1 2 3 4 5

演劇の代役専門俳優・七色いんこ。その演技力・変装力は東西随一を誇る名俳優。
ところが七色いんこは出演料の代わりにあるものを要求するという。それは・・・
「劇場招待客の身に着けているものの中で一番高価なものを奪うことに目をつぶれ!」ってこと。
そう、彼はその演技力・変装力を生かして金品・宝石を盗む大泥棒でもあるのです!
 
「週刊少年チャンピオン」の手塚治虫作品3大ヒーロー「ブラックジャック」「ミッドナイト」、そして「七色いんこ」。
彼の快盗に酔いしれながら、演劇の知識も身についちゃうなんて、手塚先生の作品ならではだと思います。
そんな”七色いんこ”の活躍の数々をここで僕なりに書いてみたいと思います。
 
*「これから読む」という方のために、極力ストーリーをぼかしていますが、わかってしまったらごめんなさい。*

 

第31話 ピグマリオン
 今日も千里刑事は男勝りの気性と身体能力で犯人を逮捕した。拳銃を持ち人質をとった男に対し
マカロニウエスタンも顔負けの決闘を持ちかけるという始末。ところがこの男勝り度が功を奏し「現代
のモナリザ」と称されるプリンセス・ララ・マーガレット・フレンドリボン・プチフラワーの護衛を任されるこ
とになった。しかしプリンセスの護衛となれば礼儀作法が第一。上司で父親でもある下駄警部はかつ
て千里刑事がお見合いした青年・男谷マモルに彼女のしつけを一任する。もちろん一筋縄ではいかな
い千里だったが、やがて少しずつ女性らしさを身につけてゆく。そしてプリンセスの来日。護衛につい
ていた千里はプリンセスの観る劇にいんこが出演することを知るが。にしてもプリンセスの名前、少女
雑誌のタイトルつないだだけ(笑)。大パニックの中でもちゃっかり”仕事”を遂行するいんこはさすが。
   
   
第32話 ヴァージニア・ウルフなんかこわくない
 その日アメリカのとある劇場で『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』という劇が上演されていた。
その主演に抜擢されていたいんこだったが、アメリカ演劇界に大きな影響力を持つ演劇評論家・フー
ラーにテレビ番組でその演技をこきおろされてしまった。手塚治虫をコマ上に引っ張り出してズタボロ
になるまでなぐり続けるほどくやしがったいんこは(笑)泊まっていたホテルのボーイにフーラーが行き
つけにしているレストランの場所を聞き出すとさっそく行動を開始。そのレストランでフーラーから財布
をスリとると、そのまま生物学の教授になりすまし「財布を拾った」と彼の自宅へ。さらに連れていた研
究対象のオオカミ男が逃げ出したと嘘をつき、フーラーを怯えさせ一晩じゅう「オオカミなんかこわくな
い♪」と歌わせた。あくまでいんこの復讐劇に終始してるが、あまりにも内容がないような感じ(笑)。
   
   
第33話 12人の怒れる男
 ある国の裁判所にお互い名前も素性も知らない12人がある裁判の陪審員として呼び出された。事
件はある若者が老婆から彼女の全財産の入ったハンドバッグをひったくった上に、若者になぐられた
はずみで老婆の入れ歯が48本折られてしまったという大変凄惨(?(笑))なものだった。しかもその
容疑者というのが町で大きな権力を持つ牧場主・マイウエイ氏の息子だったから話は複雑になる始
末。「そんな大人物の息子がかっぱらいなどするはずがない」誰かがそう言い放つと陪審員たちは次
々と「無罪」を主張し始めた。ところがひとりだけ「有罪」と言い放った人物がいた。いんこだ。彼がマ
イウエイ氏の息子について推理を立てていくうちその場にいたほとんどの陪審員がマイウエイから裏
金をもらっていたことが発覚する。陪審員のひとりに「ウ○コ」がいるし、もう話がメチャクチャ(笑)。
   
