第12話 「新しい契約」
マルコによる福音書 14章22節~26節
ナレーション:
さて、今日は2月29日ですね。 今年は2004年、4で割り切れる年ですね。オリンピックの年でもあります。 だから、うるう年で、いつもはない2月の29日があります。 この日に誕生日があると大変ですよ・・ 何しろ4年に一度しか誕生パーティができませんし、プレゼントももらえない・・ でもその代わり年もとらない・・ 80年たっても20歳・・
はは、冗談はさておき、まいどおなじみの動物村のお友達、日曜学校のみんなで大雪山にスキー教室に来ています。
うさこさん:
あ~あ、今日も嵐でスキーできないの? つまんな~い! 退屈した時のために先生方が持って来てくださった、「指輪物語パート1(ワン)」と「パート2(ツー)」、もう三回も見ちゃって、セリフ、全部覚えちゃったわよ~!
ポン吉:
あの~、いくら頭がいいからって登場人物が言う前にセリフを言うの、止めてくんないかな? うざいんだよねぇ~!
うさこさん:
言ってくれるじゃないのよっ! じゃあ、ポン吉こそポテトチップスをバリバリ食べるのはいいとして、ぷーぷーぷーぷーおならばかりしないでよっ! もうっ! さいてー!
ポン吉:
無理! 僕だってしたくてしてるんじゃないよっ! 生理現象なんだから、しょうがないだろっ!
うさこさん:
生理現象なら、トイレでしてっ! っていうか、トイレで一生暮らしてっ!
こぐくん:
まあ、まあ、二人とも・・ 落ち着いて、落ち着いて・・ 嵐がいけないんだよ・・ せっかくのスキー教室がビデオ鑑賞会になっているんだもの・・
うさこさん:
ふん! ・・でも、私エルフのレゴラス、だーい好き! もう、たまんな~い! すっごくイケメンでぇ~・・ 髪の毛も金髪で長くてぇ・・ 弓もすごく上手で・・ ばったばった悪いオルクたちを倒すのよね・・ すてきぃ~ん!
ポン吉:
ちぇっ! ちょっとくらいかっこいいからってなんだ! どうしてこう、女の子は見てくれで判断するのかなぁ? 僕ならだんぜん、魔法使いのガンダルフだなっ!
うさこさん:
ださっ! こう、白いひげがびゅーんって伸びているおじいさんじゃないの!
ポン吉:
だから、見てくれじゃないのっ! かっこいいじゃないか・・ 僕感激しちゃったなぁ・・ 一巻目の最後で、下が目のくらむような奈落。細~い橋の上、仲間たちを渡らせてから、みんなを殺そうと追って来る、全身が溶岩でできているような巨大な悪魔バルログの前に立ちふさがって・・ 「ここは渡らせないぞ!」って言うんだ・・
そして自分を犠牲にして橋をこわしてバルログと底も見えない奈落に落ちて行くんだ・・ 感激して思わず涙が出たよ・・ 仲間のために犠牲になって戦って・・ 助けようとする仲間に・・ 「ばかもの!お前たちはわしにかまわず逃げろっ!」て言うんだよ・・ おいおい・・
こぐくん:
僕も泣いちゃったよ・・ かっこよかったよね。 仲間たちは、落ちて行くガンダルフを見て泣いてたね・・
うさこさん:
ちょっと、ちょっと・・! 感激して泣くのはいいんだけど、やっぱりダサいのよねぇ・・ 犠牲になるとか・・ 涙で顔がぐしょぐしょになるとか・・ せっかくの服が血でべとべとになるとか・・ 体じゅう汚れちゃって・・ もう、あたしそんなの考えられな~い!
ポン吉:
う~ん、汚れたヒーロー、仲間のために犠牲になってボロボロになるヒーロー、うさこさんには男のロマンは分からないだろうなぁ~!
うさこさん:
ふん! そんなの分からなくて結構よっ! ・・あ! ロマンと言えば・・ ねぇ、ねぇ・・ 雪蛍を見つけに行かない?
うさこさん:
まぼろしの花、真冬に、しかも雪の中にしか咲かないし、なんと、蛍みたいに青色にぼーっと光る不思議な花よ! ねぇ、ねぇ、見つけに行こうよっ!
こぐくん:
寒いのはいいけど、危ないよ。 先生方がぜーったい外には出るなとおっしゃっているよ・・
うさこさん:
実はね、この「雪蛍レーダー」で・・ もう、どこにあるか分かっているのよ・・ すぐ近くだから・・ ねぇ、ねぇ、一緒に行ってよ~、うふん、ポン吉、あはん、こぐくん~!
ポン吉:
調子いいなぁ、うさこさんは・・ さっきまでは「一生トイレで暮らしてっ!」とか言っていたのに・・ でも、いいか、ロッジに閉じ込められて退屈してたもん。 いーっぱい着込んで行けば大丈夫じゃない? 行こう、行こう!
こぐくん:
う~ん、でもやっぱり先生に聞いた方が・・
ポン吉:
(ポカッ!)ばかだな、おまえ! 聞いたらダメって言うに決まってるだろっ!
ナレーション:
なんとなんと、三人は魔が指したのでしょうか・・ ひどい嵐の中に出てしまい・・ 雪蛍を探しているうちに遭難してしまったのです・・ なんとか、前にニュースでやっていたように、雪に穴を掘って寒さを防ぎましたが・・
うさこさん:
ごめんね、ごめんね・・ あたしが雪蛍を探そうなんて言わなければよかったのに・・
ポン吉:
もう、怒る気力もないよ・・ もう夜だ・・ ますます冷えるぞ・・ きっと朝までには僕たち、雪のミイラになっているな・・ はは・・
うさこさん:
こぐくん、さっきから黙っていて・・ いいのよ、あたしが悪いのよ、こぐくんのせいじゃないわ・・
こぐくん:
いいや、僕のせいだよ・・ だってあの橋、僕が最後に渡って僕の重さでこわれちゃったんだもの・・
ポン吉:
もう言うなよ・・ 古くてもうこわれるところだったんだからしかたないよ。
うさこさん:
あっ! それ、こぐくんの大好きな・・ 「こぐまのマーチ」じゃないの!
ポン吉:
ありがとう・・ 最後の食事かもね・・ はは。
こぐくん:
いや、そうじゃないよ。 ねぇ、これから「こぐまのマーチ」を食べるとき、僕のこと、きっと思い出してくれる?
ポン吉:
おいおい、変なこと言うなよ。 確かにこれ食べるとこぐくんを食べてる感じがするけど・・ はは
こぐくん:
きっと僕のこと、思い出してね・・ さ、もっとくっついて・・ みんなであったまろう・・
ポン吉:
うん、まるで羽根布団だ・・ このまま眠って朝になったらお家で起きて、ぜ~んぶ夢だったら、いいな・・
ナレーション:
さて、朝になってもいっこうに嵐はおさまりません。 みんなを起こすと、こぐくんはだまってみんなをこわれた橋のところまで連れて行きました。
うさこさん:
なによ、なによ、こんなところに来たって無駄よ。
ポン吉:
嵐がおさまるまでさっきのところにいた方がいいじゃないか?
こぐくん:
いや、寝ないで考えたんだ・・ これしかないんだ・・ もう、決心したんだ・・
ポン吉:
おいおい、決心ってなんだよ・・ あっ! 何をするんだっ!
