動物村人形劇場

日曜学校の動物村人形劇場 第1話~第6話です。

第1話 「キリストの証人となる」

ルカによる福音書 24章44節~49節

ナレーション:

これは、まだうさこさんがポン吉とこぐくんの住んでいる森に引っ越したばかりの頃の事です。 うさこさんは慣れない森で、早く友達を作りたいと思っていました・・

こぐくん:

そうか、じゃあ、うさこさんは春休み中に引っ越して来たんだね。

うさこさん:

そうなの。 あたしとーってもシャイでこわがりなのでお友達作れるかとーっても心配なの・・

こぐくん:

じゃあ、僕がなってあげるよ。 でね、僕の友達にも紹介してあげるよ・・あ、来た来た。 あれがポン吉、とーってもいいやつなんだけど・・ちょっとね・・

ポン吉:

おいおい、「ちょっと」なんだよ!

こぐくん:

あ、聞こえた?

ポン吉:

聞こえるよ・・こぐくんはささやいてるつもりでもスピーカーよりうるさいよ・・ あ、その子、誰? かわいいなー。 紹介してよ!

こぐくん:

あ、この子はね・・

うさこさん:

あ、あたしうさこでーす! よろしくお願いしまーす!

ポン吉:

は、はい! 元気な子だなー!

こぐくん:

あれっ? さっきまでは、「こわがり」とか言ってたよ・・

うさこさん:

えへへ、ばれたか・・!

ポン吉:

いいよ、いいよ、元気な方が・・ ところで、ねぇ、面白いもの拾ったんだ! 見てみて!

こぐくん:

また変なものじゃないかなー。 こないだなんか「これおいしんだー。」とか言って、かたつむりの赤ちゃんを僕の口に入れて、食べちゃうところだったぞー!

うさこさん:

えーっ? ポン吉さんっていったい・・

ポン吉:

ごめんごめん、でもフランスではエスカルゴって言ってほんとにかたつむり、食べるらしいぜ・・

こぐくん:

それより、「面白いもの」ってなんだろ?

ポン吉:

あ、そうそう、これさ! (と十字架につけられたキリストのペンダントを見せる)

こぐくん:

あれっ? ちっちゃいね。なんだろ?

うさこさん:

あっ!

こぐくん:

どうしたの、うさこさん?

うさこさん:

なんでもないわ・・ (どうしよう、これ、わたしのペンダントだわ・・)

こぐくん:

あーっ、これっ! 見たことある・・

ポン吉:

そうなんだ、今思い出したけど、確かあの「教会」とか言う森のはずれにある変な家に行く人がしてるやつさ・・ その変な家のてっぺんにも漢字の「十」見たいなものがくっついてるな・・ まさか、うさこさんの前住んでた所にはそんな変な「教会」や変な人たちはいなかったよね?

うさこさん:

そ、そうね、いたと思うけど・・ やっぱりわたしも変だと思ってたわ・・ (ああ、ひどいこと言っちゃったわ、わたし、前の森でも教会行っていたのに・・)

こぐくん:

そうそう、へんな人たちだよね・・ 休みの日曜の朝にきれいな服を着て、いい天気なのに外に遊びに行くんじゃなくて、暗い部屋にみんなで集まって・・

ポン吉:

へんなふにゃふにゃした歌を歌ったり・・ うさこさんは、歌、好き?

うさこさん:

あーあーあー! もちろん、好きよ!

ポン吉:

でもまさか、あの変な「さんびか」とか言うの、歌ったこと、ないよね?

うさこさん:

えっ? も、もちろんないわ! あんなへ、へんな歌! (ああ、どうしよう、どんどん心にもないことを言ってしまうわ!)

こぐくん:

そんでさっ! 「ラーメン!」と突然叫んだり・・ どこにもラーメンなんかないのに・・ ラーメン、食べたいな・・

ポン吉:

ばかっ! そんな話じゃないだろ・・ やっぱり変だよ。これを見ろよ・・

こぐくん:

あ、ポン吉、だいぶ爪が伸びてるね、ちゃんと切らないと・・

ポン吉:

あほーっ! どこ見てる、この「十」についてる、へんなひげのおっさんを見てみろよ・・

こぐくん:

ん? なんかはだかだね・・

ポン吉:

おかしいと思うだろ? 手をひろげちゃって・・ やせこけちゃって・・ ね、うさこさん?

うさこさん:

そ、そうね・・ (うさこ、なぜだまってるの? ちゃんと、言いなさいよ、この人はイエスさまだと!) な、なんかへんね・・ そう言えば・・

ポン吉:

なんか悲しそうななさけない顔してると思わない?

こぐくん:

たぶん、おなかが減って泣いてるんだよ・・ ラーメン食べられなかったから・・

うさこさん:

あ、あのー (そうよ、うさこ! 勇気を出していいなさいっ! この人こそみんなの救い主だって!) そ、そうかもね・・!

ポン吉:

あ、わかった!

こぐくん:

なにが?

うさこさん:

よかったー! 分かってくれたのね!

ポン吉:

この人ね・・

こぐくん・うさこさん:

うん、うん・・

ポン吉:

きっとね・・

こぐくん・うさこさん:

うん、うん・・

ポン吉:

こじきだよっ! しかもーみんなをうらんでるっ!

こぐくん:

あ、なーるほど! 確かに・・

ポン吉:

な、だってさー、服もぼろぼろだし、よく見ると目つきわるいし・・

うさこさん:

(爆発する) もうー、もうー、もうー・・!!!!

ポン吉・こぐくん:

ど、ど、どうしたんだよ、うさこさん!! きゃー、こわいーっ! ゆ、許してくださいーっ!

うさこさん:

さっきから聞いてれば、好き勝手なことを言ってー!! もう、我慢ができないわ、 もう、お友達になってもらわなくてけっこう! この人がだれか、教えてあげますっ!

ポン吉・こぐくん:

だ、だれ、じゃなくて、どなた・・ですか?

うさこさん:

この方は、イエス・キリスト、私たちの罪のために死んでくださった方です! 乞食ですってー? 人を恨んでいるですってー? とんでもないっ! この方は神様のひとり子です。 そのひとり子が貧しいものとなって、私たちと同じになって、私たちに神様のみ言葉を伝えてくださったのです。 そして最後にはこの十字架に両手両足を釘で打ち付けられて、苦しんで苦しんで死なれたのです。 それも、自分を十字架につけた人たちのことを「父なる神よ、この者たちを許してあげてください。自分たちが何をしているか、知らないからです。」と許したのです。 本当の事を言います。 私は、前住んでいた森でも教会へ行っていました。 そしてこの森でも、ここの教会に行き始めました・・ わーん、わーん!

ポン吉:

おい、おい、ごめんよー! 泣かないでおくれよー! おい、こぐくんも!

こぐくん:

ごめんよ、ごめんよ。泣かないでおくれ・・ 困ったなー。

うさこさん:

じゃあ、今度の日曜日、教会に来てくれる?

