ソロ 1stアルバム
「帰去来」

1976年11月25日発売

1. 多情仏心   7. 童話作家
2. 線香花火   8. 転宅
3. 異邦人   9. 絵はがき坂
4. 冗句   10.指定券
5. 第三病棟   11.胡桃の日
6. 夕凪   12.多情仏心
 
 グレープ解散後から1年のちに発表されたソロ1stアルバム。全体的な印象としてはグレープの時にあった、まるで空を
飛んでしまうんではないか?のような浮遊感はなくなり、一気に地に根ざした重たさみたいなものを感じる一枚。1、12曲
目の「多情仏心」は、終わってしまった彼女との愛を歌う寂しさ120%の短い作品。その2曲にはさまれた10曲について書
いていきます。「2.線香花火」はアコースティックギターを基調とした彼女との線香花火の思い出を綴った曲。きっとこの
花火のように二人の恋は・・・。「3.異邦人」は他国に暮らしていた日本人の死をモチーフに描かれた作品。どこか「精霊
流し」のテーマに通じてる気がするなあ。「4.冗句」は、ホントは彼女が好きなのに何を言っても冗句にとられてしまう男の
悲哀(か?(笑))を歌った軽めの曲調のラブソング。「5.第三病棟」はおそらく彼の入院中のエピソードが下敷きになって
いると思うんだけど、微笑ましい歌が最後には一変してしまう悲しい歌。「6.夕凪」はかつて彼女と来た海にひとりで来た
男の、失くしてしまった愛への回顧録。「7.童話作家」は最愛の人にさよならを言われた日に童話作家を志すことを決め
た女性の心情が綴られています。それを目指すきっかけは彼を忘れるためだった・・・というやはり悲しい曲。「8.転宅」
は頭の先から尻尾の先までシリアスという言葉で固められたかのような印象が強い楽曲。でも人生というのは浮き沈み
があるのだから、沈めば必ず浮き上がれる日が来るんだっていうメッセージにジーンと来ます。「9.絵はがき坂」は思わ
ず和んでしまう曲調に絵はがき通りの坂の風景を綴った楽曲。だれど彼を最後に待っていたのは、予想通りの別れだっ
た・・・。「10.指定券」は駅のホームでの喧騒と恋人たちの別れを対比して描かれた、さよならの瞬間を切り取ったワンシ
ーン。最後に君の後ろ姿を包んでいたのは紙吹雪となった・・・僕のふるさと行きの列車の指定券だった。「11.胡桃の日」
は全曲中最もアップテンポに展開される歌。狭い部屋の中で展開される君と僕の愛憎劇。ふたりの最後の瞬間がそこに
は刻まれています・・・。以上全12曲、中には軽い曲調のものももちろんあるのですけど、でもやはり重たいアルバムだと
思います。ですが、何を隠そうその重たいアルバムの雰囲気がメチャクチャ好きなボクなのでありました(笑)。

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