ナレーション:
なんと! こぐくんは谷底にむかって飛び込んで行きました! ・・と言うよりは、手足をいっぱい伸ばして谷のこっち側とあっち側につっぱり、自分が橋になったのです!
こぐくん:
ぐっ! う~む! は、はやく渡るんだ! 時間がない!
こぐくん:
いいから、ぼ、僕の上を渡るんだ・・ は、はやく!
こぐくん:
僕はいいからっ! 頼む・・ 渡ってくれ・・ 僕のいのち・・ 無駄にしないでくれ!
ポン吉:
ばかっ! こぐくんの気持ち、分からないのか? えいっ!
ナレーション:
ポン吉はうさこさんを強引に抱き上げると大急ぎでこぐくんの上を渡って谷の向こう側に渡りました・・
と、ちょうどその時、こぐくんは力尽きて、谷にまっさかさまに落ちて行きました・・ それは一瞬だったのですけれども、まるで映画のスローモーションのように・・ ゆっくりに見えました・・
ナレーション:
こぐくんは嵐の中、降りしきる雪の中に落ちて消えて行き、ごうごうと鳴る音にかき消されて、下に落ちる音も聞こえませんでした。
ポン吉は泣き崩れるうさこさんをはげまし、はげまし、なんとかロッジまで辿り着きました。 先生方も捜索隊とみんなを探していましたが、二人が自力で帰って来たのでびっくりしました。 そしてこぐくんのことを聞くと牧師先生が祈り、みんなで黙祷をささげました。
嵐はますます激しくなり、二次災害を恐れ捜索隊も出られないほどでしたが、悲しみに沈んでいるみんなのロッジに、次の日、こぐくんが突然現れたのです!
ポン吉:
おーん、おーん! こぐくん! よかった~! おいおい・・
うさこさん:
ゆうれいじゃないわよね? え~ん、え~ん!
こぐくん:
違うよ! ちゃんと生きてるよ! ね、足もあるだろ? はは・・
ポン吉:
でも・・ どうやって? すごい高さから落ちたし・・ それにこの寒さ・・
こぐくん:
あのまま落ちて行ったんだけど、自然に体を丸くしたんだと思う、斜面に落ちて・・ ころがって・・ どんどん雪だるまみたいになって・・ 気を失って気づいたら、谷底に大きな雪だるまになってころがっていたよ・・
うさこさん:
信じられな~い! でも、この吹雪よ・・ この寒さの中で・・ はっ! こぐくんは・・っ!
こぐくん:
そうそう、考えて見たら、僕シロクマだから、寒さ、ぜんぜん平気なんだった・・ はっはっはっは・・
ポン吉:
はっはっはっは・・ って、心配させるなよ、ばーか! でも、お腹空いたんじゃない? こぐくん、お腹空いているとパワーが出ないんじゃないの?
こぐくん:
それが不思議なんだけどね・・ ようやく雪だるまから出て、もうだめだ・・ お腹が空いて動けない、死んでしまう・・ 神様、何か食べ物を下さいと真剣に祈ったら、なんと! お空から「こぐまのマーチ」が山のように降って来たんだよ! ほんと、不思議・・ 神様っているんだねっ! もりもり食べて、もりもり元気になって、もりもり上って来て元気に帰って来たよ! はっはっは~!
ポン吉:
あ、それね! せめて天国にいるこぐくんがおいしく食べられるようにって、僕とうさこさんで考えてこぐくんが落ちた谷の上から僕たちが投げ込んだものだよ!
こぐくん:
な~んだ、そうだったんだ! はは・・ なんかおかしいね!
うさこさん:
もう~、心配して損しちゃったわ! お肌だって荒れちゃって・・ 目だって泣きすぎて赤くなっちゃったわよ! ほらっ!
ポン吉:
おっと、うさこさんはうさぎなんだから、最初からまっかっかなんじゃないの? はっはっは!
こぐくん:
そうだ、そうだ、おかしいね! はっはっは!
ナレーション:
な~んか、できすぎた話でしたが、どんな時も助け合う仲間たちは、宝物ですね。 そして何かとんでもないことが起きたら、自分を友達のために犠牲にして助けること・・ あなたなら、その時、そんなことができると思いますか?
(おしまい)
第13話 「私はすでに世に勝っている」
ヨハネによる福音書 16章31節~33節
ナレーション:
ここ動物村も、世紀の一大イベントで持ちきりです! 世界各国の動物達が集まり、あの金色のメダルを目指して全力を尽くすあのイベント・・ そうです、アニマル・オリンピック2004年がここ、動物村で開催されているのです!
何千人も入るスタジアムが建設され、大きな道路も作られました。 選手村の大きなビルも建てられ、テレビ局もいくつもの取材のため、カメラマンやら記者をアニマルホテルに泊まらせています。
そして、とうとうアニマル・オリンピックの最後のイベント100キロマラソンがスタートする時が来ました!
みんなの知っている、あの三人組も参加しますよ。 おや、何か話してますね・・
ポン吉:
さあ、一位になるぞ! 体の調子は最高さ~っ! 金メダルも魅力だけど、賞金の100万ワオーが欲しいんだ。それで、欲しかったビデオゲームを買いまくりさ~っ!
うさこさん:
あらあら、相変わらずがめついのね! 私はお金なんか目じゃないわよ。なんと言っても、名誉! ぜーったい、1位になって、こうテレビインタビューの時、言うの。 「自分をほめてあげたいわ」って。 それで、TVのCMとか出て、歌でCDとか出して、一躍アイドルよ。 もちろん、TVドラマ、映画女優にもなって・・
夢は、もうすぐ独身になるベッカムさまとのけ~っこん~! ああ、ベッカムさま~っ! たんたんかた~ん、たんたんかた~ん♪~
ポン吉:
おいおい、妄想もいい加減にしてくれよ! お前はうさぎだろってーの!
こぐくん:
いいじゃないか、ポン吉。 人それぞれ夢があるんだから・・ 大事なのは、一生懸命走ることじゃない?
ポン吉:
まったく、まじめなんだから・・ で、こぐくんの夢はなんなんだよ。
うさ子さん:
私たちは言ったんだから、こぐくんのも言ってよ、けち!
こぐくん:
う~ん、どうしようかな? 話そうかな?
こぐくん:
えへへ・・ 僕は・・ 副賞のアニマルまんじゅう4年分が欲しいんだ・・!
ポン吉:
まあ、いいさ、それぞれの夢を追ってひたすら走る・・ それで、いいんじゃない?
ナレーション:
それでは、ヨーイ・ドン! レースが始まりました。 アニマル・オリンピック、略して「アニオリ」の100キロマラソンのルールは少し変わっています。
毎日、野を越え、山を登り、谷を下り、川を横切って20キロを走り、チェックポイントに着く順序をあらそい、順位によって点数が与えられます。
1位10点、2位8点、3位6点、4位4点、5位3点、以下1点と言う風に・・ 5日後の100キロをゴールした所で総合得点の高いものが優勝です。 しかし・・ 走りの内容によって、特別点50点が与えられることがあるのが、100キロマラソンの不思議なところです・・
うさこさん:
はい、ナイスファイト! お疲れ~っ!
ポン吉:
うん、よくその100キロの体で走ったよ・・ 距離の100キロじゃなくて、体重の100キロだもんな、こぐくんの場合・・
ポン吉:
もち、ぼくが一番さ! これで、4日間連続1位だからね、40点・・ 優勝は間違いないね! まあ、一応コイデ監督の特訓でエベレストの高地トレーニングをしたからね。
うさこさん:
うそ言わないの! たんに身が軽いだけでしょ! とくにおつむが・・っ!
