グレープ 2ndアルバム
「せせらぎ」

1975年5月25日発売

1. ほおずき     5. 残像   9. 風邪
2. 殺風景     6. 交響曲(シンフォニー)   10.恋人擬(こいびともどき)
3. ゆだねられた悲しみ     7. ラウドネス   11.掌
4. 女郎花(おみなえし)     8. 絆   12.追伸
 
 2ndシングル「精霊流し」のヒットによって一気にスターダムにのぼりつめた彼らでしたが、その状況は彼らが望んでいた「自由に
音楽を作れる状況」ではなかったようです。その葛藤からかこのアルバムは前作にあったほんわか感はなりをひそめ、シリアスな
曲調と、さらに人の内面を歌う楽曲がそろっています。「1.ほおずき」は今はもう目の前にはいない”君”との夏の回想録。君と行っ
た小さな祭りで君にせがまれて買ったほおずきが、今でも胸に残ってる・・・いつまでも消えずにいてほしい日本人的な悲しみがそ
こに綴られています。「2.殺風景」は、ふたりが別れなければならなくなったのは、僕のせいでも君のせいでもないと歌われていま
す。でもこれ、別に好きな人ができたってことへの開き直りにすぎない。その心こそ殺風景ってことなんだろうな。「3.ゆだねられた
悲しみ」は見る風景すべてが悲しくまぶたの中に映りこんでくる心境を静かに歌った一編。「4.女郎花」は長崎の遊郭にいた女た
ちの心に思いをはせ作られた楽曲。こういう自分の故郷の本来隠したいであろう部分まで歌にした、さださんの故郷への想いが
伝わってくるようです。「5.残像」は君が別れの最後に告げたひとことがいつまでも脳裏に焼きついて離れない・・・そんな男の悲し
みを歌ってる。君はこの恋を「季節はずれの通り雨と言い捨ててしまうのでしょうか」・・・曲調が明るい分つらいな。「6.交響楽」
今もなおさださんの代表曲として歌い継がれる、やはり悲しい別れの曲。なんだかこのアルバム、ホントに悲しい曲ばっかりだな
(笑)。あなたが着飾ることを覚え始めたことが、二人の別れる兆しになった・・・人はいつまでも同じようにはいられない宿命なの
かもしれない。インスト曲である「7.ラウドネス」を経て、「8.絆」はこのタイトルに対して「僕とあなたをつなぎとめるものがそんな小さ
な言葉だけなんて淋し過ぎるよ」と歌ってる。うまいな(笑)。「9.風邪」はこの盤では数少ない幸せな歌(笑)。厳密に言えば風邪が
治らないんだから幸せ100%ではないんだけど(笑)治ったら一番に君に電話するよってウキウキ感があるんですよね。この曲の
イントロ、どっかで聴いたな〜って思ったら、後に発表される「雨やどり」のイントロだった(笑)。「10.恋人擬」もほんわかな楽曲。だ
けどこのふたり友達以上恋人未満みたいですねえ。男の方は恋人以上になりたいみたいですが(笑)。「11.掌」は文字通り自分の
手のひらに刻まれた悲しみを数えてゆく女性の心情を綴ってる。もう少し自分に勇気があれば・・・確かに手のひらっていうのは自
分の心を映す鏡なのかもしれないな。「12.追伸」は今までの楽曲の悲しみを一身に包み込んでくれるかのような女性の愛の歌。
でもやっぱり志半ばで自分の想いをあきらめる曲ではあるのですけど。このタイトル「せせらぎ」の響きが悲しく感じる曲ですねえ。

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