槇原敬之 「君が笑うとき 君の胸が痛まないように」

-このアルバムを聴け!Vol.3-


 このアルバムにはボクの青春と挫折の日々が詰まってるような感覚を持っている。
とにかく彼が書く歌に登場する男はナイーブでちょっと恋することに臆病な感じなのだが、
そこがいいのだ。(世の中そんな格好いい男ばかりではないのだ!)
 
 彼の曲を初めて聴いたのは、大ヒットした「どんなときも。」以前に、深夜ラジオ「オール
ナイトニッポン」で出演した時にかかっていた「桜坂」(このアルバムの5曲目に収録)で
あった(福山雅治の同名曲よりも名曲だと思っている)。
 
 その瞬間、「あ!まだこんな歌を書くアーティストがいたんだ!」と小躍りし(←おおげさ)、
次の日予定通り予備校をサボり(コラァ!)、CDを探しに行ったのだった。
 
槇原敬之
「君が笑うとき 君の胸が痛まないように」
1990年10月25日発売・全10曲
   
 タイトルからもわかるように、この物語(アルバム)に出てくる男たちは、みな相手を気遣い
しすぎてしまうほど、恋愛に不器用なのだ(ボクも同じなのだ)。それがボクの印象度を更に
高めたのかもしれない。
 
 ここらで一気に全曲紹介!(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
 
1. ANSWER
 のっけからバラードなのだが、この切なさ感がよいのだ。ふたりは自分たちの
日頃の忙しさから何とか予定を合わせてデートしていたが、せっかく会えた時間
にかぎって、時というのは無情にも矢継ぎ早に去ってゆく。そう、楽しいひととき
こそ時間の経つのって早く感じてしまうものなんだよね。「地下鉄の改札口」とい
う設定が、臨場感を出している。
   
2. RAIN DANCE MUSIC
 シリアスさを醸し出すピアノメロディーからはじまるミディアムナンバー。男は雨の
風景の中で自分の前から去った彼女のことを思いだし、雨に何度も打ちひしがれ
る。それとは対照的にプール帰りの子供たちは雨の中をはしゃいで笑っている。こ
の対照的な表現が男の切なさをさらに表していて素晴らしい。
   
3. 80Km/hの気持ち
 キーボードを多用したポップな楽曲。好きな女の子に、別の男性への恋の
相談を受けているというヒジョーに世知辛いシチュエーション。「ふたりはお
似合いだね」なんてシャレながらも、「実は僕は君のことが好きなんだよ」
と声のないアピールをし続ける男。この歌では結末はわからないが、彼は
自分の想いを彼女に伝えられたのであろうか。(ボクにも似た経験が・・・)
   
4. 12月の魔法
 これから念願の彼女とのデートへ向かう男のハッピーな気持ちがこめられている
バラード。「寒いから冬は嫌いと君が言うから 僕がいるだろって言ってもさっぱり
意味がわからず聞き返す君が好き」ってどうぞ勝手にやってください(笑)。
   
5. 桜坂
 ボクが彼を知るきっかけとなった記念すべき曲。この曲は友人が自分の住む街
から出ていったけれど、「手紙を出す」という約束も懐かしい思い出となり、結局
音信不通。友人にはいつまでもこの街を忘れないで欲しい、という想いと、「少し
辛いですと君の文字をどこかで見つける度 すぐに飛んで行けたあの頃が本当に
懐かしい」という一節が胸を締めつける。
   
6. CLOSE TO YOU
 このアルバムの中で一番スピード感のあるナンバー。状況としてはこのアルバム
の1曲目「ANSWER」に似てる。彼女に対する男の精一杯の気持ちが表されたラブ
ソングで、「ひび割れた唇が少しだけ痛かったキスも 観覧車の中に忘れた手袋も
今僕らがこうして幸せでいられることに ひとつだって欠けちゃいけない」・・・うーむ
真理だな・・・。
   
7. NG
 あまり有名ではないが、彼のデビュー曲。ミディアムテンポで淡々と流れてゆく
メロディーに、最初聴いたときにはあまり感じるものがなかったんだけれど、その
曲と詞を噛み締めていくうちに、彼女と別れた男のヒジョーにブルーな気持ちを
描いた名曲。「二人で暮らした日々よりも 誰かの噂を信じた 僕になぜうつむい
たままで何も言い返せなかったの」・・・せ、切ない。
   
8. FISH
 やはりこの曲も別れた男女が水族館で再会し、しかも彼女は新しい彼と一緒
だったという、ヒジョーにキビシー!(財津一郎調で(笑))状況の男の心理を描
いた名曲。彼女を水の中を自由に泳ぎまわる魚に例えてるところが秀逸。間奏
に流れる悲しげなフルートの音色が、今夜もあなたの心に響きます・・・。
   
9. 君を抱いたら
 やっとめぐり逢えた恋人と一緒にいることの喜びを表した曲なのだけれど曲調は
ちょっと暗め。「何度も悲しい別れをくり返してきたのが 君に会うためならそれも
わるくない」・・・ちょっとキザに聞こえるこのセリフも、彼の歌声とメロディーに乗ると
そうは聞こえないから不思議。
   
10.北風
 このアルバムのみならず、彼の全ての楽曲の中でも屈指の名曲。のちにリアレ
ンジされ「北風〜君に届きますように〜」としてシングルリリースされている。その
街にその年初めて降った雪のことを早く好きな彼女に知らせたいという男の純情
な気持ちが表現されている。曲の最初から最後までいろいろな人に聴いてもら
いたい、アポロ一押しの楽曲なのである。
 
 このアルバムには彼の顔写真というものはなく(自信がなかったんだろうか←失礼な奴(笑))、
ジャケットから何から布で描いたイラストレーションのみなのだが、それがかえって楽曲たちの
温かみを出しているような気がする。彼の顔はとうとう2ndアルバムが出るまでわからずじまい
だったのですが・・・(笑)。とにかくこのアルバムは買ってでも聴く価値あり!
 

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