ポン吉:

えーっ? だってサッカーの練習があるから・・

うさこさん:

うぇーん! うわーん!

ポン吉:

わ、わかったよ! 行く、行く!

(こぐくん、そろりそろりと逃げ出そうとしている。)

うさこさん:

こぐくんは?

こぐくん:

あっ、ぼ・ぼ・ぼ・ぼくはー

うさこさん:

うぅわーんんん!

こぐくん:

行きまあす。行きます。行かせてもらいます。喜んで・・

うさこさん:

うわーい! うれしいなっ! 新しい教会へ一人で行くのさびしかったんだーっ! うわーい! うっれしいなったら、うっれしいなっ! たったらったらったらんらんらん♪

ポン吉:

もーう、げんきんなんだから・・でも、面白い子だね、こぐくん?

こぐくん:

元気過ぎて、ちょっと疲れるけど・・

うさこさん:

よぉーし! ほっぺたが落ちるくらいおーいしーいクッキーをたーくさん、焼いて持って行くわよー!

こぐくん:

・・大好きさっ!

ポン吉:

えーっ! やったー! だ・か・ら・

ポン吉・こぐくん・うさこさん:

イエスさま、大好き!!!

(おしまい)

第2話 「わたしはイエスである」

使徒言行録 9章1節~8節

ナレーション:

うさこさん、ポン吉、そしてこぐくんは、教会学校の夏のキャンプで山の奥の山小屋に来ました。 そこは、テレビやビデオゲームはない代わりに自然がいっぱいのところでした。 さて、夜になり、きもだめしをするために暗い山道を歩いています。

ポン吉:

くんくんっ! しっかし強烈なにおいだなー、これなら目をつむってもうさこさんがどこにいるか、わかっちゃうよ!

うさこさん:

「強烈」とは何よ! これは、「ラ・ムール」と言って、フランス語で「愛」と言う意味の、とーっても高級で高ーい香水なのよっ!

こぐくん:

くんくん。 確かに「強烈」はひどいよ、ポン吉。 いい匂いだよ、この「ラム・レーズン」っての。 うーん、鼻が曲がるほどいい匂いだ・・

うさこさん:

もうーっ! ひどいわ、ひどいわ。 「鼻が曲がる」ってのは、くさい時に言う言葉じゃないのっ! だいたい、「ラム・レーズン」じゃなくて、「ラ・ムール」よっ! えーん、えーん!

ポン吉:

こぐくん、僕よりひどいじゃないか! もう、無神経なんだから・・

こぐくん:

ごめん、ごめん!

うさこさん:

えーん、えーん。 もうケーキ作ってあげないからー! えーん!

こぐくん:

ご、ごめんよー! ねぇ、ごめんね!

ポン吉:

しーっ! ちょっと待った! なんか聞こえないか?

こぐくん:

えっ? なに?

うさこさん:

べつに、なにも聞こえないわよ・・ あーっ! あれは・・

ポン吉・こぐくん:

なーに?

うさこさん:

あれは、はなちゃんの声よ!

ポン吉:

あぁ、うさこさんが連れてきた子猫の?

うさこさん:

そうよ! でもあの声は泣き声よ。 きっと大変な目に遭ってるわっ!

こぐくん:

たしかに・・ 悲しそうに鳴いてるね・・

ポン吉:

すぐに助けに行こう!

ナレーション:

確かにはなちゃんは大変なことになっていました。 みんなが声を頼りに行って見ると、なんと! はなちゃんは、いなかのお便所に落ちていたのですっ!

うさこさん:

うそでしょう? こんなことになるなんて・・! どうしましょう?

ポン吉:

さっきからぼうきれとかを使ってはなちゃんにつかまってもらおうとしてるんだけど、怖がってかえって奥に逃げちゃうんだ・・

こぐくん:

今から助けを呼びに行っても間に合わないぞ・・

うさこさん:

はなちゃーん! お願いだからその棒につかまって! ・・ああ、だめだわ、棒を引っ掻いてる・・

ポン吉:

よしっ! こぐくん、手伝ってくれ!

うさこさん:

ど、どうするの?

ポン吉:

こぐくんに僕の足をつかんでもらって、僕が中に入ってはなちゃんをつかんで引き上げるのさっ!

こぐくん:

よし来た!

ポン吉:

こぐくん、しっかり持ってくれよ! 手を離したら、アウトだからねっ! それっ!

こぐくん:

うぅーん! がんばるぞっ!

うさこさん:

はなちゃん、大丈夫よ。 その人はあなたを助けようとしてるの・・ 怖い人じゃないの。 その人の手につかまってっ!

ポン吉:

頼むからさーっ! いててて、だ、だめだっ! おーい、こぐくん、引き上げてくれっ!

こぐくん:

うーんとこどっこいしょっ!

ポン吉:

だめだ。 はなちゃん、ぐったりしてるんだけど、パニックしててさ、助けようとしてるのがわからないんだ。 救おうとしている僕の手をばりばりひっかくわ、力いっぱいかむわ・・

こぐくん:

ポン吉が手を伸ばせば逃げるし、つかもうとするとますますあばれるんだよね・・

ポン吉:

なんとか、はなちゃんを安心させられればいいんだけど・・ はなちゃんが落ち着いて、 僕達がいじめるためじゃなくて、助けるためにつかもうとしているって・・

うさこさん:

まあ、血だらけじゃない・・! ふいてあげる・・

ポン吉:

ありがとう・・くんくん・・うえっ! ・・くんくん ・・はなちゃん、はなちゃん、はな ・・そうだっ! はなだっ!

こぐくん・うさこさん:

ど、どうしたの?

ポン吉:

はなだよ、はな、はな。ね、うさこさん、その「ラ・ムール」とか言う香水、今持ってる?

うさこさん:

な、なにを急に? もちろん、持ってるわよ。 レディの身だしなみだもの・・ ほら。

ポン吉:

悪いけど、その香水もらうよっ! それっ!

うさこさん:

あーっ! なにするのよ! それ一本1万円もするのよっ!

ポン吉:

僕を信じるんだっ! さ、こぐくん、僕の足を持って下ろしてくれっ!

こぐくん:

おーしっ!

ポン吉:

さあ、はなちゃん。 安心して・・ 僕がお前のママのうさこだよ・・ わかるだろ、この香水のにおい・・ うさこのにおいだよ・・ いじめるためじゃないんだ・・ そうそう・・ はなちゃんを救うために来たんだよ・・ さ、こっちに来てごらん・・ ゆっくり・・ ゆっくり・・ いい子だ、いい子だ・・ そうそう・・ (こぐくん、引き上げて!ゆっくり!)

こぐくん:

(わかった・・ゆっくりね)

はなちゃん:

みー、みー。

うさこさん:

はなちゃんっ!

はなちゃん:

みー、みー。

うさこさん:

はなちゃんっ! もう離さないからね・・!