ポン吉:
うるさいなぁ! うさこさんは確かに速いけど、「あんまり日に当たるとメラニンで色黒になるから・・」とか言って日陰でサンブロック塗ってたり・・ 3キロ走ってはお化粧直ししたりするから2位になったんだろ?
うさこさん:
余裕なのよ・・ あたしが本気を出したら、負けないわよ!
こぐくん:
みんな、すごいなーっ! 僕なんか一生懸命走っても今だもの・・
ポン吉:
でも、こぐくんより、遅いのがいるよ・・ ほら、あそこ・・
うさこさん:
ナイスファイト! お疲れさん・・!
(握手しようとするが、亀吉、無視する。)
あれ? 感じ悪いのーっ! こんな美人うさぎを無視するなんて~っ! 最低!
ポン吉:
ああ、しょうがないよ・・ 実はね、亀吉には秘密があるんだ。
ナレーション:
そうなんです、亀吉くんは大変な目にあっていたのです。
前のお話では亀吉くんががめつい子で、みんなから給食費を集める係りなのを利用して、みんなをだましてたくさんお金を取ったり、そのお金で株を買って大もうけをしたことを覚えていますか?
あの時、心を入れ替えてまじめになって、教会学校へも行くようになったのですが、前のことを根に持ったものたちがいじわるをして、走っている亀吉をいじめていたのです。
石を投げたり、亀吉くんが飲む水にからしを入れたり・・ 落とし穴を作って亀吉くんを落としたり・・ かわいそうに、亀吉くんはあざやすり傷だらけになりました。
でも、亀吉はもくもくと走ります・・ そんなに苦労をしてまでなぜ走り続けるのかが、秘密なのでした・・
ポン吉:
ふぅふぅ・・ もうすぐゴールだ・・ がんばるぞーっ! 絶対1位になって賞金を手にするんだ・・
(うさこさん、ものすごい勢いでポン吉を追い抜く。)
ポン吉:
ぴゅーっ! 目が・・目が回る・・!
あれ?うさこさん? そんなに速いの、どうして隠していたんだい?
うさこさん:
隠していたわけじゃないのよ! それより、大変なのよ!
ポン吉:
大変って? なんだい? おしゃれにうるさいうさこさんがそんなに汗をかいて・・ そんなに目を赤くして・・
うさこさん:
目が赤いのは生まれつきよ! それより、こぐくんと亀吉が大変なのよ!
うさこさん:
亀吉へのいじめがものすごくなって、こぐくんが守っているのよ。 でも、二人とも落とし穴に落ちてしまって・・
ポン吉:
う~ん、それは困った・・ ゴール、近いんだよね・・ う~ん、いったんゴールしてからじゃ、だめかい?
うさこさん:
ばかっ! (と、ポン吉に思い切り平手が・・)
うさこさん:
じゃあ、急いで行きましょう! こっちよ!
ナレーション:
二人は、それこそロケットのようなスピードで引き返し、苦労して落とし穴からこぐくんと亀吉を引き上げました。 そして・・ ゆっくり走る亀吉を囲むようにして走り始めました。 それは、周りから飛んでくる石から亀吉を守るためでした・・
ポン吉:
いてっ! だから、亀吉はもうまじめになったって言ってるだろう?
うさこさん:
そうよ! いたい! こんなことをして、なんの意味があるの?
こぐくん:
確かに前は金の亡者だったけど、今では教会学校にも行っているし、金様じゃなくて、神様を信じているんだ。 あいたた・・
亀吉:
ありがとう・・ 僕のために・・ もう、他の選手はとっくにゴールをしたと言うのに・・
ポン吉:
うさこさんなんて、おしゃれなレディーなのに、どろどろ・・ はは!
うさこさん:
いいの。 これは将来女優になった時の練習よ・・
ポン吉:
もともと、頭からっぽだから、大丈夫・・!
ナレーション:
さて、そんな風にして、3人はゆっくり、ゆっくり、亀吉の走り・・ と言うより歩みと同じ速度で、亀吉を囲むようにして進みました。 3人に投げつけられる石はだんだん少なくなり、しまいにはなくなりました。
石が当たっても、怒りもせず、にこにこしてお互いに冗談を言っている姿に、とても石を投げることができなくなったのでしょう・・ そして・・
ポン吉:
おっ! ゴールだ! 日が暮れる前に着けるぞ!
うさこさん:
やったわね! こんなに待ち遠しいゴール、なかったわよ!
こぐくん:
だって、だって、みんなでゆっくり楽しく励まし合いながら進むのが惜しいんだ・・
うさこさん:
そうよね。 早く速く、なんて考えないで、今こうしているのが楽しい、笑っていられるものね。
亀吉:
ごめんね、僕のために優勝を逃しちゃったんじゃない?
ポン吉:
これは・・ 鼻水だい・・ 目からちょっともれたんだい・・
うさこさん:
私も汗だらけ・・ 早くシャワーあびたーい!
こぐくん:
おや? なんだ? あれは・・? ゆ・ゆうしょう?
ポン吉:
あ、本当だ! ゴールまだ片付けられてないよ・・ しかも・・ああ!
うさこさん:
「仲良し4人ぐみ、優勝おめでとう!」って書いてある!
こぐくん:
・・しかも、 「亀吉、こぐくん、うさこさん、ポン吉」って書いてある!
ナレーション:
確かに4人はびりっけつでした。 優勝はもう他のものたちに授与されていました。 しかし、これがアニマル・オリンピックのマジックなのです。
「特別優勝」と言うのがあるのです。 不思議がる3人に、オリンピック会長の教会学校校長の民宣先生からお話がありました。
民宣先生:
亀吉くん、こぐくん、うさこさん、ポン吉くん、特別優勝おめでとう! みなさんは、どうして優勝したのか、さぞ、不思議でしょうね。
でも、ちゃんとした秘密の理由があります。 それは・・ 亀吉くんの甲羅の中に隠されています。 そうですね? 亀吉くん。
民宣先生:
私は教会学校のみんなのことは、何でも知っています。 まあ、お父様にお聞きしたのですが・・ その甲羅に入っているのはお母様のお写真ですね?
民宣先生:
みんなは、どうして亀吉くんが、優勝するあてもなく、また、いじわるをされて、石を投げられたり、落とし穴に落とされたりしてもこのレースに出たか、分かりますか?
それは、クリスチャンだった亀吉くんのお母さんに恥ずかしくないように、前のことでどんなにいじめられても、どうどうと黙ってまじめに生きていくことを誓うためですね? そうでしょう?
ポン吉:
水臭いなぁ・・そうなら、言ってくれよ! もうーっ!
うさこさん:
そうよ、そうよ。 そしたら、5日間、みんなで楽しくレースができたわよ?
こぐくん:
でも、分かるなぁ、ぼく。 黙って、信じてがんばるの・・
亀吉:
ぼく、みんなに迷惑かけたくなかったから・・
ポン吉:
おいおい、それは迷惑じゃないよ、仲間なんだから!
こぐくん:
・・僕も、妹の写真持っていたんだ、ずっと・・!
