こう言ってはなんですが初期の頃の作品からは想像しがたい内容が収められた、「おんな」を前面に出した |
傑作アルバム。静寂の中ピアノ一本で始まる短編「1.melting」は数年前に別れた恋人と再会する日の女性の |
心情を描いた楽曲。ふたりの止まっていた時間は、また動き出す。”目を閉じるとあなたがいて 目を開けたら |
ひとりぼっち”という女性のこれ以上ない淋しさを募らせる「2.closed」。彼女が目を開いた時、彼を忘れさせて |
くれる「誰か」は現れるのでしょうか?髪を洗う女性の彼に対する想いが淡々と進行してゆく「3.shampoo」では |
「いつか終わるかもしれない」という不安がポップな曲調に乗せて歌われています。彼女の作品中、僕の中で |
五指に入るバラード曲「5.A piece of love」。真夜中の静けさが深くなってゆくたびに彼女の心も深い場所まで |
落ちてゆく。中盤から後半部へかけての盛り上がりと、その後に挿入されるカットギターに心揺さぶられます。 |
”好きになるほど離れてゆくよな気がする”だから人間って、悲しい。この曲と双璧を成す「6.凍える手」はもう |
会えなくなった愛しい人を遠くから思いやる女性の温かさが伝わってきます。でも裏を返せばこの女性はその |
誰かを思いやることによって、自分の淋しさを紛らわせているようにも思えてしまう。愛すれば愛するほど独り |
になるのが怖くなる女性の心情が綴られた「9.Butterfly」。イントロからすでに異世界へと引き込まれる。いや |
異世界というよりは彼女の心象風景の世界なのだろう。”平和に暮らせればいいのに なぜ神様は傷を与える |
のだろう”と歌われた「10.Lulluby」は「誰もが何かを伝えるために生まれてきた」のだと認識させてくれる子守 |
唄。冒頭でも書いた通り、清涼感あふれる曲は一曲もない。すべての曲が心のどこかをひっかいてゆくような |
痛みを持っています。そしてこれが彼女の”本性”なのでしょう。「歌を作ろうとして作った」という感じがしない。 |
心から出てきた想いをそのまま歌にしたような世界。愛するとはこんなにも切ないことだと思い知らされる一枚。
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