ポン吉:

やったーっ!

こぐくん:

良かったねっ!

うさこさん:

ありがとう、ポン吉、ありがとう、こぐくん!

ポン吉・こぐくん:

良かった、良かった。

うさこさん:

でも、どうしてあんなことを思いついたの、ポン吉?

ポン吉:

とっさのことなんだけど、はなちゃんって顔のお鼻に似てるじゃない? そんで、うさこさんの香水って強烈だから、 あの中のすごい匂いのなかでも、はなちゃんにきっとわかって、はなちゃんのママのうさこさんが助けに来たってわかると思って・・

うさこさん:

ありがとう、ポン吉。

こぐくん:

すごいよ、ポン吉!

ポン吉:

でも、ごめんね。 すごく高い香水全部使っちゃって・・

うさこさん:

ううん、いいの、はなちゃんの命には代えられないわ。 ありがとう。 お礼に、あの香水、新しいの買ってポン吉にプレゼントするわ。

こぐくん:

すごーい! 良かったね、ポン吉。 ん万円するちょー高級香水なんだろ?

ポン吉:

えっ?えへへー、ご遠慮しますーっ!

うさこさん・こぐくん・ポン吉:

ははははははっ!

(おしまい)

第3話 「ザアカイ」

ルカによる福音書 19章1節~10節

ナレーション:

動物村に新しいお友達が引っ越しして来ました。 亀吉君です。 勉強がとっても優秀なので級長になりました。 そして給食費などを集める係りだったのですが、クラスのみんなからはちょっと嫌われていました。

ポン吉:

おやー? おい、みんな気をつけろ、あのいやな亀やろうが来たぞ!

うさこさん:

まあ、いやーねぇ。 また給食費、催促されるわよ!

こぐくん:

なんでこう、お金の話ばかりするのかねぇ。

亀吉:

やあ、やあ、みんな、もうかりまっか?

ポン吉:

なに言ってんだい。 ここの挨拶は「もうかりまっか?」じゃなくて・・「こんにちは!」だろ!

亀吉:

ほな、「こんにちは!」ところで、ポン吉はん、あんさんの給食費、2回分まだ払ってないようだけど・・

ポン吉:

あの・・その・・ちょっとお家に忘れて来たんだ・・

亀吉:

ほうー、器用なもんでんな。 続けて二週間も家に忘れてきなはるとは・・

ポン吉:

へへへ・・ いやーそんなに褒められてもー

亀吉:

ほめてなどおりまへん! 明日までに持ってきなはれ! ええですな!

ポン吉:

は、はいーっ! すんまへん!

亀吉:

よろしいでんな、必ず持ってきなはれよ。 それからそこのお二人さんも!

うさこさん・こぐくん:

はいーっ!

亀吉:

えーと、うさこはん、あんさんは、1回分、一週間遅れ。 ほんで、こぐはんは、 なーんと3回分、一ヶ月遅れ。新記録でんな! まったく・・

うさこさん・こぐくん:

どうも・・

亀吉:

明日までに三人とも遅れてる分、耳そろえて持ってきなはれや! でないと、せんせに報告や・・きっとえらいどやされるでぇ・・!

みんな:

はいーっ!

亀吉:

ほな、よろしゅうにな! わては図書館に予習にいくさかい。 みなはんも、遊んでばかりいないで、ちーっとは勉強したら、よろし。

うさこさん:

あっかんべーだ。 何が「図書館に予習にいくさかい」よ!

ポン吉:

放課後に遊ぼうが勉強しようが、おいらたちの勝手だろ!

こぐくん:

確かに勉強はできるからなぁ・・

うさこさん:

でも、おかしいと思わない? だってどうしていつも給食費を一ヶ月も早めに払わないといけないの? 他のクラスなんかそんなことしてないわよ!

ポン吉:

おまけにさ、おいらたちごまかされてないか? だって一回とか、二回とか、三回とか、 おいらたちあんまりきっちり覚えてないもんだから、絶対どっかでちょろまかしてるよ!

こぐくん:

でも亀吉くんて頭いいから、亀吉くんの方が正しいと思っちゃうんだよね・・

ポン吉:

ねぇ、みんな、むかつかないか? 今度さ、亀吉のやろうにうーんと仕返ししようよ・・

うさこさん・こぐくん:

うん、大賛成!

ポン吉:

おいらに考えがあるんだ・・

ナレーション:

さて、動物村の小学校に一大事件です。 なんと、あのスポーツ界にとどまらない、 世界的サッカー選手の超スーパースターのヒデさんが、サイン会をしにやって来ました。

うさこ・ポン吉:

きゃーっ! ヒデー! こっち向いてぇぇぇ!

こぐくん:

ヒデー、ぼくにも握手してよー!

亀吉:

おや、みなはん、こんなに集まって、なにしてはる?

ポン吉:

お前、図書館ばっかりにこもってお金勘定してるから、知らなかったろ? あのスーパースターのヒデが今、サイン会をして握手してくれてるんだよ!

亀吉:

えっ! あのヒデが生出演? ほんまいうと、わて大フアンなんや! サイン欲しいのー。

ポン吉:

おまえなんかに、ヒデに合わせてやるもんか!

亀吉:

なあ、そんないじわるせんと・・

うさこさん:

ぜーったい、見せてあげないから!

亀吉:

そんな、殺生な!

ポン吉:

えいっ! おなら攻撃! くらえっ! ぷぅ~~~っ!

亀吉:

うーーっ、くっさーっ。 鼻がまがるがな・・

うさこさん:

ここは、通さないわよ! うさこキーック! えいっ!

亀吉:

うおっ! 強烈! 頭ふらふらのはらへりほろーっ!

こぐくん:

最後はこぐくんの、ぜったいやぶれない、ぬりかべー!

亀吉:

ヒデ、絶対見たいよー! サイン欲しいよー! 握手したいよー!

こぐくん:

僕のかべは、ぜったい通れないよ、あきらめるんだな。

ポン吉:

いままで、おいらたちにいじわるしてきたばつだ!

うさこさん:

そうよ、ぜーったいヒデになんか見せないわよ!

亀吉:

そうだっ!

ナレーション:

なんと、亀吉は驚くべき行動に出ました。 あの地面をもそもそ這いずり回るだけだと思っていた、 亀ですが、亀吉は、なんとこぐくんの背中を上って、頭の上まで行き、ヒデに呼びかけたのです。

亀吉:

ヒデはんー! 握手しておくんなはれー! 一生のお願いやー!

ポン吉:

す、すごい根性! だけど、させないぞっ! こぐくん、ぼーっとしてないで、そいつをたたき落とせ!

こぐくん:

ようし、こぐくんぱわー! おまえなんか、たたき落としてくれるー!

ナレーション:

こぐくんも強いですが、亀吉も必死にしがみついています。 しかし、100万トンの力、とうとうこぐくんは亀吉をひきはがし、 思い切り床に投げつけました! いくら亀とは言え、床に激突したら、大変!