うさこさん:
そう言うポン吉だって・・ 泣いてるじゃない。
うさこさん:
はい、はい、目から漏れちゃうはなみずね・・
民宣先生:
うぅ・・ せ、先生も感動しました! きっと、6時間以上も待っている観衆のみんなも感動していますよ・・ きっと、こんなことを知らずに亀吉くんをいじめていた人も心を入れ替えているでしょう・・
とにかく、素晴らしい仲間達4人に特別優勝、おめでとう!
ポン吉:
ありがとー、ありがとー! はっ! 優勝・・だよね? 賞金は? 先生?
民宣先生:
あ、言い忘れましたが、これは特別優勝なので賞金はありません。 あるのは、この表彰状だけです・・
こぐくん:
残念だね、ポン吉! 今度は泣いていいよ!
(おしまい)
第14話 「まことの人間 (1)」
ヨハネによる福音書 11章35節~44節
ナレーション:
動物村のはずれの方には、ある秘密の建物がありました。 そのコンクリートむき出しの窓もない大きなビルは、四方をバラ線で囲まれ厳重に守られていました。
そしてそこに入る門には銃を持った門番が守っていて、出入りする車を厳しくチェックしていました。 そこ動物村生命科学研究所では、世にも恐ろしい実験が行われていたのです・・
その実験とは・・秘密なので、分かりません・・でも、それは動物村、いや全世界を危機に追い込むほどの事件に発展して行くことになるのです。
ところで、動物村でも動物村総合オリンピックが開催されています。 今アテネで行われているオリンピックとは違い、スポーツだけではなく、頭の良さや芸術の才能なども競われる、究極の動物を決定する大会なのです。
ところが、今年のオリンピックはいつもとは様子が違うのでした・・
ポン吉:
なんか、今年のオリンピックは頭に来るぞ! なんだってあいつばかり一番なんだよ! なって言ったっけ? X-エックス? 名前も生意気だよな!
うさこさん:
すなおじゃないわね! 負けは負けでしょう?
ポン吉:
そりゃあ、そうだけど・・ぶつぶつ。 ぼくが毎回一等賞のターザンあ~ああ~木登りレースでも一位、
こぐくん:
僕が連続40回負けなしの競技、岩石素手でこなごな砕きでも一位、
ポン吉:
それに、うさこさんの得意な外国語でも一位、
うさこさん:
そうよ。わたし、英語はもちろん、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、ハングルも得意なのに、99カ国語話せるなんて、ありえない!
きっといんちきよ、みんなで化けの皮をはがしてあげましょう!
ポン吉:
そうだよ! 第一、あいつ、恐ろしくみにくいだろ? 最初見た時は泡吹いて倒れそうになったくらいだ。
うさこさん:
確かに。 体はこぐくんの2倍くらいあって、顔中手術の後みたいに縫い後があるし。
こぐくん:
左右の手の長さとか、足の長さも違うよね?
ポン吉:
言いたかないけど・・「ばけもの」だよね?
博士:
おほん! その「ばけもの」について説明しましょう。
うさこさん:
急に現れないでください。 あなたは誰ですか?
博士:
わしは、動物村一の天才科学者、エジソンシュタイン博士じゃ。
こぐくん:
わーすごい! 世界的に有名な、あの動物村研究所の所長さんだ!
博士:
さよう。 X-エックスは、わが研究所の素晴らしい研究成果なのじゃ。 わしはついに究極の動物を作り上げたのじゃ。
ポン吉:
「究極の動物」? それを、博士が作ったのですか?
博士:
はは・・そうじゃ。 実を言うと君たち3人に関係があるのじゃ・・
わしは、色んな動物のいい点を取り出して集めれば完璧な動物が出来ると考え、
ポン吉の木登りなどの機敏さ、こぐくんの圧倒的なパワー、そしてうさこさんの頭の良さをそれぞれのDNAから取り出して、
こう、むにゅむにゅっと混ぜ合わせてX-エックスを作り上げたのじゃ。
ポン吉:
えーっ! 気持ち悪いなぁ。 どうやって僕たちのDNAを取ったの?
博士:
それは国家機密なので言えんが、そんなわけで君たちはX-エックスの親見たいなもんだから、お願いがあるんじゃ。
ポン吉:
僕たちが親だって? なんか気持ち悪いなぁ・・
うさこさん:
だってあたし、まだ結婚もしていていないのよ!
ポン吉:
そうそう、まだうさこさんと式も挙げていないのに・・夫婦だなんて・・
うさこさん:
なに、早とちりしているの! 誰がポン吉と結婚するもんですか! ヨンさまなら考えてもいいけど・・うふん。
こぐくん:
でも、僕たちの、その・・なんだ・・DBSをとって混ぜたんだったら、僕たちから生まれたんだから、子供みたいなもんじゃないかな?
ポン吉:
DNAだよ! DNA・・でも、親たってなぁ・・どうしたもんか・・「パパ」なんて呼ばれてもきもいし・・おこづかいもあげられないし・・
博士:
いやいや、ただX-エックスの友達になって欲しいんじゃよ。
博士:
あの子は・・まだ赤ちゃんなんじゃ。 体も大きいし、頭も良くて知識もある。だが、まだ生まれて3ヶ月で心は未熟なんじゃ。
今、一番必要なのはともだち・・ぜひ、ともだちになっておくれ。
こぐくん:
なんだか、むずかしいけど、誰でもおともだちが欲しいからね。いいよ!
ポン吉:
でも、あいつ、顔中つぎはぎだらけで、ぞっとするけどな・・
うさこさん:
あら、人をみかけで判断しちゃ、だめよ! そうか・・あかちゃんなんだ・・分かったわ、ともだちになりましょうよ!
ナレーション:
と言うわけで、3人は協力してX-エックスのともだちになり、一緒に山にハイキングに言ったり、川で遊んだり、ゲームをしたりカラオケをしたりして楽しみました。
ポン吉:
うーん、X-エックスじゃあ呼びにくいから、名前を考えようよ!
うさこさん:
そうね・・確かに・・タッキーは? ・・ちょっと、イメージが違うかもね・・
ポン吉:
みんなのDNAを持っているんだから、ポン吉の「ぽ」、うさこさんの「う」、そしてこぐくんの「こ」をくつけて、「ぽうこ」はどうかな?
こぐくん:
それじゃあ、女の子みたいだよ。 好きな食べ物なあに?
X-エックス:
う~ん、フランクフルトかなあ、いくらでも食べられるもん!
ポン吉:
じゃあ、フランケン! これで決まりだぁ! ね、いい名前だよね?
うさこさん:
いいわね!呼びやすいし、ね、フランケン!
こぐくん:
「ぽうこ」よりずっといいね。 どう、フランケン?
フランケン:
うん、とってもいい名前だよ、ありがとう!
ポン吉:
ところで、フランケン、聞きたいことがあるんだけど。
ポン吉:
いやね、オリンピックでは30メートル猛烈ダッシュでは僕よりずっと早くて一位だったけど、さっきみんなでリンゴの木まで競争したら、すっごいゆっくりで、びりだったじゃない? あれは、どうしてなの?
うさこさん:
そうよ、それそれ、なんで~? って感じだったわ。
こぐくん:
そうだよ、何か探し物をするようにきょろきょろしてたけど・・
フランケン:
ああ、あれね。 実は、ありさんとか芋虫さんを踏まないように気をつけて走ってたんだ。 競技場はアスファルトだから思い切り走れたけど、山道は虫さんがいっぱいだからね。
ポン吉:
なんか、こぐくんの優しさのDNAがフランケンにあるって感じだね!
