ソロ 32thアルバム
「美しき日本の面影」

2006年9月13日発売

1. 桜人(さくらびと)〜序章 春の夜の月〜     5. 向日葵の影     9. 大晦日(おおつごもり)
2. 桜桃(さくらんぼ)     6. 鉢植えの子供     10.天然色の化石 2006
3. さよなら橋     7. 悲しい螺旋     11.サクラサク
4. 献灯会     8. 愛の音     12.桜人(さくらびと)〜終章 しづ心なく〜
 
 失われつつあるこの国の美しさに向けて祈りをこめて本盤を作ったということがこのタイトルからもわかります。風景や自然だけでなく、
最も失われつつある”日本人の心”に焦点をあてた珠玉の楽曲たちが、美しい弦の音色と共に唄われています。悲しく切ない音色ととも
に奏でられた「1.桜人」。日本の春を象徴する”桜”はいつまでも咲き誇るわけではなく、数日のうちに散ってしまう。その日本的な儚さが
表現された曲。「2.桜桃」は春の忘れ形見。毎年春になれば口にできる言わば日本の春の風物詩。でも人の心に春は順番どおりに巡り
来ることはない。だから今はたとえ苦しくてもいつかあなの心にも春は巡ってくるよ、というメッセージを感じる曲。アグレッシブなギターが
印象的な「3.さよなら橋」は、さよならを”川”に例えて、その川にかかる”橋”で袂を分かつ男女の別離を歌った楽曲。「4.献灯会」は故人
の御霊を尊ぶ日本の美しき風習の心をそのまま歌にしたような曲。生きている人間にできることは、ただ祈ること、それだけなんだよな。
そんな御霊への祈りの余韻を残したまま「5.向日葵の影」へ。彼曰く「これは大人たちの”精霊流し”だ」と言うように、やはり去り逝く魂に
向かって歌われた曲。「出会ってくれてありがとう」・・・逝く人にとってこの言葉に勝るはなむけの言葉はない気がする。「6.鉢植えの子供」
は、今の子供たちを棘だらけの茨の木に例えて歌った曲。本当の事に目を向けている子供たちに対し、本当の事から目を背ける大人た
ち・・・そんな世の構図を映し出す歌です。子供たちの行く末・・・それはやはり大人たち次第。縛るのは大人。そして縛られた子供たちは
・・・。「7.悲しい螺旋」はお互いに愛しく思いながらも傷つくのに耐えられず離れてゆく恋人たちを綴った壮大な楽曲。お互いのことが解り
過ぎるから、より多くの傷を負う。タイトル通り悲しき螺旋を描く曲です。「8.愛の音」はピアノを主体とした優しいメロディーが印象的な曲。
愛しいあなたと生き別れようと、死に別れようと、あなたの愛の音は僕のそばで寄せては返す波のように聞こえてくるよ・・・そんな心情が
伝わってきます。「9.大晦日」はその年にどんな辛いことがあったとしても次の年には心を入れ替えてがんばっていこうよと歌われた、怠
け者のボクにとっては少々耳が痛い(笑)、でも力みなぎる一曲。”ゆく年に心からありがとう”・・・これって日本人独特の美しい感情です
よね。「10.天然色の化石 2006」はかつて『夢回帰線U』に収録された楽曲のリメイク版。だけど今この曲を歌うことに意味があると思いま
す。もし今の人類が滅びて数万年後に次の人類が僕らの化石を発見した時、僕があなたをどれだけ愛したのかを、人間たちがどのよう
に自分勝手に自分たちを滅ぼしたのかを後世の人間が知ることはないだろう。僕らが恐竜たちがどんな想いで生きたかを知ることがで
きないように・・・。化石の見方が変わってしまった曲でもあります。「11.サクラサク」は”冬は季節の終わりではなくて 冬は春を生み出すち
から”という一節が印象的なアコースティックな暖かい楽曲。そしてアルバムは再び「12.桜人」で春に戻る。渡辺俊幸氏の美しいアレンジ、
そして元相棒・吉田政美氏、石川鷹彦氏を始めとするプロフェッショナルと共に、彼が”美しき日本の面影”を追い求めつづけた一枚。

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