うさこさん:

きゃー! やりすぎよー!

ポン吉:

うおーっ!

ナレーション:

と、亀吉が床に激突する瞬間、いなずまのような影が走り、なんと亀吉を受け止めたのです。 それは、ヒデでした。 なんと亀吉をボールのように体でやわらかく受け止めて、ナイストラーップ!!

ヒデ:

大丈夫かい、亀くん?

亀吉:

はい。

ポン吉:

そんなやつ、助けることないよ! ちっとは痛い目に会ったほうがいいんだ!

うさこさん:

そうよ、そうよ!

ヒデ:

それは、違うんじゃないのかな? なにがあったのかは、知らないけど、この亀君は、必死になって僕を見ようとしてた、 なんとかして僕に会おうとしてた。 それを君たちがじゃましていた。 そうだろ?
僕はサッカー選手だ。 仲間の大切さは一番知っている。 クラスメート、それは大切な仲間だろ? 助けるのが当たり前じゃないのか?

うさこさん:

でも、亀吉は私たちにいつも給食費を払えっておどすんです。

ポン吉:

おいらたちが、少し頭が悪いにつけこんで、ごまかしてお金をもうけているんだ!

ヒデ:

それは、本当かい、亀吉くん?

亀吉:

(こっくりうなずいて)本当です。 今まで一月前に集めて株を買ってもうけたり、みんなが忘れっぽいのをいいことに、 払っている回数をごまかして、みんなの給食費を自分のものにしてました・・

ポン吉:

そら見ろ!

亀吉:

わーん、ごめんなさーい!

うさこさん:

やっぱりね、もうー絶対許さないから!

亀吉:

うわーん、もうしませーん!

ヒデ:

わかった。 こうしよう。

ナレーション:

と、ヒデはなにを思ったのか、サッカーボールを思い切りけると、空のかなたまで飛んで、消えてなくなってしまいました。

ヒデ:

今、いじわるで、お金を盗む悪い心の亀吉は、あのボールと一緒に消えてしまった。 僕もこの亀吉を許すから、君たちも亀吉を許してやってくれないか?

ポン吉:

でも・・

こぐくん:

ぼく、許すよ。 ぼくこそ、力まかせに投げて、ごめん。 ほら、握手。

うさこさん:

あたしも、ごめんのキス。

ポン吉:

まあ、今回は許すよ。 おいらビッグな心のモンキーだからな。 はい、握手。

亀吉:

ありがとう、みんな。 みんなからごまかしたり、盗ったお金は全部返すよ。 それでね、実は株でもうけたお金があるんだけど、それ全部使って仲直りの大パーティをしよう! もう、学校中のみんなを呼んで、好きなだけ飲んだり食べたりできるよ!

うさこさん:

おいしいケーキは?

亀吉:

あるある!

ポン吉:

カレー好きなんだけど・・

亀吉:

あるある!

こぐくん:

ぼく、たーっくさん食べたいんだけどー

亀吉:

お料理が、トラック3台分!

みんな:

やっほー! やったー!

亀吉:

ヒデさん、ヒデさんもパーティに来てくださいますか?

ヒデ:

うーん。残念だけどね、僕は次の村に行かなければならないんだ。 僕に会いたい子供たちがまだまだいーっぱい待ってるからね! でも、僕は君たちのパーティに心では一緒にいるよ。 いつでも、仲間と一緒にいるときは、僕を思い出して、お互いにやさしくしてね。 くじけそうな時には、今日のことを思い出して、今日のやさしい気持ちをもっともっと多くの仲間に伝えて欲しいんだ。 約束できるかな?

みんな:

もちろんです!

(おしまい)

第4話 「タラントの喩え」

マタイによる福音書 25章14節~28節

皆さん、心の中に優しい心を持っている人は手を挙げてください。

ナレーション:

動物村小学校も夏休みが終わり、新学期が始まりました。 そして一年で最大のイベント、動物村小学校大運動会も近づいて来ました。 数ある種目の中でも、一番人気があってみんなが注目しているのが、「動物村小学校 大腕相撲No.1決定戦」です。

ポン吉:

やっぱり今年もこぐくんだね、動物村小学校、腕相撲チャンピオンは?

うさこさん:

そーおよぉ、だってその前の年も、その前の前の年も、こぐくんチャンピオンだったものね。

こぐくん:

ありがとう! でも、ジャングルジムあーぁあーならポン吉にかなうやつなんていないし、サバンナ縦断レースならうさこさんにかなう子なんていないよ。

ポン吉:

まあ、おいらたちそれぞれ、得意な種目があるからね! まあ、このこぐくんの腕っ節を見てよ!

うさこさん:

いつも、ほれぼれしちゃうわ! 腕周り1メートルですって? どんぐりやまの一本杉の幹と同じ太さじゃない、すごいわーっ!

ポン吉:

ほれ、僕がぶらさがっても、大丈夫!

うさこさん:

ほーら、あたしが反対側にぶらぶらしても、大丈夫!

こぐくん:

えへへ、あと二、三人ぶらさがっても、大丈夫だよー!

うさこさん:

やっぱり、腕相撲チャンピオンはこぐくんに決定ーー!

こぐくん:

ま、まあね、えへへへへ。

ポン吉・うさこさん:

あはははは!

ナレーション:

と、仲良しの三人組だったのですが、動物村小学校の大運動会で優勝者に景品が出ることになったので、大変なことに・・・

ポン吉:

すごいよ、すごいよ、すごすぎ! 運動会で景品がでるんだって! しかも、優勝者は景品が選べるんだぜ! おいら、ぜーったい一番新しいビデオゲームマシンのG-BOXにしよう!

うさこさん:

ほんとよーっ! あたし、燃えちゃうわーっ! だって、あたし、世界で最高の香水、 キャネルの5番、12本お徳用詰め合わせが、ぜーったい欲しいもの!

こぐくん:

ぼくは、景品なんてどうでもいいけど、チャンピオンのプライドがあるから、絶対に負けないぞ!

ポン吉:

ところがさー、ひどいのなんのって、ジャングルジムあーぁあーは修理中で、今年はないんだぜっ! ひどいよ、ひどいよ!

うさこさん:

あーら、あたしも思わず泣いちゃったわっ! だって、だってサバンナ縦断レース、時間がかかりすぎるのでカットですって! あたしの、あこがれのキャネルの5番、12本お徳用詰め合わせはどおすんのよぉー!

こぐくん:

まあ、まあ。景品なんてどうでもいいじゃないか。 優勝することが一番大事なんだから・・!

ポン吉:

おまえは、いいよな! 絶対に優勝して、景品もらえるんだから! おいらのG-BOXどうしてくれるんだよっ!

うさこさん:

そうよ、そうよ! ずるいわよっ、一人だけキャネルの5番もらおうってこんたんでしょっ!