うさこさん:
そう言えば、フランケンのおなら、ポン吉と同じにおいよ!
こぐくん:
ははは! それ、ホントだよ! ポン吉のBSAだね・・
フランケン:
それを言うなら、DNAです。 それはエジソンシュタイン博士の大失敗ですね! あははは・・
ポン吉:
うおーっ! すごい笑い声、声の大きさもこぐくん級だ!
うさこさん:
フランケンって、この仲良し3人組を一つにした見たいね!
フランケン:
だって、みんなの子供だって、博士が言ってました。
ポン吉:
子供なんてよせやい、友達で行こうよ! と・も・だ・ち!
ナレーション:
そんな感じで見た目は恐ろしいこの心優しきモンスターは名前も与えられ、3人と楽しく暮らしていたのです。
しかし、まもなく動物村、いや、全世界をも滅ぼしかねない恐ろしい事件が起こったのです。
博士:
はぁ、はぁ、大変じゃ! 恐ろしいことになった!
ポン吉:
どうしたんですか? エジソンシュタイン博士? そんなにパニックして?
博士:
どうしたも、こうしたも・・Z-ゼットが制御不能になってあばれているのじゃ!
博士:
この手で・・作った・・怪物じゃ! 恐ろしい・・さらに究極の生物を目指して・・色んな生物のDNAを集めて・・作ったのじゃ。
・・蛇の毒、ふぐの針、像の鼻、ライオンの強さ、たこの吸盤・・それが、研究所の檻をやぶって・・逃げ出したのじゃ・・
博士:
どんな生物もかなわない究極の生物じゃ。 しかも、わしを恨んで、追いかけて来ている。
一番怖いのは、鼠の繁殖力と一匹でも子供が産めるゾウリムシの能力があるから、あれがどんどん増えて行くのじゃ・・。
博士:
世界はあれでいっぱいになって、他の生物は全滅じゃ。
博士:
ムリじゃ・・これが、あんな恐ろしいものを作った報いなんだ・・
ポン吉:
一人じゃムリだけど、みんなで力を合わせればなんとかなるさ! なあ、フランケン?
ナレーション:
と言うわけで、みんなは研究所を火の海にして、あばれ続けるZ-ゼットを倒しに行きました。
しかし、究極の生物Z-ゼットは彼らの予想を遥かに超えていました。 研究所にあった食料を食いつくし、どんどん周りの草や虫、鳥、木など、全てをむさぼって信じられないほどの大きさに育っていました。
しかも、恐ろしいことはそれだけではありませんでした。 油断して近づいた、4人は、なんとタコの吸盤のような長い手に捕まってしまったのです!
うさこさん:
ああ、博士の言った通りだわ・・もうおしまいよ・・
フランケン:
あ、あれは、卵です。 何千と言う卵を生んで、背中にしょっているのです。 一匹でこんな恐ろしいものが、どんどん増えたら、世界の破滅でしょう。
ポン吉:
じゃあ、もうやることはなにもないな・・なるべく長く生きれるように、逃げたいけど、それも、もうできないな、はは・・
こぐくん:
ポン吉!最後まで望みを捨てないで!なんとかしようよ・・
うさこさん:
ポン吉らしくないわね! いつから負け犬になったのよ!
ポン吉:
んなこと言ったって、像とライオンとさそりとその他エトセトラが束になっているあの化け物をどうやって倒すんだよ! 第一、みんなこのタコの手にぐるぐる巻だぜ・・
運良く逃げられても、どうやってこいつを殺すんだ? 爆弾でも落とすか?
フランケン:
実は、僕の体には爆弾が入っています。
フランケン:
僕がこんな風にコントロール不能になった時に爆破するためです。
ポン吉:
なるほど・・でも、どうやってそれを出して使うんだい?
フランケン:
いえ、爆弾は出せません。 僕が爆発してやっつけます。
フランケン:
僕は・・もともと生きてはいけないものだったのです。 この怪物を見てそう思いました。
こぐくん:
そんなことはないよ! フランケンはこいつとは違う! 優しい心を持っている、僕たちのともだち、仲間さ!
フランケン:
ありがとう! なら、立派に死ぬ理由があります・・それは友達のために命を使うことです・・さようなら!
ナレーション:
さようなら、と言うが早いか、フランケンは持っている力を使い尽くしてみんなを助けました。 フランケンの意志の前には、くねくねとからみ付くタコの足もかないません。 手刀ですぱっすぱっとポン吉たちを捕まえている足を切り裂き、自由にすると、怪物に向かってすごいスピードで走って行きました。
そして、ちらっとみんなの方を向いて、何かを叫んだあと、自ら怪物の口の中に突入しました。
次の瞬間、中で大きな爆発があり、怪物の頭はこなごなに吹き飛びました。 そしてさらに大きな爆発・・怪物は卵もふくめ、完全にばらばらになり、死にました。
かけつけた博士も呆然と立ち尽くしていましたが・・
ポン吉:
おい、こら、博士! よーく、見ろよ! これが博士の「究極の生物」のなれの果てなんだぞ! これが、科学の勝利だよ!
博士:
すまなかった・・フランケン・・わしが間違っていた。
うさこさん:
フランケンは、私たちを守って自分の命を捨てたのよ。 フランケンは、優しい子だった。
ポン吉:
フランケンは生まれるべきではなかったんだ。 生まれることが不幸だったんだ。
こぐくん:
でも、フランケンは生きたんだよ。 僕たちと一緒に笑ったんだよ。
うさこさん:
神様に自分の命を返して、私たちに自分の命をくれたんだわ。
ポン吉:
そうだね、フランケンは、いつまでも僕たちの仲間として僕たちの中できっと生きていくよ。 僕はそう信じている。
(おしまい)
第15話 「主と共に生きる」
ヘブル人への手紙 2章14節~15節
ナレーション:
秋と言えば、芸術の秋、読書の秋、ロマンスの秋、スポーツの秋・・他になんでしたっけ?・・そうそう、食欲の秋。
動物村のお友達たちも育ち盛りなので食べることが大好き、みなさんと同じですね。
でも、みなさんと一つだけ違っているのは、歯磨きをぜんぜんしなかったということです・・さてさて・・
先生:
みなさん、それではこの間の身体検査の結果をお知らせします。
今回は、特に虫歯が多かったようですね。
その紙に「早めに歯医者さんに行って治療を受けて下さい。」と書いてある人は特に注意して下さい。
歯は、すり傷とかと違って決して自分では治らないものです。
歯医者さんに行かないと、とんでもないことになりますよ・・!
ポン吉:
おーっ!どれどれ・・「健康優良児です。」か・・当たり前だい!
毎日、外で元気に遊んで体を鍛えているからね!
こぐくん:
僕も「筋肉の強さはプロレスラー級です。」って書いてあるよ。
うさこさん:
あたしもすごいわよ!「バスト82、ウェスト50、ヒップ84・・」ね!ダイナマイトバディでしょう・・!?
実は、あたし時々「アンアン」とかの水着のモデルやってるのよ~っ!
ところで・・ポン吉、まさか、虫歯なんてないわよね?
ポン吉:
ドキッ!・・ん?まあ、ないよ。
ない、ない!あるもんか・・!・・はは。
うさこさん:
じゃあ、どうして隠すのよ!見せなさいよ!お見せなさい!こぐくんも手伝って・・!
こぐくん:
うん。それ、がっちりんこ・・こぐくんハーッグ!
