ソロ 3rdアルバム
「私花集」

1978年3月25日発売

1. 最后の頁     6. 天文学者になればよかった
2. SUNDAY PARK     7. 案山子
3. 檸檬     8. 秋桜
4. 魔法使いの弟子     9. 加速度
5. フェリー埠頭     10.主人公
 
 前作『風見鶏』のジャケットだった彼女が、今度は数多くの花に囲まれているイラストが印象的。まさに前作が”暗”なら、今作は
”明”といったところですね。そんな中始まる「1.最后の頁」は恋人との別れの瞬間を描いた一曲。マッチの軸で君がテーブルに落
書きした「サヨナラ」の文字・・・もしこれが鉛筆書きだったらもう一度ぐらい書き直せたかもしれない・・・っていう表現が秀逸です
よね。「2.SUNDAY PARK」は別れた彼女の面影を、日曜日のにぎやかな公園のベンチに座りながら思い起こす男の悲しみを歌
った楽曲。みんな笑顔の中自分だけが哀しみを抱えている・・・そんな哀しみ方もまたいいだろうっていう考え方に斬新さを感じま
す。「3.檸檬」は東京という無機質な場所で繰り広げられる若者たちの憂鬱さや悲しさを淡々と綴る名曲。「まるでこの町は青春
たちの姥捨て山みたいだ」っていう表現がすごいと思います。「4.魔法使いの弟子」はむかしむかしある貧しい若者が金持ちの娘
に恋をして、彼女を振り向かせたいがために魔法使いの弟子になった・・・というおとぎ話。だけど最後まで聴くと思わず微笑まし
くなってしまいますね。「5.フェリー埠頭」は私がここを離れるのに汽車や飛行機じゃなくフェリーに乗ったのは、あなたとの思い出
に流した涙を乾かすのには、フェリーじゃなきゃ短すぎるから・・・そんな女性の悲しみを綴った一曲。「6.天文学者に〜」は幸せを
建設物にたとえ、「こんなに設計のセンスがないんだったらいっそ天文学者になればよかった」というコミカルなんだけど哀しい一
曲。「7.案山子」は遠く離れた息子を想う親心を歌った楽曲。しかし20代前半でこういう曲が描けるっていうところに彼の非凡さを
感じます。それは次の「8.秋桜」にも言えますけど。山口百恵さんへの提供曲として広く知られるこの歌は、嫁ぐ娘との最後の時
を過ごす母親の気持ちが綴られていますが、「案山子」「秋桜」ともに日本人特有の趣があって、もし歌全世界展覧会みたいなも
のがあったら自信を持って日本代表にしたい2曲ですね。「9.加速度」は彼女との電話の最後のやり取りが歌にされています。伸
びやかなサビ部分のボーカルが、逆に悲しみを増蓄してゆきます。「10.主人公」は”人の数だけ物語があり、人の数だけ主人公
はいるんだ”っていうメッセージを感じる楽曲。つまりみんな主人公ってことなんですよね。そういう風に客観的に自分を見つめて
いけば、まだまだ捨てたもんじゃないぞっていう気持ちが伝わってきます。まさに彼の10編の花がこの一枚には咲いていますね。

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