こぐくん:

だから、ぼくは景品より、勝ちたいんだよっ!

ポン吉:

ふんっ! よーし、おいらだって鍛えて腕相撲チャンピオンになるぞっ!

うさこさん:

ふーんだ! 女の子だからってバカにしないでよーっ! キャネルの5番が めっちゃ欲しい女の子の執念は恐ろしいんだから・・ あたしも腕相撲チャンピオンになるっ! なってやる!

ナレーション:

とまあこんな訳で、大の仲良し三人組は、いっきにライバル三人組になってしまいました。 三人はあと一ヵ月後に迫った、 動物村小学校大運動会、略して、「どうしようかい」に向けてトレーニングを始めたのです・・・(ロッキーのテーマ)

ポン吉:

はっ、はっ、はっ!

うさこさん:

はー、はー、はー。

ポン吉:

あー、もうだめ。 ぐたーっ!

うさこさん:

あたしも、もうだめ。 はぁーっ!

ポン吉:

ねぇ、うさこさん、調子はどう?

うさこさん:

いいわよ、けっこう。 だって、ダディにお願いして、コーチを三人もつけて、 毎日トレーニングジムに通っているもの。 おかげさまで、見て!この筋肉!

ポン吉:

うわぁー、すごいなー! 僕んとこはそんなにお金ないから、親戚のキングコングさんのところへ 行って特訓してもらったり、練習試合してもらっているのさ。 ほーら、僕の力こぶも見てよ!

うさこさん:

へぇー、りっぱなものね! でーも、優勝は渡さないわよ! ぜーったい、キャネルの5番、12本お徳用セットゲットよーっ!

ポン吉:

僕も、G-BOX目指してがんばるよ! ・・・(ひそひそばなしで)ねぇ、ところでこぐくん、最近おかしくないか?

うさこさん:

うんうん、おかしいわよ。 だって・・ 最近見ないし、どっか秘密のところで特訓してるんじゃない?

ポン吉:

そうだよね。 あれ、見た? 確かに学校には来るんだけど、右腕に包帯を巻いちゃってさ、ちょっと不気味だよね・・

うさこさん:

うん、すっごいきもいわ。 だって右腕だけミイラなんだもの。 まるで、骨折した時のギプスみたいにかためちゃって・・ 一ミリも動かさないんだもの・・

ポン吉:

体育の時だって、座って見学だぜ? あれは、何かを隠してるな・・きっと・・・

こぐくん:

やあ、どうしたの、二人でひそひそばなしして?

ポン吉・うさこさん:

うっひゃー!! びっくりした!

こぐくん:

感じわるいよ、何話してたの、「ひそひそ、こぐくんがね、こしょこしょ、こぐくんったら・・ごしょごしょごしょ」って。

ポン吉:

あ、あー、あのね、つまりは、あの、まあ、なんだな、えー、そのー、ってなわけで。

こぐくん:

さっぱりわからないよっ!

うさこさん:

だからー、その包帯まきまきの右腕がミイラみたいで、気味がわるいって話してたのよ! いったいどうしたの、その腕?

こぐくん:

あー、これか! これね、とっといてあるの。

ポン吉:

「とっといてある」??? え、どう言う事?

こぐくん:

だから、大腕相撲大会が今度の日曜でしょ? その時まで、大切に、大切にしまってあるんだよ。

うさこさん:

でも、きたえたり、練習したりしなくて、いいの?

こぐくん:

とんでもないっ! もう、絶対勝てる力はあるんだから、このままにするのが一番なんだ。 この包帯の下、なんだと思う?

ポン吉:

ちょっと、さわらせて・・ うーん、堅いね。 こん、こん。 カーン。 えーっ、なに、これ?

こぐくん:

チタンだよ。 地球上で一番堅い金属。 なにかあったら大変だからね・・ 大会前に事故や怪我があったら、優勝できないから。

うさこさん:

へんなのー! どんなに力があっても、使わなきゃ意味ないし、使わなかったら弱くなっちゃうんじゃないの?

ポン吉:

キングコングおじさんも言ってたよ、「わしは強いが、まだまだ強くなりたいから、毎日トレーニングしておる、お前も苦しいだろうが、がんばれっ」て。 こんなの取っちゃって一緒に鍛えようよっ!

うさこさん:

また三人で一緒に走ったり、筋トレしたり、練習試合しましょうよっ!

こぐくん:

ほっといてくれよっ! 僕はもう、十分に強いんだ! 絶対優勝するためには、事故や怪我をさけて、 このチャンピオンの右腕を試合の日まで大切に大切にとっておくのが一番なんだ!

ナレーション:

と、こぐくんは言うと、試合の当日までずっと家にひきこもり、学校にも来ませんでした。 部屋にも誰も入れず、チタンのギプスでごちごちに守られた右腕を労わってずっとベッドで寝ていて、 一ミリも動かさないようにしました・・・
さあ、いよいよ動物村小学校大運動会、略して、「どうしようかい」がやって来ました! さあ、優勝候補のこぐくんの第一試合ですっ!

うさこさん:

さあ、こぐくんだからって負けないわよーっ! あたしには、けっこう自信があるんだから! 昨日は、ねずみのちゅー吉に三回も勝ったんだから・・・

ポン吉:

がんばれよー、うさこさん! 二人で一緒にトレーニングしたのを思い出して・・! こぐくんもがんばってー!

こぐくん:

ありがとう、でもうさこさんが勝つって? まあ、無理だと思うよ・・ この黄金の腕の前ではね・・・ さあ、出すぞ、マイ・ゴールドハンド! せーの!

うさこさん・ポン吉・こぐくん:

あぁーーっ!

ナレーション:

みんながびっくりしたのも、無理ありません、なぜなら、こぐくんの、あのぶっとい丸太のようなムキムキの腕が、 まるで育ちの悪いもやしのように細くなってしまったのです。 白いどころか、ほとんど透明にちかい、ラーメンにいれたら、 しゃきしゃきしておいしいと言うくらい・・・

こぐくん:

なんじゃー、これは! 僕のうで、どうなっちゃったんだ?

ポン吉:

どうなったって、自分でしたんじゃないか。 自分で腕をしまいこんで、使わないで、台無しにしたんじゃないか?

うさこさん:

かわいそう! あの立派でたくましいこぐくんの腕がこんなになっちゃって・・・

ナレーション:

結局、こぐくんは、腕を腕相撲台に乗せることもできず、うさこさんにさえ不戦敗で負けてしまったのです。 試合の行方は・・ 最後にずっとつらいことに耐えてがんばった、うさこさんとポン吉が決勝戦を行ない、 激戦の末、ポン吉が優勝しました。
ところが、準優勝で商品としてもらったキャネルの5番、2本組レディースセットを学校の屋上で 見せびらかせていたうさこさんは、足を滑らせて、なんと落ちてしまったのです!