うさこさん:
こぐくん、ありがとう・・あ!やっぱりね・・「あなたは重症の虫歯です。はっきり言って虫歯だらけです。すぐに歯医者さんに行って下さい。」
どうも、怪しいと思ったのよ、もろ虫歯じゃないの!いつもあま~いキャンディとかアイスクリームや駄菓子ばかり食べてるからよ!
ポン吉:
そう言ううさこさんは、どうなの?見せてよ、診断書!
うさこさん:
あら、あたしはいいの!健康そのものよ、ヘルシー100%よ・・
うさこさん:
きゃーっ!いた~い!何すんのよ、いきなり!レディに失礼でしょう!
ポン吉:
へー、虫歯じゃないわりに痛いんだ・・それ、こぐくん、手伝って!
こぐくん:
あい、こぐくんのスーパーベアーハーッグ!
うさこさん:
キャーっ!えっちぃ!この痴漢、変態熊!
ポン吉:
え、なになに?「あなたは、超重症の虫歯です。やばいです、すぐ歯を全部取って下さい。命が死にます。」
なんじゃ、こりゃ?
うさこさん:
え~ん、え~ん。しょうがないでしょう?
あたしんちは超リッチで、フランスのトリュフやイタリアのティラミスとか、最高においしくて高級なお菓子が山のようにあるから、ついつい食べてしまうのよ!
ポン吉:
ふ~ん、えらそうなこと言って・・おんなじじゃんか!
あれ?これは・・
ポン吉:
なになに?「あなたは、虫歯を通り越して、すでに歯が全滅状態です。無いです、無し歯です。お医者さんに行って、治療してもらって永久歯がちゃんと生えるようにしないと~知りません!」
・・一番ひどいじゃないか!
こぐくん:
うん・・はは。実は森の中ですっごく大きな蜂の巣を見つけてね・・
ポン吉:
あ~っ!ずるいぞ、そんなこと、一言も言わないで独り占めしてたな・・!
ポン吉:
それ~っ!ポン吉パ~ンチ!ど・ど・ど・ど・ど!あれ?
ポン吉:
くそ~っ!それじゃあ、スペシャルポン吉キーック!それっ!
ポン吉:
はーっ!はーっ!じゃあ、今度はこぐくん、やって見て。
こぐくん:
そう・・じゃあ、本気で行くよ・・エネルギーチャージ、10%・・30%・・50%・・100%・・!
それっ!こぐくんのメガトンパーンチっ!
ポン吉:
ひぇ~っ!うおっ!体中痛い~っ!まるで体中の骨が折れたみたいだ・・
こぐくん:
そんなおおげさな・・実は2%しか力使ってないよ!
うさこさん:
そうよ、弱虫ね!それっ!うさこのラビット神拳!あたたたた・・「お前はすでに死んでいる!」
ポン吉:
うおっ!う、ぎゃーっ!いたたたた!もろ虫歯直撃だ!・・ひどいよ、ひどいよ・・え~ん、え~ん!
うさこさん:
ご、ごめんなさい、ポン吉~。でも、軽くやったのに、それじゃあ、やっぱり虫歯がひどいのよ。
あっ!あたしのも急に痛くなって来たわ・・いたたたた!
ポン吉:
くそーっ!痛いなぁ~!痛みなんかなきゃ、いいのに!なんで痛みなんか、あるんだよぅっ!
うさこさん:
そうよ、そうよ、痛みがなけりゃ、ピアノを何時間だって弾けるし、どんどんうまくなるわよ!
こぐくん:
痛くなったり、疲れたり、眠くならなければ、ずっと働いていられるから、すごく便利だね!
ポン吉:
そんな、不死身の体が欲しいよ・・鋼鉄で出来ているロボット見たいな・・あ、そうだっ!
ポン吉:
やっぱり、このオレ様は天才だなっ!ちょっと行ってくるね!ばい~っ!
ポン吉:
へへっ!ひ・み・つ!このけんかの勝負、お預けだよ!負けるもんか!
ナレーション:
果たして、ポン吉はどんなことを思いつき、どこへ行ったのでしょうか?
ポン吉のことだから、どんな悪知恵が働いたのでしょう・・?
しばらくして・・大変なことが起こったのです!
こぐくん:
うさこさん、下がっていて・・これは、ポン吉だよ。
うさこさん:
え?ポン吉?でも、ぜんぜん違うわ。
体だってずっと大きいし、目つきがすごく凶暴そうだもの・・
ポン吉:
はは・・あえて言えば、不死身のスーパーソルジャーポン吉ってところかな?
それじゃあ、遠慮なく行かせてもらうよ!それっ!
こぐくん:
うわっ!あぶない・・今までのポン吉とぜんぜん違うぞ!
ナレーション:
こぐくんが驚いたのも、無理もありません!前の五倍以上の筋肉が盛り上がっているポン吉の拳は、稲妻のようなスピードで襲いかかって来ました。
それはぎりぎりのところで身をかわしたこぐくんの体には当たりませんでしたが、コンクリートの壁に当たり、その壁に穴が空いたのです!
しかも、ポン吉の手からは血が出ていますが、へらへらと笑っているのです!
こぐくん:
な、ポン吉、落ち着いて・・ポン吉、おかしいよ・・けんかなんて、やめようよ・・
ポン吉:
ん~?弱虫めっ!おかしいって?僕はすご~く元気で、楽しく殴り合いのけんかがしたいんだよっ!
はは・・それっ!ポン吉爆流拳!
ナレーション:
ポン吉を止めようとしたこぐくんに、今度はまともに顔にパンチが入ってしまったのです。
なんと、こぐくんは、横に吹っ飛んでしまいました。とその時・・
うさこさん:
あ、あなたはっ!動物村研究所のエジソンシュタイン博士!
博士:
はーはー・・す、すぐにポン吉を止めてくれ!
ポン吉は、危険すぎて開発を中止した薬を飲んでしまったのじゃ!すごく危険じゃ!
博士:
いや、こぐくんが危ないのじゃ!不死身ソルジャーDXは、人間をロボット兵士にする薬じゃ。
力が10倍になり、痛みは感じないようになる。そして心を凶暴にして戦うだけしか考えないようにしてしまうのじゃ!
こぐくん:
なんてことを!僕が止めます!みんな、下がって!
ナレーション:
と、こぐくんは襲いかかって来たポン吉の両手とがっちり手を組み、力比べの状態に入りました。
ところが、10倍の力を持ち、痛みも感じない、そして相手を倒すことしか考えなくなったポン吉の勢いはすさまじく、こぐくんは押されて行くのでした・・こぐくんが負けるのは時間の問題です。
そして、見るに見かねたうさこさんは、後ろからポン吉にすがりつきました。
うさこさん:
やめて・・ポン吉。お願いだから止めて・・優しい心を取り戻して・・
ナレーション:
なんと言う力でしょう!ポン吉はこぐくんを圧倒し、投げ倒しました。
さすがのこぐくんも気を失ってしまいました。そして今度はうさこさんに・・!
うさこさん:
や、やめて・・キャーっ、助けてぇ~っ!
ナレーション:
恐ろしい姿です。目は血走ってらんらんと輝き、壁をなぐって血だらけのこぶしは痛いはずなのに口元はへらへら笑っています。
そして、大きく振り上げてこぶし・・これがうさこさんに当たったら、ただでは済まないでしょう!と、その時!
こぐくん:
止めろ、ポン吉!気づいてくれ!正気に戻れ!
