ソロ 7thアルバム
「夢の轍」

1982年12月11日発売

1. 微熱   6. 退職の日
2. 極光(オーロラ)   7. まりこさん
3. 虫くだしのララバイ   8. HOME (Now I Know I'm Home)
4. 人買(ひとかい)   9. 償い
5. 前夜(桃花鳥)   10.片おしどり
 
 前作までの作風よりもよりプロらしさというか、どの曲にもさださんの作品の重みを感じるアルバム。個人的に全作品の中でかなり
好きなアルバムです。「1.微熱」は、恋の初期衝動をそのまま歌にしたような、そんな鼓動が聴こえてくる作品。この温かみがそのま
ま彼の魅力に繋がってる気がしますね。「2.極光」はポップな中にあって悲しみを感じる作品。カメラマンを志す男とその男に(強引に
(笑))魅了された女の歴史が刻まれてゆきますが、聴いてる最中と聴いた後でこれほど曲に対する愛おしさが深まる作品も珍しい。
悲劇をも微笑みに変えてしまう歌・・・素晴らしいな。「3.虫くだしのララバイ」は、逝ってしまったおじいちゃんとのエピソードを、悲しい
んだけど微笑ましく歌ってる曲。メロディーの変調を繰り返し、まるでこちらが虫くだしになっちゃうよ(笑)。おじいちゃんと彼ってすごく
いい関係だったんだろうな。子供は大人との約束って忘れないんだよな。大人がすぐに忘れるとしても・・・。「4.人買」は都会という場
所を真摯にとらえたシリアスな楽曲。人は都会にいる「人買(ひとかい)」に幸せになることと引き換えに何かを売り渡すという。富み
や名声を手に入れたところで、楽にはなるにせよ幸せなど手に入れられるのだろうか?「5.前夜」はボクが知る中で彼が”今の日本”
という国を初めて具体的に描写した最初の曲じゃないかと思います。この国では世の中で起きてることはすべて他人事、それより目
の前のことで手一杯なのよ、って風潮が横行してる。ボクだってそんな感じだ。でもそれでいいのか?って尋ねられれば・・・本当はそ
れじゃいけないってわかっているのだけど。「6.退職の日」は父の最後のお勤めの日を描写した作品。自分の年齢が増えるにつれ、
親に対してその見方が変わってくるものなんだよなって思いました。若い頃じゃわからなかったことも今ではわかる・・・そんなことが
山ほどあります(笑)。「7.まりこさん」は女性とは男なんかよりもよっぽど強い、そして哀しい・・・ってことを歌った作品。それは言い換
えれば「男ってのはか弱い」ってことを表してるんだけどね(笑)。う〜む、言い返せないね(笑)。「8.HOME」は全編英詩で綴られた、
自分の心の故郷を探す男を歌った曲。独りぼっちだと思っていた男は、実はそうじゃなかったんだと気づく短篇。そして話題となった
「9.償い」。たとえどんなに平穏に慎ましやかに暮らしていたって、人はいつしか加害者と被害者になりうることがある。どちらも誰から
も後ろ指さされるような暮らしをしていなかったにもかかわらずだ。そんな両者がいつしか憎しみや悲しみを越えて”人として”触れ合
ってゆく姿を描いた大作。「10.片おしどり」は女手ひとつで子供たちを育ててきた老女の、湖のほとりでの想いを綴った楽曲。ただあ
なたにほめられたくてここまで来たのよ・・・そのほめてくれるべき人は、先の戦争で帰らぬ人となっていた・・・。人生って自分の歩い
た後に轍を作っていくことなのかもしれないな・・・そんな思いのしてしまう全10曲。夢は轍を描くことによって現実になるのかもね。

さだまさし TOPページへ