うさこさん:

きゃー、た、助けてー!

ナレーション:

と、これも賞品のG-BOXを友達に見せびらかせていたポン吉が運良くうさこさんを3階の窓から身を乗り出して、うさこさんをキャッチしましたが・・

ポン吉:

やったっ! キャッチしたぞ・・ でも、あーぁ、重すぎて支えきれないよーっ!

ナレーション:

大変です。 今度は、うさこさんとポン吉がだんごになって3階から落ちました。 二人合わせて15キロ、それに落ちるスピードも加えると、約150キロ、こぐくんの体重よりも重い。 それが地面に激突すれば・・・ きっと死んでしまうでしょう!
と、その時!

こぐくん:

うぉーぉーおーーっ! 神様、二人を助ける力を、今だけぼくにください!

ナレーション:

奇跡でしょうか、半透明のもやしみたいにがりがりになっていたこぐくんの右腕が、 もり、もり、むく、むく、と大きく立派にふくらんだかと思うと、ちょうどそこへ うさこさんとポン吉が落ちて来たのです・・・

うさこさん・ポン吉:

うわーっ! きゃーっ!

こぐくん:

うぉーお、むむ、うぐぐぐぐっ!

ナレーション:

一瞬、一瞬でよかったのです。 こぐくんの右腕は力強くやわらかく、うさこさんとポン吉の体をキャッチし、 二人はひとつの怪我もしませんでした。 まるで、羽ぶとんに落ちたように・・・

ポン吉:

あ、ありがとう、こぐくん! うぇーん、ありがとう!

うさこさん:

わーん、ありがとう、こぐくん、命の恩人よ! やっぱり、こぐくんが力持ち、世界一だわ!

こぐくん:

やっぱり、僕、間違っていたよ。 力なんて使わなかったら、力を持っている意味がないし、第一、その力だってなくなってしまうもん。

うさこさん:

ありがとう、ありがとう、お礼のキスよ! ちゅっ! ちゅっ! ちゅっ!

ポン吉:

おいらも、お礼のキス・・ちゅっ! ちゅっ・・あれっ? どうしたの?

こぐくん:

ポン吉は、いいよ! 遠慮する・・!

ポン吉:

あは、あははははっ!

うさこさん:

うふ、うふふふふっ!

こぐくん:

あっはっはっはっ! (ぼきっ!)あれー? いててててっ!

うさこさん:

どうしたの?

ポン吉:

なに?

こぐくん:

どうやらー、骨が折れちゃったみたいだね。 いててててっ!

ナレーション:

いくら力自慢のこぐくんでも、一ヶ月腕を使わないのに二人を受け止めたので、限界を超えてしまって、 折れてしまったのでしょう・・・ それにしても、友達を助けたいと言う、本当に純粋な気持ちは、こうやって奇跡を呼ぶものなのでしょう。

(おしまい)

* やさしい心は、だれもが持っています、でもそれは自分で作ったものではありません。 それは、神さまが全ての人に等しく与えてくださるものです。 しかし、持っていても、使わなかったら、それは持っていないのと同じです。

* そして、例えば、電車の中で自分が座っていて疲れている人を見かけた時、やさしくできなかったとします。 そして、そんなことを繰り返していくうちに、やさしさを使わないことに慣れてしまって、やさしくなれなくなっていくのです。 つまり、やさしさがなくなってしまう。

* 神様に与えられた多くのすばらしいもののうちのひとつ、やさしさ。 みんな、宝の持ち腐れにしないでどんどん使って、心の優しさの筋肉を鍛えていこう。

* これは、お話なので、最後にこぐくんは仲間を助けることができましたが、本当には、そうはうまく行きません。むしろ、日ごろやさしさや力を使っていなければ、いざ、本当に大切な人を助けたい、守りたいときには、できなくなってしまうのです。

* そうならないように、もっている良いものをどんどん使って伸ばしていきましょう。 そうすることが神様によろこばれることです。

第5話 「十戒」

申命記 5章1節~7節

ナレーション:

動物村小学校3年生の国語の時間に「友達」と言う題で作文を書くことになりました。 みんなは「えーっ?いやだなぁ」とか「できないよ!」と言って四苦八苦しました・・

ポン吉:

あー、恥ずかしかった! おいら、もう一生作文なんか読まないからなっ!

うさこさん:

あたしもー、心臓がバクバクして、膝はがくがく、舌はしどろもどろで・・ 目まで真っ赤になったわ!

ポン吉:

それは、もともとでしょ! うさぎなんだから・・

うさこさん:

それにしても、こぐくんの作文、変わってたわねぇ・・

ポン吉:

うん、すっげぇ、変わってた。 だって「僕にはたった一人の友達しかいりません・・」って始めた時には冗談かと思ったよ・・

うさこさん:

ポン吉はなんだっけ? 「僕は友達100人作りたいです」ってそれ、もしかしてこの間の校長先生のお話のパクリ?

ポン吉:

えへへ。 いいものはいいから、どんどん入れないとね・・

うさこさん:

でも、内容がほとんど一緒だったわよ・・!

ポン吉:

まあ、いいからいいから・・ うさ子のだって、ぶっとんでいたぜ・・ 「あたしは世界中の人を友達にしたいです・・」スケールでかすぎだよ!

こぐくん:

ん? 僕、でかすぎかい?

ポン吉:

うわーっ! びっくりしたー! こぐくん、でっかいくせにいつも、突然ぬーっと出てくるから、もう、びっくりするよ!

うさこさん:

そうよ、大きいんだから、もっと遠くから、「おーい、これからそこに行くからねー!」とアナウンスしてから来てよ・・。

こぐくん:

ごめん、ごめん。 何話してたの?

ポン吉:

こぐくんの、あの変な作文のこと!

うさこさん:

だって、だって、意味不明ー。 「一人しか友達しかいらないって」どういうことー? 一人って誰よ? あたし? ポン吉? それとも他のだれか? さあさ、言ってよ! 男らしく!

こぐくん:

こ、困ったなー、う、う、う、

ポン吉:

何ー、うさ子だって? じゃあ、僕は友達じゃないのかよっ!

こぐくん:

いやー、そうじゃなくて・・ あれはね・・

うさこさん:

もうー、じれったいわね! 早くおっしゃいよ! ぜーったい私でしょ? そうでなかったら、もう、ケーキとか作ってあげないから・・ しくしく・・

こぐくん:

おいおい、泣かないでおくれよ・・ あれはね。 僕はなんでも遅いし、ぜんぜん器用じゃないから、 本当の友達を作ろうと思ったら、何人も何人もできなくて、たった一人しかできないって言いたかったんだ・・

ポン吉:

なに言ってんだよー、友達は多いほうがいいじゃないか! この間校長先生だって、 幼稚園から一緒だったお友達だけじゃなくて、なるべくたくさんの人と話したり一緒に勉強したりスポーツをしたりして、 どんどん友達を作ろう、友達100人作ろうって言ってたじゃないか! ね、うさ子さん?