ナレーション:
こぐくんは、全体重をかけ、ポン吉に体当たりしました。ポン吉のこぶしはうさこさんには当たらず、こぐくんに当たりました。
しかしポン吉もこぐくんの下敷きになったのです・・それから・・
博士:
病院じゃよ。覚えておらんのか?わしの不死身ソルジャーDXをお前さんが盗んで飲んでしまい、大変なことに・・
ポン吉:
ああっ!そうだ!で、こぐくんは?うさこさんは?
博士:
隣を見てごらん。こぐくんも、大重症で治療中だよ。
ポン吉:
あ、こぐくん・・ごめんね!本当に済まない・・とんでもないことをしたよ。
こぐくん:
いいんだよ。あの悪魔の薬のせいさ。もとに戻ってよかった。
博士:
わしが悪いんじゃ。お金に目がくらみ、あんな薬を・・間違っていた。薬は全部捨てて、作り方も全部消したよ。あんなものを作った自分が憎い。
うさこさん:
こんにちは!よかったーっ!気がついたのね!ほら、お見舞いのお花・・
ポン吉:
あ、うさこさん・・なんて言って謝ればいいのか分からないよ・・ごめんね!
うさこさん:
こぐくんも、言っていたでしょう?あれは薬のせいよ。でも、これだけは約束してね!もう、けんかしないって・・
ポン吉:
うん!やくそくする・・ゆびきりげんまん・・あいたたた・・ところで、歯が痛いんだけど、どうしてかな?
こぐくん:
ああ、それは僕もそうなんだけど、怪我をなおすついでに歯の治療もしたんだって。・・あいたたた、ぼくも・・
ポン吉:
ああ、よかった!いたたたた・・おいおい・・
うさこさん:
ポン吉の意気地なしね!歯が痛いくらいで泣かないでよ!男らしくないわ!
ポン吉:
ちがわい!これは、うれしくて泣いているのさ!だって、あの恐ろしい薬を飲んだ後、全然痛みを感じなかったのに、こうやってちゃんと痛みを感じるんだもの!
うれしくて、うれしくて・・あいたたた!はは・・おいおい・・はは・・おいおい!
博士:
ポン吉は泣いたり、笑ったり、忙しいな!ははは・・
(おしまい)
第16話 「あなたがたのために」
ルカによる福音書 2章8節~20節
ナレーション:
ジングルベール、ジングルベール、すっずがなる~♪
動物村にもまもなくクリスマスがやって来ようとしています。
村にあふれるクリスマスのメロディー、おいしそうなクリスマスのごちそうのにおい、輝くイルミネーションをまとったクリスマスツリー、暖かい暖炉の灯り、そしてにこにこしながら開けるプレゼント。
・・・のはずでしたが、今年のクリスマスはいつもとは様子が違うのでした・・!
プイーパー:
お、これはまた仲良し3人組、今日は揃って泣き声大会ですか? ・・はは
サイパンダ:
楽しいクリスマスには、ふさわしくないなぁ~! ね、プイーパー?
ポン吉:
うるさい、サイパンダ! お、おまえなんかに僕の気持ちが分かるか?
おいおい・・せっかくお母さんがクリスマスプレゼントに買ってくれた、ニンテンドーDSが・・! おいおい・・なくなっちゃったんだよ~っ!
うさこさん:
ニンテンドーDSがなによ! わたしなんか、お母様がわざわざニューヨークのティファニーで買ってくれたスワロウスキーのペンダントが消えてしまったのよっ! え~ん!
こぐくん:
ぼ、ぼくは冬眠用のナイトキャップが・・! うおーん!
プイーパー:
ああ、うるさい、うるさい! 取られるものがあるだけいいよな!
サイパンダ:
そうだよ、それぐらいで、幼稚園児みたいにわーわーよく泣くなよ! みっともない!
ナレーション:
そうなんです、実はクリスマスが近づくにつれ、動物村では変な事件が続いているのです。
夜な夜な、だれかが村を回ってせっかくクリスマスのためにお父さん、お母さんが買っておいてくれたプレゼントを盗んでいるのです。
盗まれた後には、「クリスマスプレゼントはいただいた。ブラックサンタ」と書き置きがあるのでした。このブラックサンタとは誰でしょう? そしてみんなが楽しみにしているプレゼントを盗むその目的とは?
ブラックサンタ1号:
しめしめ、寝ているぞ・・今日はこれで4つ目だ。「クリスマスプレゼントはいただいた。ブラックサンタ」と。ははは・・
ブラックサンタ2号:
クリスマスなんかクソ食らえだ。楽しそうにしているやつの顔を見ると吐き気がする。みんなの困った顔、悲しむ顔が見たいぜ!
ブラックサンタ1号:
ジングルベール、ジングルベール、プレゼントなーい!
今日は、悲しいクリスマス・・♪ はははは・・
ブラックサンタ2号:
はははは・・ざまを見ろ! クリスマスなんか、なくなればいいんだ!
ナレーション:
こうして本来は楽しいはずのクリスマスがだんだん暗~く悲しいものになって行ったのです。でも、そこで立ち上がったのが、我らが動物村一番の仲良し3人組です。
ポン吉:
僕、絶対許さないぞっ! みんなの楽しみを奪うブラックサンタめ!
うさこさん:
そうよ、うさこもぜーったい許さないんだから! クリスマスのプレゼントは子供たちの夢よ! それを盗むなんて!
こぐくん:
でも、なぜだろう? きっと何か理由があるはずだよ!
ポン吉:
理由ならあるさ! 欲望だよ! ニンテンドーDSで遊びたいんだ!
うさこさん:
そうよ! だれだって、あのスワロウスキーのクリスタルの輝きを手に入れたいわよ!
プイーパー:
さあね? そんなこと、知るかい! 俺たちにはクリスマスなんか、関係ないね! な、サイパンダ?
サイパンダ:
その通り、クリスマスになるとどいつもこいつも浮かれちゃって、俺、むかついてたから、ちょうどいいや! ははは・・
ポン吉:
トロイな~、こぐくんは・・。うん、ちょっと調べたんだけどね。まず、プレゼントを盗まれた現場に不思議なにおいがするんだって。すごい特徴のあるにおいなんだ・・
こぐくん:
なるほど! すごいや。で、なんのにおい?
ポン吉:
それがね・・動物のにおいらしいんだよ! うん、だからね、これで推理すると、犯人はかなりの確率で、動物なんだよ!
こぐくん:
すごいよ、ポン吉! さすがは、名探偵!
うさこさん:
何言っているのよ、バカね! ここは動物村だから、みんな動物でしょう? そんなの、なんのヒントにもならないわよっ!
ポン吉:
張るんだよ。犯人が現れそうなところで待ち伏せをするんだ。
ナレーション:
さあ、ポン吉よりずっと頭のいいみんなは、もう誰が犯人か知っていますよね? ここで突然ですが、クイズ、ミリオネアです。
さて、司会は、つる・もんた。それでは100万円に挑戦! 今回のお話でクリスマスプレゼントを盗んでいる犯人、ブラックサンタは誰でしょうか? 次の中から選んでください。
A. ポン吉
B. エジソンシュタイン博士
C. 牧師先生
D. プイーパーとサイパンダ
え? 分からない? しょうがないな~。それでは、ライフラインを使って・・フィフティフィフティ・・コンピューターが答えを2つに絞ります。
おっと、
B. エジソンシュタイン博士
D. プイーパーとサイパンダ
に絞られましたね・・
はい、そこの君!・・・ ファイナル・アンサー? ・・・ 正解!