   
第34話 ベニスの商人
 腹を空かせていた玉サブローは、ある日犬であるにもかかわらず町のステーキ屋で「三ポンドのス
テーキを完食した方に10万円進呈」のポスターにつられ無謀にも挑戦する。いいところまで食べ終え
たが、悪意を感じるぐらいに付け合せの野菜とサラダがあまりにも多く挑戦は失敗に終わった。三日
間のうちに正規料金の21000円を払えなかった時には、ステーキ屋の主人が経営するサファリパー
クにいるライオンに私のからだを生肉ステーキとして提供します、という証文にサインさせられた玉サ
ブローだったが、いんこに言えば「たまには自分の尻ぐらい自分でふけ!」と怒られるのが目に見え
ていたので、犬のコンテストに出場したり、警備員募集の張り紙に応募したりしてなんとか金を工面
しようと奮闘するが。とにかくあの手この手と動き回る玉サブローがかわいい。あの流し目は魔力。
   
   
第35話 仮名手本忠臣蔵
  山道を走っていたいんこと玉サブローは猫のギャング団に襲われる。彼ら(←注:猫(笑))は3ヶ月
前につぶれた赤穂炭鉱の従業員に飼われていた猫たちだった。炭鉱がつぶれた後、人間たちは自
分たちだけどこかに引っ越してしまい、その場に置き去りにされてしまっていた彼ら(←注:猫(笑))は
血判を押し同志となった。その数四十七匹。とんでもない目に遭わされ金目のものをすべて奪われた
いんこはその場でノタレ死んでしまう。いんこを弔った玉サブローは行きつけの喫茶店で荒れ放題。
酒をかっくらい店員にひんしゅくをかった彼(←注:犬(笑))は店側にいんこへの香典を要求し、もらっ
たその香典を元手にまた酒を飲む始末。その様子を見ていた猫のギャング団は彼(←注:犬(笑))は
気がふれてしまったと油断するが。おもしろい。喫茶店でコミカルに振る舞う玉サブローがかわゆい。
   
   
第36話 幕間
 またもや家族で登場の七色いんこの”ホンネ”たち。朝から家の中をシッチャカメッチャカにされおち
おち寝ていられないぐらいの大騒動。そんな中、いんこは”ホンネ”から中央劇場である客から1億円
の入ったカバンをスリとった記事の載った新聞を見せられる。実はその1億円は大臣・仏田久利(ぶっ
たくり←なんて名前だ(笑))のへそくりだったからさあ大変。スリとられた秘書は責任を感じ失踪。大
臣に責めたてられた気弱な彼が自殺するおそれも出てきた。「そんなの俺の知ったことか」と突っぱ
ねるいんこだったが”ホンネ”は実はいんこがその秘書が気の毒になってきたと思い始めていると見
破る。なにせ彼の”ホンネ”だからね。なんやかやあり山奥でついに秘書を見つけたいんこは彼に1億
円入りのカバンを返すことになるのだが。それにしても手塚治虫はお札を燃やすのが好きだな(笑)。
   
   
第37話 コルネヴィルの鐘
  兜(かぶと)城という城の亡霊になりすまし平日昼1回、日曜祭日は昼夜2回ずつ城内をうろついて
くれという奇妙な依頼がいんこに舞い込んだ。城の中にある甲冑や置物を盗む不届きな輩が後をた
たないからだという。「まっぴらごめんだ」と断りかけたいんこだったが月100万円という破格の条件に
ひかれ請け負うことになる。実はその城の主・鬼面信方は15年前から行方不明で、今はその鬼面家
に代々仕えるじいさんとそのろくでなしの息子が管理していた。さらに城にはじいさんが「ボケ太郎」と
呼ぶ若い下男がいて、じいさんにいいようにこき使われていた。ところがその「ボケ太郎」こそがこの
城の正式な継承者であることがわかる。じいさんは15年前、この城に隠された10万両の金ののべ棒
に目がくらみ、ふたりを事故に見せかけて殺そうとしたのであった。しかしこのオチ。税務署って(笑)。

 

手塚ページへ