うさこさん:

そうよ、そうよ。 で、自分の周りの子だけじゃなく、日本中の子供たち、それから違う言葉をしゃべったり、 肌の色の違う世界中の子供たちとどんどん仲良しになって、世界中のみんなと友達になろうって、おっしゃってたわよ! それがみんなが平和を作れる一番の近道だって・・

ポン吉:

お前なんて、友達は一人でいいとか言っているけど、一人どころか、一人もいないじゃないか!

うさこさん:

そうよ。 「本当の友達」だなんてかっこつけ過ぎ。 だから友達ができないのよ!

こぐくん:

僕はポン吉も、うさ子も両方とも大事に思っているよ・・

ポン吉:

だから、たった一人なんだろ? お友達。 さ、今ここで決めてくれよ! 僕を取るか・・!

うさこさん:

それとも、私を取るか・・ (わかってるわね、ケーキが食べたいでしょう?ふふふ・・)

ポン吉:

はい、制限時間10秒!

こぐくん:

あー、困った、くまった・・

ポン吉:

このノロマ!

うさこさん:

まったくー、ぐずね!

こぐくん:

でも、そんな意味じゃないんだ・・

ポン吉:

ぶぶーっ! はい、時間切れ! めでたく、こぐくんは友達0(ゼロ)決定でーす!

うさこさん:

そうよ、そんなにエライなら、友達なんていらないんじゃない? さよなら!

こぐくん:

あー、待ってー!

ポン吉:

僕も、ばいQ~!

ナレーション:

こんな風に、仲良し三人組みは、皮肉にも「友達」について作文を書くことによって、ばらばらになってしまったのです。

うさこさん:

まったくーウジウジしちゃって、こぐくん、うざいわねぇー!

ポン吉:

そうだよ! 「たった一人の友達しかいらない?」、友達なんて多いほうがいいじゃんよー! たーくさん友達を作って、便利に使い分ければいいじゃん! スポーツを一緒にする友達、 宿題を写させてもらう友達、ひまつぶしにおしゃべりする友達、他の人の悪口を言って楽しむ友達・・ ほんとに便利だよね・・

うさこさん:

そうそう、便利よねー! どっかドライブ行きたい時のアッシーくん、プレゼントくれる、みつぐくん、 メールでひまつぶす、メル友くん、寒い時に暖めてくれる、上着くん・・ 持つべきは色んな時に役立つ友達よね・・!

ポン吉:

そうそう、色んな友達、たーっくさんの友達・・ そうだ、友達作り競争しようか?

うさこさん:

なに、それ?

ポン吉:

だから、どっちがより多くの友達を作れるのか、競争するのさ・・!

うさこさん:

面白そーねー。やろうやろう! じゃあ、先に100人友達を作る競争、始まり始まりーー!

ナレーション:

うさ子さんも、ポン吉も、死に物狂いで友達を作って行きました。うさこさんは、家がお金持ちなもんですから、 自宅でのパーティに友達をいっぱい呼んで、マイケルジャクソンに歌ってもらったり、自分でケーキを焼いたり、 ケンタッキーフライドチキンを買って来てごちそうしてどんどん友達を作りました。 また、ポン吉は、スポーツが得意ですから、色んなクラブに出席して、奇跡的な大活躍をして友達を作って行きました。 でも、だいたい100人も超特急で作るのは無理がありました・・

ポン吉:

おーっ、うさ子さん。 どうやら、勝利の女神は僕に微笑んだね・・ 見てごらん、この友達計算帳・・ もう、100人も友達ゲットしたぜ・・! 僕の勝ちだ!

うさこさん:

なにをおっしゃい! 私の、フレンズ・ファイルを見てよ、あたしも100人いるわ! でも、ポン吉、ずいぶん強引に友達作ってるみたいね・・

ポン吉:

どきっ! なんだよ! 言いがかりはよせよ!

うさこさん:

私が知らないとでも思ってるの? 私のお父さん、CIAにコネがあるのよ・・ 調べさせてもらったわ・・ 大活躍ね・・野球部で20人、サッカー部で25人、水泳部で20人、テニス部で20人、相撲部で15人・・計100人ね。 でも、きたないんじゃない? 例えば、野球部でホームランうちまくってみんなのヒーロー? 実は相手のピッチャーにマクドナルドおごってインチキのへなへな玉を投げてもらったそうじゃない?

ポン吉:

う、う、うそだー! なんだよ、うさ子だって・・そりゃあ、最初は苦労してクッキーやケーキを自分で作ってたけど、 さすがに友達が50人80人と増えていったら、ぜーんぶお金で買ったものにしたじゃないか! CIAだって?ふん、うさ子さんのともだちの中には、僕のスパイがいるんだぜ・・・!

うさこさん:

別に、どんな風に友達作ったっていいじゃない? ようするに100人作ればいいんでしょ? あ、ちょっと見せてよ、ポン吉の友達計算帳・・あたしが一番上にいるじゃないの! はい、あたしを消して・・ポン吉は99人しか友達がいないので、負けー!

ポン吉:

あー、ひどいな! それなら、うさ子のフレンズ・ファイルから僕の名前も消すぞ! ざまあ見ろ! 99人だっ!

こぐくん:

なに、もめてるの? 仲間割れはみっともないよ!

ポン吉:

なーに、えらそうに! あっ! こぐくんを僕の友達にいれれば・・みごと友達100人ゲットで・・勝てるぞ! ねぇ、こぐくん、僕の友達になって、ここに名前を書いてくれないか?

うさこさん:

ちょ、ちょっとー、だめよ、こぐくんは私のものなんだから、さっ! こぐくん、ここにサインしてちょうだいな。

ポン吉:

さあ、こぐくん!

うさこさん:

ねぇ、こぐくん!

ポン吉:

さあ!

うさこさん:

ねぇ!

こぐくん:

もうー! いい加減にしてよ! そんなノートに名前を書いたからって本当の友達ってわけじゃないよ。 そんなこともわからないのかい? 早く目を覚ましてよ!

ポン吉:

なまいき言うな!

うさこさん:

おおきなお世話よ!

ポン吉:

お前なんか、いらないよ!

うさこさん:

そうよ、こっちでごめんだわ!

こぐくん:

・・・・

ナレーション:

みにくい友達作り競争のため、逆にみんな友達をなくしてしまったのです。 ポン吉は、ホームランなどのインチキの大活躍がばれて、みんなに愛想を尽かされてしまいました。 うさ子さんは、お小遣いの前借に次ぐ前借でお金がとうとうなくなり、パーティが開けなくなったと思ったら、 潮が退くようにあんなにいっぱいいた友達が一人もいなくなりました。

ポン吉:

とうとう、ひとりぼっちになっちゃった・・

うさこさん:

ケンタッキーがあった時はあんなに来てくれたのに・・しくしく

こぐくん:

僕がいるじゃない!

