ソロ 16thアルバム
「夢回帰線U」

1990年8月25日発売

1. ナイルにて     5. リンドバーグの墓     9. 天然色の化石
2. カリビアン・ブルー     6. ビクトリア・ピーク     10.夜想曲(ノクターン)
3. SNOWMAN     7. Song for a friend      
4. 白鯨     8. 水底の町      
 
 12thアルバム『夢回帰線』の続編・・・と言いながらも、ただの旅行記ではなく、時間とか歴史とかそんな大きな意味での紀行文的な
作品のように感じます。はるか五千数百年前の人々の想いはわかっているのに、たった今のあなたとの距離をどうすることもできな
い、そんな女性の心情を綴った「1.ナイルにて」に始まり、愛してはいけない人を愛してしまった青年の想いをラテン風のメロディーに
のせた「2.カリビアン・ブルー」、今はいなくなってしまった愛する人を、雪の降った次の日に跡形も無くなっている雪だるまに見立て
て歌われた悲しいラブソング「3.SNOWMAN」と続きます。”白い空の子供達がこの町を埋めてゆく”と表現された雪がさらに悲しみを
運んできます。誰もが心の中で求めるものを「4.白鯨」と表現したこの曲は、彼の作品らしからぬ荒々しさと切望感を持っています。
終わり方も唐突過ぎて、それが心の不整脈さを表してる気がしますね。「5.リンドバーグの墓」は冒険家・リンドバーグが大好きだった
今はもうこの世にいない愛する人に想いを馳せる女性の心情を歌ったバラード曲。「6.ビクトリア・ピーク」の舞台となるのは香港。い
つも二人でいたはずなのに、今にして思えばいつも二人は孤独だったね・・・と終わってしまった恋を思い返す女性の想いが悲しい。
「7.Song for a friend」はたとえこの恋が終わっても、あなたとは一番の友達でいたいという男の願いを描いた楽曲。命懸けで愛した
人を憎みたくないっていう感情の裏返しではあるんですけど、残念ながらそういう例は数少ないですよね(苦笑)。アコースティックギ
ターで奏でられた「8.水底の町」は、田舎から都会に出てきた若者が、すでにもうダムの底に沈んでしまった生まれ故郷の町を想い
ながら、これからの人生を強く生きていこうとする様が描かれた名曲。人間がいくらがんばっても自然や故郷が放つメッセージには
敵わないんだなって思い知らされた曲でもあります。そして現代に警鐘を鳴らす「9.天然色の化石」が始まります。人類が生まれる前
に滅びてしまった地球の先住民である恐竜たち。彼らの絶滅は人間にどんなメッセージを発しているのか。そして「あなたが永遠に
幸せでありますように」というささやかな願いは叶えられるのだろうか?・・・何度聴いても心揺さぶられる曲です。ラスト「10.夜想曲」
は大きな愛に包まれた曲。テーマも宇宙。最終的に地球がどんなに広かろうと宇宙のほんのごく一部に過ぎないんですよね。だか
ら愛しいあなたのまわりがいつも幸せでありますように・・・そう願ってやまない彼の限りない優しさが伝わってくる一編でもあります。

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