ソロ 4thアルバム
「夢供養」

1979年4月10日発売

1. 唐八景 - 序   5. まほろば   9. 空蝉(うつせみ)
2. 風の篝火(かがりび)   6. 療養所   10.木根川橋
3. 歳時記(ダイアリィ)   7. 春告鳥   11.ひき潮
4. パンプキン・パイとシナモン・ティー   8. 立ち止まった素描画    
 
 ソロデビュー作『帰去来』以来、ジャケットにさださんがお目見えです(笑)。この4作目『夢供養』は、その後のさださんの
音楽の方向性を決めた重要なアルバムだとボクは思います。わらべ歌「1.唐八景」につづいて始まる「2.風の篝火」は1曲
目の効果もあってか、聴く者をその情景に迷い込ませるような力を持っているはかない楽曲。雪のような蛍が一面を包み
込む中、ふたりの関係は終わりを告げる・・・悲しいけど好きですねえ。「3.歳時記」は学生時代に交換日記をしていた彼
女とのやりとりを綴った歌。「花を看病する」っていう表現が美しいな。彼女とは結ばれることはなかったけれど、聴いた後
に残る甘酸っぱさがまたいいんだよなあ。「4.パンプキン・パイと〜」はとにかくコミカル(笑)。行きつけの喫茶店のマスター
を思いやる不良学生(笑)たちの活躍(?(笑))が描かれた楽曲。後にデビューする女性デュオ”あみん”が、この喫茶店
「安眠」の名からとられたのはあまりにも有名。「5.まほろば」は彼の全楽曲中でも代表曲として挙げられるシリアスな楽曲。
人の心の移ろいと、日本の四季の移り変わりを重ねて表現された名曲。この4、5曲目のコントラストがまたいいんですよね
え(笑)。「6.療養所」はひとりも見舞い客のないおばあさんと青年のやりとりを綴った曲。人は誰でも年老いてゆくんだよな
・・・と当たり前のことだけど考えさせられてしまう歌。「7.春告鳥」は古都・京都の古寺で感じたものを”別れ”というテーマで
歌い上げられた曲。この古きよき日本をテーマにした歌がこの後も編み出されてゆきます。「8.立ち止まった素描画」はア
ップテンポな曲調にのせて歌われた、上っ面だけのつきあいですぐ別れてしまう女性を歌った曲。「9.空蝉」は待つ者の悲
しさと、待っても決して帰っては来ない者の残酷さを奏でた楽曲。人は何のために生きているんだろうか?そんなテーマが
この曲からは見えてきます。「10.木根川橋」は、微笑ましい同窓会のワンシーン。時がいくら経ったとしても、人の想い出っ
ていうのは誰にも壊すことのできない大切なものなんだよな、と再確認させられる歌。コミカルなんだけど、どこかホロ苦い
そんな楽曲。「11.ひき潮」は、知らず知らずのうちに都会で変わってゆく自分を片方では嘆いている自分の心情を歌った楽
曲。人が故郷に帰りたいって思うのは決して甘えではなく、そこに原点があるからなんだろうな。ジャケットの駅で向こうを見
据える若き日のさださんの目にはいったいどんな情景が映っているんでしょうねえ。彼の原点といっても過言じゃない名盤。

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