8thアルバム
「臨月」

1981年3月5日発売

 
 最も暗闇に満ちたアルバム「生きていてもいいですか」から11ヶ月後に発表されたこのアルバムは、その時の彼女
から何かが生まれようとしていたのであろうか。そう考えればこのアルバムタイトルも納得できる。シングル曲が2曲
「1.あした天気になれ」「4.ひとり上手」)収録されているところもこの頃のアルバムとしては珍しい。「1.あした天気に
なれ」は「雨が好きです あした天気になれ〜」という彼女独特の皮肉っぽい歌詞が印象的。「2.あなたが海を見てい
るうちに」は海辺での別れのシーンがまるで映画のように脳裏に浮かんでくる名曲。「3.あわせ鏡」では鏡に問いかけ
る女性を歌っている。場末のバーの二階のアパートに住んでるお姉ちゃんっぽいなあ(←想像し過ぎだ!(笑))。「4.
ひとり上手」はスマッシュヒットを放ったシングル曲でメロディーもどこか歌謡曲っぽい。「雨のように素直にあの人と
私は流れて 雨のように愛して サヨナラの海へ流れついた〜」・・・し、詩人だ!「5.雪」での彼女は本当に泣きなが
ら歌っているんじゃないか、と思うほど感情移入してしまう、今恋人が亡くなった女性の哀しみを描いている、彼女の
バラードの中でも屈指の名曲。明るい曲調の「6.バス通り」では、ある店で昔の彼がなんと自分の後ろに座り、新しい
恋人と自分の噂話をしてるという、なんともやりきれない状況を歌った曲。明るい曲調が逆にとても悲しく聴こえてくる
不思議な歌。「7.友情」は「本当の友情というのはこの世にあるのだろうか」と自問自答を繰り返す、考えさせられる
曲。「8.成人世代」ではゆったりとした曲調の中で、世間ではみな幸せそうなのになぜ自分だけ?という疑問が渦巻
く。そしてこれまでの曲を優しく包み込むように「9.夜曲」は「希望」を感じさせ、世の中の全ての哀しみを洗い流してく
れるような美しい曲。この盤の楽曲たちが前作に比べ軽やかに聴こえるのは、前作があまりにも重すぎたせいかも。

 

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