31thアルバム
「恋文」

2003年11月19日発売

1. 銀の龍の背に乗って   5. 寄り添う風   8. 月夜同舟(げつやどうしゅう)
2. 恋とはかぎらない   6. 情婦の証言   9. 恋文
3. 川風   7. ナイトキャップ・スペシャル   10.思い出だけではつらすぎる
4. ミラージュ・ホテル        
 
 彼女は毎年毎年必ず何かの形で新譜をリリースしてくれるからすごくうれしくなってしまいます!そのクオリティもどんどん高ま
ってゆくような気がしています。「1.銀の龍の背に乗って」は吉岡秀隆演ずる医師が離島診療に一身をかけたドラマ『Dr.コトー診
療所』の主題歌。非力な僕でも何かを望みがんばり続けていれば、いつかきっとその何かにたどり着ける!というメッセージを
感じるスケールあふれる一曲。「2.恋とはかぎらない」は恋とも愛とも言えない、相手に求めるこの感情はいったい何なのだろう
?っていう女性の想いを綴った軽快なロックチューン。「3.川風」は自分の想うあの人と一緒にいた頃はいいことばかりあったか
ら、彼と一緒にいられなくなることをこわがっていたけれど、でもそれがあの人を大切にしていることとは違ってた・・・というバラ
ード曲。「4.ミラージュ・ホテル」は思わず拳をにぎりしめてしまうナンバー(笑)。どこかにあるのかもしれないホテル・・・もしかし
てここに歌われているミラージュ・ホテルとは、自分の最も望んでいる居場所のことなのかもしれない。揺れ動く主人公の心がこ
ちらまで響いてきます。「5.寄り添う風」は会いたいという気持ちに理由を探してしまう女性の悲しみを綴ったバラード曲。「人恋し
さは諸刃の剣」ってすごいフレーズだ。想い過ぎてあなたを傷つけるくらいなら私はあなたの袖を揺らす風でいい・・・染みるな。
「6.情婦の証言」も心をわしづかみにされるナンバー(笑)。容疑者になったあの人と私は問題の時間に一緒にいた。でも誰から
も彼との愛を認められないその女性の発言は誰も信用してはくれないだろう・・・というまたも奈落の底に突き落とされそうになる
一曲!「7.ナイトキャップ・スペシャル」はおそらくこの盤の中でもっとも明るい彼女特有の「酒」ナンバー(笑)。だけどその裏には
いずれ訪れる彼との別れが見え隠れしています。「8.月夜同舟」は思わず沖縄の情緒を感じてしまう一曲。これも『Dr.コトー』の
影響なんでしょうか?(笑)深遠なアレンジが印象的。そしてタイトルナンバー「9.恋文」は、とにかく自分の「好き」という感情だけ
を信じて恋をしてきた彼女が、彼から最後にもらった手紙の中の「ありがとう」という言葉に秘められた意味を知る・・・というとて
つもなく悲しい楽曲。だけどこの歌唱は中島みゆきの新境地だと思います。曲中のカットギターの音色がまた泣かせるのです。
「10.思い出だけではつらすぎる」は『Dr.コトー』の挿入歌であり、柴崎コウに提供した楽曲のセルフカバー。大切なものは簡単に
はさがせないのに、寒いニセモノはどこにでもある・・・彼以外にだって男はたくさんいるって思ってたけど、私が温もりを感じられ
たのはあなただけ・・・でもその彼に彼女はもう辿り着くことはできないと知りながらも彼を求める。のびやかなボーカルが逆に悲
しみを増幅させるバラード曲。『恋文』というタイトルにふさわしく、彼女の経験とも創作ともおぼつかないリアリティを感じる一枚。

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