前作『清涼愛聴盤』で一区切りついた彼は、今まで自分の歌では取り上げなかったテーマに取
り組み出しました。それは今の日本を歌うということ。青春の切ない心情を歌いつづけてきた彼に
とっての新天地のアルバムですね。「1.釦(ボタン)」は、ボタンからイメージを広げて”争い”をテ
ーマにしたロックチューン。「2.東京哀歌」は”東京”という街を題材に、街の華やかさとは対照的
に暗く沈む心を歌った楽曲。「3.アキナ」は彼の後期の代表曲。当時自分をとりまく状況に苦しむ
中森明菜さんのために作った楽曲だそうです。彼は彼女のファンできっとその時の状況をなんと
か救ってあげたかったんでしょうね。「4.駄目な男」・・・あ、ボクのこと?(笑)でも自分のことをこ
ういう風に思うぐらいの謙虚さは、男には必要だよなあって思いますね。あくまで個人的にですが
(笑)。「5.愛着」はこのアルバムの中でも屈指の名曲。日本の素晴らしき四季の情景の中に男の
切ない心情を散りばめた楽曲です。「6.夕日と少年」はアップテンポなロックチューン。久々に少
年の心を歌った曲で、”夕日と少年”というシチュエーションがまさに彼らしいです。「7.タカハシ」
はサッカー少年である友達の栄光と挫折を観客席から見てる主人公、という設定。スポーツにす
べてをかけてる友人が試合に負けた時、彼は・・・。「8.帰宅」は帰宅途中に徐々に見えてくる暖か
い灯に揺れている我が家が見えてきた時のお父さんの心情を歌ってます。なんてアットホームな
楽曲なのでしょう。「9.群衆」は、ラッシュ時の駅のホームなんかを想像してしまいますね。これだ
け大勢の人がいるのにみな孤独を抱えて生きている・・・彼らしい視点ですねえ。「10.稚内から」
は昔恋人と訪れた北の地に、後年自分ひとりで来た時の心情を歌っています。最果ての北の地と
同じように自分の心も凍りついている・・・と歌っています。このアルバムはまさに”90年代の村下
孝蔵”という新しい自分への脱皮、ということをテーマにしているような気が、ボクにはしますね。
11thアルバム 
「新日本紀行」

1991.4.25

 
 
1. 釦(ぼたん)
2. 東京哀歌
3. アキナ
4. 駄目な男
5. 愛着
6. 夕日と少年
7. タカハシ
8. 帰宅
9. 群衆
10.稚内から
 
 
 
 

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