9thアルバム
「寒水魚」

1982年3月21日発売

1. 悪女   6. 家出
2. 傾斜   7. 時刻表
3. 鳥になって   8. 砂の船
4. 捨てるほどの愛でいいから   9. 歌姫
5. B.G.M.    
 
 全体的にスローな曲調の楽曲が多いため、バラードアルバムのように感じるアルバム。しかしその中にでも彼女のオリ
ジナリティーは息づいている。「わかれうた」以来のチャート1位を獲得した「1.悪女」は、あたかも男と遊んでるようにカムフ
ラージュする女の寂しさを歌にしている曲。シングル版では軽快なアレンジだったが、アルバムではロックを感じるスロー
バージョンとなっている。「2.傾斜」は老婆が傾斜のきつい坂道を上り下りする情景を例えに「女の人生」を歌っている。「忘
れっぽくなるのは悲しい記憶を消しされるからステキ」という内容が圧巻(笑)。「3.鳥になって」はなにか「自殺」をほのめか
しているように聴こえるのはボクだけか?「4.捨てるほどの愛でいいから」には横恋慕する女の悲しさが延々と綴られてい
る。「誰にでもやさしくし過ぎるのは あなたの軽い癖でも わたしみたいな者には心にしみる」・・・難しいなあ男と女って(
苦笑)。「5.B.G.M.」はタイトルの割に、ヒジョーに静かなワルツ。しかしそのB.G.Mだけが彼女の唯一の希望だった・・・悲し
い。「6.家出」は駆け落ちの歌だが、そこに愛がある分だけ、このアルバムの曲の中では比較的幸せなのではなかろうか。
しかし「できれば私あなたを産んだ人とケンカしたかった」という一節、嫁をもらった身分としては複雑(笑)。「7.時刻表」
このアルバムの中で一番好きな曲。「狼になりたい」「蕎麦屋」と続いてきた「状況表現」の集大成のように思える。ささやく
ように歌われるこの曲はそのひそやかさとは裏腹にヒジョーに強いメッセージを放っている。「8.砂の船」はとても雰囲気の
ある一曲。アルバム中唯一「僕」を主人公としているが、「忘れな草をもう一度」「空と君のあいだに」ほか、彼女のこのパタ
ーンの作品には名曲が多い。この曲は幻想的だけれど、胸を刺す何かがある。ラストを飾る「9.歌姫」は、前作のラストの
「夜曲」同様、8曲目までの哀しみを洗い流してくれるような、そんな包み込むような優しさあふれるゆったりとしたバラー
ド曲。このアルバムは全体的にヒジョーに静かな曲調たちの中にメッセージを感じる、そんな一枚なのでありました。

 

中島みゆき トップページへ