 

尾崎豊トップページへ