でも、今回は誰が犯人かではなく、なぜクリスマスプレゼントを盗んでいるのか? その理由がミステリーなのです・・
ブラックサンタ1号:
ごめんくださーい! ブラックサンタでーす!ははは、寝ている寝ている・・今日はこれで6つ目と・・マンションだと、いっぺんにたくさん盗れるから楽だねぇ・・! 「クリスマスプレゼントはいただいた。ブラックサンタ」と。ははは・・
ブラックサンタ2号:
ジングルベール、ジングルベール、プレゼントなーい!
今日は、悲しいクリスマス・・♪ はははは・・
ブラックサンタ1号:
今日もちょろいぜ! さて、退散するか・・
ポン吉:
あきらめろっ! お前たちは袋のねずみだ!
ブラックサンタ1号:
3、2、1、ゼロっ! 発射!
ぷ~~~~~い~~~~~!!! それっ! ぱーっと逃げようぜ! こっちだ!
ブラックサンタ2号:
よっしゃ! 今のうちに・・!
ナレーション:
ちゃんちゃ~ん、ちゃちゃちゃちゃちゃんちゃん~♪(天国と地獄のテーマで)
逃げるプイーパーとサイパンダ、追いかける3人組。とうとうブラックサンタたちはマンションの屋上に追いつめられたのでした。
ポン吉:
さあ、観念するんだ、ブラックサンタ! もう後が無いぞ!
うさこさん:
そうよ、もう、そのださい変装を取ったら? あなたたち、プイーパーにサイパンダでしょ! ばればれよ!
ブラックサンタ1号:
はっはっは、ばれちゃあ、しかたがない、確かに、俺はプイーパーさ。
うさこさん:
でも、どうしてこんなひどいことをしたの? あたしたちになんの恨みがあるのよ!
プイーパー:
クリスマスなんか、大嫌いなんだよ! 俺たちは・・俺たちの仲間は!
サイパンダ:
そうだよ! お前らはいいよな、ちゃんとしたお家があって、家族がいて・・
プイーパー:
優しいお父さんにお母さん。頼りになるお兄さんお姉さん・・それにかわいい妹や弟たち・・
サイパンダ:
クリスマス、クリスマスってうざいんだよ! 一番嫌いなんだよ、みんなが家族と暖かく楽しんでいるのが・・
プイーパー:
クリスマスなんて、俺たち施設に済んでいる子供には関係ないんだよ!
サイパンダ:
プレゼントをくれる親も兄弟もいないんだよ!
プイーパー:
俺たちはなぁ~、同じ子供なのに、どうしてこうも違うんだ? 俺たちがどんな悪いことをしたから、こんなひどい目に遭うんだ? どうして、親に見捨てられたり、親が死んでしまったんだ?
サイパンダ:
クリスマスがにくいんだよ! ボランティアのお兄さんお姉さんがクリスマスパーティをしてくれた後に自分たちの家族に帰って行くのがつらいんだ・・おいおい・・
プイーパー:
だから、盗んだのさ、クリスマスプレゼントをね! みんなのクリスマスをぶちこわすためさ! はははは・・
ポン吉:
それは、違うぞ! お前たちは間違っている! お前たちには、立派に親がいるじゃないか!
ポン吉:
施設のジョゼフおじさんと、マリアおばさんだよ!
ポン吉:
だろ? 血こそつながっていないけど、動物村子羊ハウスのジョゼフさんとマリアさんは、お前たち18人のお父さん、お母さんじゃないか! 違うか?
うさこさん:
そうよ! そりゃ、質素だけど、心がこもったごはん、つぎはぎだけど暖かい服、広くはないけど、お掃除の行き届いたお家・・クリスマスプレゼントだって、手作りのがあるじゃない。
こぐくん:
それに、17人もお兄さんお姉さんがいるの、君たちくらいだよ。
ポン吉:
それに・・僕たちがいるじゃないか! 同じ仲間だよ・・
サイパンダ:
同じなもんか! くそー、こうしてやるっ!
ナレーション:
と、サイパンダは何を思ったのか、ポン吉のニンテンドーDSをマンションの屋上から投げ捨てたのです。そこはポン吉にとって命より大事なニンテンドーDS、後先を考えずにポン吉は飛び出したのですが、ここは動物村でも一番高い100階建てのアニマルマンハッタンビル、ここから落ちたらいくら身の軽いポン吉でも地面激突で死ぬでしょう!
と、サイパンダ、一瞬躊躇しましたが、こぐくんに不思議なことを頼んだのです。
サイパンダ:
こぐくん、何も聞かずに、俺を思い切りポン吉に向かって投げて!
サイパンダ:
いいから! ポン吉を助けるにはこれしかないんだ!
ナレーション:
サイパンダは何を考えているのでしょう? そしてポン吉は助かるのでしょうか?
こぐくんに投げられたサイパンダはポン吉に追いつき、ポン吉を抱えると、なんと背中越しに落ちて行くのでした・・ひゅーっ!ずっと、ずーっと落ちて・・
ぐしゃあっ! っとものすごい音をたてて、二人とも地面に叩き付けられました・・
うさこさん:
サイパンダが空中でポン吉を捕まえて、抱えて・・背中から落ちたのよ!
ポン吉:
あ、そうだ! で、サイパンダは? ね、サイパンダは?
ポン吉:
なぜ、あんなバカなことをしたんだ? でも、どうして生きているの?
サイパンダ:
はは、僕の背中はね、リュックサックになっていて、今まで盗んだクリスマスプレゼントが全部入っているんだ。風船とか、ぬいぐるみとか、服とかね・・だから背中をクッションにすれば、君を助けられると思ったんだ。
ポン吉:
そうか・・ありがとう。君は命の恩人だよ!
サイパンダ:
いや、ポン吉が言ったことで救われたよ。今まで自分が一番不幸せだと思っていたけど、それが大間違いだってね。それは、人とくらべてないものを数えればきりがないけど、周りをよく見れば実は大事なものはちゃんと与えられている。何よりもジョゼフさんやマリアさんがいてくれる・・
ポン吉:
そうか・・分かってくれてよかった。だからプレゼントをみんなに返してクリスマスをみんなで祝おうよ・・まず、このニンテンドーで・・あれ?
ポン吉:
おいおい~! こわれているよ! 僕のDSが~っ!
ポン吉:
そうだね・・子供は元気が一番! お外で追いかけっこでもしよう! 元気、元気、ははは・・!
うさこさん:
あれ? ポン吉、ちょっと涙が出ているわよ、無理しているんじゃない?
ポン吉:
違うよ! これはだね・・鼻水だよ、はなみず・・!
こぐくん:
あはは、いつものポン吉の目から出る鼻水だね! ははは・・
ナレーション:
確かに、機械よりも、クリスマスプレゼントよりも、何よりも大切なもの、それは命です。
その体の命を下さったのは、神様です。そしてさらに魂の命も与えて下さったのは、神様です。私たちの救い主イエスキリストを私たちの罪を許す為に世に送って下さいました。
実は、動物村のジョゼフさんもマリアさんも自分たちの子供はいませんでしたが、神様は18人ものかわいい子供を与えて下さったのです。
私たちも、神様の愛に感謝し、神様のことをお友達に伝えて行きたいですね。
(おしまい)