浜田省吾 「君が人生の時・・・」

-このアルバムを聴け!Vol.7-


 浜田省吾といえば、「悲しみは雪のように」「片思い」「もうひとつの土曜日」が有名だし、ボクも好きなんだけど
アルバムをトータルに見渡してみると、このアルバムがボクのベストである。
 このアルバムの1曲目の「風を感じて」がスマッシュヒットを飛ばし脚光を浴びるが、その後1986年発売の2枚組
アルバム「J.BOY」がチャートで1位になるまで、彼のアルバムはチャート的には陽の目を見ない。
 
 数ある彼のアルバムの中で、比較的おとなしめのアルバムであるが、なぜこのアルバムに惹かれるかというと、
浜省の楽曲の魅力である「青春の切なさ、みずみずしさ」が見事に散りばめられ、ガツーンとボクの心に突き刺さ
ったからである。
 
浜田省吾

「君が人生の時・・・」

(1979年12月5日発売・全10曲)
 
 ここで全曲紹介とまいりやす(笑)!
(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
   
1. 風を感じて
 この曲はシングルとして発売され、スマッシュヒットを記録したそうだが、初めて
聴いた時は何か軽すぎて好きになれなかった。でも聴き続けていくうちに好きに
なった曲。「街の中ではいろいろなものが渦巻いていて息苦しいけど、自由に生き
てく方法なんて100通りだってあるさ。だから気楽に力を抜いて行こう」という内容。
浜田省吾らしいポップの定型が感じられる。
   
2. ミス・ロンリー・ハート
 彼の実体験を歌にしたそうだが、ヒジョーにみずみずしくて「若さ」があふれてる。
「優しい男達が君の耳元でささやく 恋のかけひき苦手な僕はただ遠くで見てただ
け〜」・・・うーん、ボクと一緒(笑)。今でもなかなか同世代の異性とはあまりうまく
喋れないんだけど、そこら辺がこの曲に共感してしまうのかもしれないな。
   
3. さよならにくちづけ
 大学を辞めて仕事をはじめる青年と彼女の別れを描いた名曲。この切なさが
彼の楽曲の魅力であり、「しばらく会えない旅に出るから でもそれが君との
別れだった」の一節に胸を締めつけられた。彼女との馴初めから別れまでを5分
という楽曲の中に見事に描ききっている。この点だけ見ても、彼はすごいメロディ
ーメーカーだと思う。
   
4. 青春のヴィジョン
 ヒジョーにメッセージ性のある詞。そしてメロディーも疾走している。「もうこれ以上
走れないよ そう叫びながら走り続ける」という部分に現実を感じる。人生を生き抜
いていく以上、走り続けなければならないことを歌っている。現実はもちろん「喜び」
も運んでくれるが、それ以上に苦しみも運んでくる。でもそれをきり抜けてこそ、本当
の「喜び」に到達できるんじゃないかな。そう感じさせてくれる曲。
   
5. とぎれた愛の物語
 彼の楽曲の中で「これは!」と思える曲を一曲挙げよ、と言われたらボクはこの曲
を挙げると思う。この曲の世界は暗闇に満ちている。主人公は彼女との別れを選択
する。そしてこの別れによって彼は自分の愛していたのは彼女ただ一人であること
に気づく。「愛がさめた今でも ただひとりの人」というフレーズが、彼に「優しさ」を
取り戻させてくれているんだと思う。個人的には「君の微笑」の続編じゃないかと思
ってるんだけど、あの物語の終局がこれでは悲しいな。でもそこが彼の楽曲の魅力
である(容赦ないところがね)。
   
6. 恋の西武新宿線
 彼がソロデビューする前に在籍していたバンド「愛奴」の楽曲であるが、作詞作曲
ともに彼のものである。すれ違っていく恋人達のワンシーンを切り取った一曲である
が、明るい楽曲の中になぜかさびしさを感じるんだよね。歌詞にもところどころに暗
い影をおとしている言葉が散りばめられていて、傑作。
   
7. 4年目の秋
 ひとり暮しの女の子の生活をつづったバラード曲。あまりにも孤独な彼女を、思わ
ず守ってあげたくなっちゃう気持ちになる(ワタクシは決して怪しい者じゃありません
(笑))曲。「電車の扉押しつけられて 朝陽の中を君は一人」「本当の愛見つける
その日まで 夜更けの街を君は一人」・・・このフレーズが彼女の孤独さを物語って
いる。「きっと幸せになるよ!」と、そんな言葉をかけたくなってしまう一曲。
   
8. 今夜はごきげん
 このアルバムの中で一番楽しい曲だろうな。あまりにも他の曲が影をおとしている
ため、フツー以上に楽観的に聴こえる。でもこの曲も恋の哀しさを歌っている曲なの
である。「22才でもうへたばっているけど」・・・ボクの22才もこんな感じだったな。周
囲のプレッシャーに変にへこんだりして。でもあの頃よりは若返った気がする。そし
て強くなった気がする(←力説(笑))。
   
9. いつかもうすぐ
 この曲の原曲はイアン&シルビアというグループの曲。その曲に彼が詞をつけて
完成させたのだけれども、見事に彼のオリジナルになっている気がする。米軍キャ
ンプ近くの店で働く少年が彼女とともにこの街を出ようとするのだけれども、彼女は
・・・。切ないなあ、そして残酷だなあ、恋って。彼はいつまでもこの街でつぶやいて
いたのだろうか。それとも吹っ切れて他の街へと旅立っていったのだろうか・・・。
   
10.君が人生の時
 人生というのは出逢いと別れをくり返し、喜びと悲しみをくり返し、今日も、そして
明日も生きつづけていく。でもそれはそれぞれの人にとってのたったひとつの「人生
の時間」なのだ。だから目先の苦しみだけを追わずに、もっと視野を広げて物事を
見ていかなければいけないなあ、と思った。このアルバムを締めくくるにふさわしい
壮大な曲。そして彼の、そしてボクの基盤となっているものが、この楽曲にはある。
 
 ・・・とまあこのアルバムを振りかえってみたわけですけど、書いていくうちに「君が人生の時・・・」という曲の世界
をパートごとに歌っていったものが、それまでの9曲であると思えてきた。派手さ、そして有名な曲は含まれてはいな
いかもしれないけど、このアルバムこそボクにとってのベストなアルバムなのである。そして浜田省吾が好きになった
人には、ぜひ聴いてもらいたい個人的にはナンバーワンのアルバムでもあるのです。(2001/4/6)

 

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