真心ブラザーズ 「真心」

-このアルバムを聴け!Vol.10-


 真心ブラザーズといえば、「ドカーンと景気よくやってみようよ〜」とか「モルツ・モルツ・モルツ・モルツ」とか、どちらか
というと企画物のイメージが強いんですけど、一方で「サマーヌード」とか「拝啓、ジョンレノン」などロック・ポップスの名曲も
数多く輩出してるスーパーユニットなのです。倉持陽一(現在は「YO-KING」と名乗る)と桜井秀俊によるその歌の世界は
最近では忘れがちな「昭和っぽさ(?)」(つまり懐かしさ)を十二分に醸し出してくれているのです。そして何よりこのYO-
KINGのボーカル。このぶっきらぼうのようでいて優しい声に、ますます魅力を感じてしまうのです。
 
 そんな彼らが心に染みる(特に30代の男には(ボクはまだ28ですが←強調!(笑)))アルバムを作ってくれました。
 
真心ブラザーズ
「真心」(2001年7月4日発売・全7曲)
 
 アルバムジャケットからもわかるように、この男は永瀬正敏である。なぜかっていうと、ここに収録されてるシングル4曲を
ベースに短篇映画が製作されており、その映画がまたいいんだな、これが。その映画の主役が永瀬正敏なんである。
夢と現実のギャップに打ちのめされてしまった30代の男を好演してる。このCDとDVDは生産限定でセット販売されているので
みなさん機会があったらぜひ見てください。こんな映画の雰囲気がすごく好きです。
 
それでは全曲紹介!
(曲目に下線が引いてある曲はアポロライブラリーで紹介しています。)
 
1.流れ星
 「別れの歌シングル3部作」の第1弾!「二人で見た夢は月の先っぽ
にひっかかり〜」なんて冒頭の歌詞から世界に引きこまれる。今この
世界のどこかにいる愛する人よ、僕はこれからも君を引きずって生きて
いくよ・・・という男の想いが胸にしみる。すべてを流れ星が包み込んで
しまうような、そんな感じのする曲。(YO-KING作詞・作曲)
 
2.遠い夏
 タイトル通り、「遠い夏」に愛を失ったひとりの男の悲哀劇。詞だけ見る
と、何とも情けない男のように映ってしまうが、YO-KINGの力強いボーカ
ルにより、何か「ここから強く生きていかなければ!」という誓いの歌の
ように感じるから不思議。まさにロックしてる一曲。(YO-KING作詞・作曲)
 
3.橋の上で
 「橋の上」での別れのシーンを克明に歌った「別れの歌シングル3部作」
第2弾!ここには夢を追いかけてやっとそのチャンスを掴んだ男と、常に
現実を見つめる女の心のすれ違いがものの見事に描かれている。情景
描写も取り入れながら、悲しみはさらに増幅してゆく・・・。すべては橋の
上からはじまり、橋の上で終るのか・・・。(桜井秀俊 作詞・作曲)
 
4.あの夏、ふたりは
 アルバム中、唯一桜井秀俊がボーカルをとった作品。しかも女性との
デュエット作品。YO-KINGとは対照的に透き通ったボーカルはそよ風を
運んでくる(笑)。しかしこの曲も「別れ」をテーマにしている。というより
別れの一歩手前の男女を歌った楽曲。「友達だと思うことさえ、嘘になっ
てゆく」・・・うーんしみじみ・・・。( 岡本おさみ作詞・桜井秀俊作曲)
 
5.この愛は始まってもいない
 「別れの歌シングル3部作」の第3弾!なんだかんだ言っても君がいなき
ゃ生きてる価値なんて感じられないのさ、なんて男の思いを感じる。それは
決して女々しくではなく、とても男くささを感じる。「愛する人に自分の想いを
伝えるために生まれてきたんだ」の一節にとても潔さを感じる。そう、200年
生きても君がいなきゃ意味なんてないのさ。(YO-KING作詞・作曲)
 
6.流星
 なぜかアルバムが全体的に「たくろう」っぽいなと思ってたら、やはり出た
(笑)。この曲は吉田拓郎の名曲のカバーなんだけど、オリジナルよりも力
強く、そしてこの楽曲のよさを再認識させられる。エレキギターの音色に思
わず涙があふれてきそうになった。久々にボクの心に感動の嵐を巻き起こ
してくれた一曲。(吉田拓郎 作詞・作曲)
 
7.明日はどっちだ!
 このアルバムで唯一スピード感を感じるエンディング曲。「君はまだ俺を
好きか 犬は蒸発 愛は暴発 闇に飛び散った」・・・何ともアナーキーであ
る(笑)。でもこの曲には愛があふれてる。この曲にたどりつくまでの6曲は
「どこかにいる君」を思っていたが、この曲でとうとう彼女を探しに行こう!と
重い腰を上げるのだ(笑)。行けえ!(YO-KING作詞・作曲)
 
 そしてこの「別れの歌シングル3部作」をベースとした短篇映画「真心」についてもちょっと一言。
この作品は「流れ星」「橋の上で」「この愛は始まってもいない」「流星」をテーマ曲にした、まさに「情けない男」
を描いた作品。しかしその情けなさは恥ずかしいんだけど、実は誰でも持っているものなんじゃないかな。
 
ファッションへルスに通う男「真心タロウ」(永瀬正敏)はバーテンダーで俳優志望。弟分の「下心ジロー(ネーミング
がグー!(笑)」(木村卓史)とともに「真心組」を結成。ふたりは道ゆく女性をランクづけしたり、花やしきで遊んだり
(しかもいい年した男が二人で(笑))しょーもない日常を送ってる。そんなおりタロウは風俗嬢「コスモス」(秋桜子)
と親しくなるが彼女は仕事をやめて田舎へ帰るという。タロウとコスモスの別れのシーンは絶品。「さよなら東京」と
つぶやくところにジーンと来た。そしてコスモスのふとした一言「今まで死ぬほど好きになった人いる?」の一言に
タロウは思いをはせる。俳優のオーデションに来る日も来る日も落され続け、人恋しくなったタロウはホテトル嬢を
呼ぶが、そこに来た女性はなんとタロウが十数年前愛した女性「さくら」(水島裕子)だった・・・。
 

   とまあこんなストーリーなんですけど、どうです?見たくなったでしょ(笑)?男には少なからず男なりの「真心」が

   あります。それはかなりこっぱずかしいものがあるんですけどね!(01/8/16)

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