ソロ 22thアルバム

「古くさい恋の唄ばかり」

1996年10月25日発売

1. 絵画館     5. 愛について     9. 金糸雀、それから・・・
2. 月の光     6. オールド・ファッションド・ラブ・ソング     10.帰郷
3. 短篇小説     7. 甘い手紙     11.君を信じて
4. Wonderful Love     8. あの人に似ている      
 
 アルバムタイトルは言い換えると『古きよき恋の唄ばかり』になります。少なくともボクの中ではそうです。たとえ時代がどんなに変わっても、人に
とって大切なものは変わらない。この盤の曲たちを聴いていると自然とそういう気持ちになりますね。「1.絵画館」は彼の若かりし頃の想い出ととも
に綴られた美しい楽曲。たとえ同じ場所にいても子供の頃と今とでは風景の感じ方って不思議と違う。自分の中で何かを失ってしまったような、そ
んな寂しさを感じます。「2.月の光」は”しあわせ”をテーマにした楽曲。しあわせの中には常に不安があり、不安の中には常に希望がある・・・真理
だと思います。ベートーベンの『月光』がさりげなく間奏に入ってるのがまたいいな。「3.短篇小説」は桂木文さんへの提供曲のセルフカバー。あな
たを私の思い出の人にしないでください・・・つまり今もあなたを愛しています、という女性の意思表示なんですよね。短篇小説のように始まった恋
だけど、短篇小説のようにふいに終わりたくない・・・切ないですね。「4.Wonderful Love」はゆるやかに力がみなぎるようなラブソング。愛は人をど
ん底に陥れることもあるけれど、逆に予想以上の力をくれることもある。人間の最も素晴らしい部分ですよね。「5.愛について」は愛とは目的地の
ない旅のようなものだ、と歌われたバラード曲。今は吹きすさぶ冷たい風の中にいたとしても、それでも僕はあたたかいあなたの温もりを求めて旅
を続ける・・・生きる目的ってこういうことなのかもしれない。タイトル曲「5.オールド〜」は、人生はありえもしないことがあるから楽しくもあり哀しくも
あるんだ、と歌われたポップな作品。愛する誰かに逢えた時きちんと笑えるように生きていこうっていう主人公の気持ちが伝わってきます。「7.甘い
手紙」は、恋に破れて誰も知らない町へ旅立とうとする女性の悲しい心情を綴った楽曲。彼のことは忘れよう。でももし今でも私を思う気持ちが少し
でも残っていたら手紙をください・・・彼女の無念さが伝わってきます。「8.あの人に似ている」は中島みゆきさんとの共作。男性の部分をさださんが
女性の部分をみゆきさんがそれぞれ書き下ろしくっつけたという、画期的作品。この盤ではさださんの部分だけをとりあげていますが、みゆきさん
のアルバム『おとぎばなし』ではさだ・みゆき両氏による完成形を聴くことができます。はっきり言って名作です。「9.金糸雀、それから・・・」は由紀さ
おりさんへの提供曲『金糸雀(カナリア)』の一部詞を書き直して歌われた楽曲。これから彼に別れを告げにゆく女性。かつて彼女の部屋で飼って
いたカナリアを見て「自由に飛ばしてやれよ それが幸せだよ」という彼の言葉を彼女は思い出す。「でもきっとあなたは知らないだろうけど カナリ
アはひとりでは生きてゆけないのよ」・・・そのセリフにホロリです。「10.帰郷」はやっぱり”ふるさと”っていいなあと思わずにはいられない一編。どん
なに辛い目に遭っても、ふるさとに帰ればまたやり直せそうな気がする・・・ふるさとって優しく力をくれる気がします。ずっとふるさとで暮らしてるボク
にはそんな想像しかできませんが。「11.君を信じて」はたとえどんなことが君の身に起ころうとも君を信じてる、と歌った優しさあふれる楽曲。最終
的に愛も恋も「信じる」ってことに尽きるのかもしれませんね。そしてその「信じる」ことが、不可能だと思っていたものも可能にしてしまう力をくれる。
生きることっていうのはその繰り返しなのかもしれない。裏切られてもまた信じる・・・それがいつの日にか自分にもはねかえって来る気がします。

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