ポン吉:

うわっ! またびっくりした!

うさこさん:

きゃーっ!

こぐくん:

まだ、僕がいるじゃないか、二人とも!

ポン吉:

でも、いまさら、僕なんてさ、こぐくんを友達計算帳からやぶいて捨てたんだよ! それに、ぼくはどうだ・・ いまじゃ「インチキ大王」だよ・・ みんなに軽蔑されてる、最低のやつなんだ・・

うさこさん:

あたしも、今さら友達でーす、なんて言えない・・ こぐくんにあんなひどいこと言っておきながら・・ それにあたし、「友達をお金で買う女」ですって・・ ぐすん・ぐすん・もう、最低ね・・

こぐくん:

二人は、僕にとってどんなことになっても、最高の友達だよ! 二人とも、すごく心が痛んで、本当の友達が分かるようになったじゃないか・・

ポン吉:

でも、こぐくんは、「一人しか本当の友達はいらなんでしょ」?

うさこさん:

じゃあ、あたしは、いいわ。ポン吉を友達にして!

ポン吉:

僕も、いいよ。 たった一人しかなれないなら、僕より、うさ子を選んで・・。

こぐくん:

二人とも、両方とも、僕のたった一人の大事な大事な本当の友達だよ!

ポン吉・うさこさん:

え?

こぐくん:

友達は、数で数えられないって言いたかったんだ・・ 100人いる友達の中の一人、 じゃなくて、一人一人を他の人と比べないで大切に・大事に考えるのが本当の友達じゃないかな? だから、一人の本当の友達は、何人いてもいいんだ。あんまりたくさんは無理だけどね・・ だから、こぐくんの友達は、世界中にたった二人・・そして、それはポン吉とうさ子さんだよ!

ポン吉・うさこさん:

うわーい! やったぁっ!

ナレーション:

友達を何人もっているか、と数にこだわらずに、本当の友達かどうか、 本当にそのお友達のことを大事にするかどうかが大事とわかった3人は、前よりも仲良しに、大切な仲間同士になりました。

(おしまい)

第6話 「東の学者たち」

マタイによる福音書 2章1節~12節

お話の前の質問:

みんな、12月って忙しいね。お勉強だって、たくさん一年の終わりのテストがあって、寝る時間がなくなるほどだよね?それに、クリスマス。クリスマスパーティだって、一つなら楽しいけど、お家のクリスマス、学校のクリスマス、クラブのクリスマス、教会のクリスマス、お友達とのクリスマス、もうー大変。
みんなは、今年何回クリスマスパーティがありますか?数えて見てね・・はい、1回だけの人・・2回の人・・3回の人・・すごいね・・じゃあ、4回以上の人・・何回? え? 7回・・す、すごい・・

じゃあ、今日は一つ国語の問題を出します。
「ぐしゃ」とはどういう意味ですか?

  • ものが落ちた音。「しまった!卵を落とした!ぐちゃ!」とか・・
  • ブランドの名前。「見て見て!あたし、香港でごの ぐしゃのバック、なんと1万9800円で買ったのよ!」
  • 北極に近い海で取れるえびのこと。「今年の冬はあたたかいので、ぐしゃは、あまり取れず、おすし屋さんなどでは、ぐしゃの値段が高くなるでしょう。」
  • おろかな人、ばかな人のこと。「あんなつまらんウソにだまされるなんて、ほんとにぐしゃだな、おまえ。」

ファイナルアンサー?

実は、D. の「おろかな人、ばかな人」が正しい。今日はえらい学者、いろいろ勉強して知っていて頭のいい博士を「賢者」(かしこい者)といいますが、その反対の「愚者」についてお話しします。


ナレーション:

さて、まいどおなじみの動物村にもクリスマスがやって着ましたが、今年はちょっと違うようです。 それと言うのも、普段はおバカなことばかり言っているポン吉、今日はちょっとイメージチェンジしたようなのです・・

うさこさん:

えーっ? こぐくん、6回もクリスマスパーティがあるね? すごいわねぇー!

こぐくん:

うん。 学校のでしょ、学童のでしょ、教会のでしょ、お家のでしょ、それから僕ら3人組のでしょ、 それに・・ それに・・んーと、あれ? 5回だったよ!

ポン吉:

だから、こぐくんは、愚者だって言うんだよ。

こぐくん:

わっ! びっくりした! 急に現れるなよ・・!

うさこさん:

ほーんと、どっから来るのよ! びっくりするわ・・!

こぐくん:

ポン吉、いま ぐしゃって言ったね、なにを踏んだの? この間みたいに犬のウンチ? くさかったなー3日くらい近寄れなかったよ・・

ポン吉:

だーから、お前はぐしゃなんだよ! 意味わからないの?ぐしゃ?

こぐくん:

ぐちゃ?

ポン吉:

ぐしゃだよ、まったく! このぐしゃ!

こぐくん:

えへへ、ありがとう・・ でも、意味わからないや・・ うさこさん、知ってる?

うさこさん:

もちろん、知ってるわよー。 私、ブランドに詳しいもの、ぐしゃって言えばイタリアの最高ファッションのブランド・・ エルメス、トレビ、フェラガモ、サルバトーレ、それから、ぐしゃ。 ほら、香水で有名じゃない・・ 私、ぐしゃのすみれ草の香水、欲しいな・・

ポン吉:

あーバカばっかりだな! それって グッチじゃないの? だから、こぐくんもぐしゃ、うさこさんもぐしゃってんだよ!
もうーイライラするー、ぐしゃは、「おろかな もの」と書いて、愚者と読む、つまりバカな人、おろかな人の意味だよ!

うさこさん:

何よ! ちょっとくらい知ってるからって!

こぐくん:

そうだよ・・ おかしいぞポン吉・・ あれ? ポン吉変わったね?

ポン吉:

わかるかい?

うさこさん:

そうよ、さっきからおかしいと思ってたのよ・・ あーっ!

こぐくん:

あーっ!

うさこさん・こぐくん:

め・が・ね!

ポン吉:

おーっふぉん! おどろいたかね?

うさこさん:

ふーん、すごいけど、あまり似合わないわね。

こぐくん:

でも、なんか、頭よさそうじゃない?

ポン吉:

失礼ですな、じゃあ、君たちは、クリスマスの挨拶は、英語でなんと言う?

うさこさん:

ばかにしないでよ! そのくらい知ってるわよ! Merry Christmas でしょ?

こぐくん:

僕だってそのくらいは知ってる・・ Merry Christmas だよ!

ポン吉:

だから、お二人とも、ぐしゃだっての! 本当は、Sorry Christmas だよ!

うさこさん:

えーっと? Sorry Christmas ? あい・あむ・そーりーの?

こぐくん:

あい・あむ・そーりー、ひげそーりー、今の総理は小泉そーりー

うさこさん:

だまってて! だから、ポン吉にばかにされるのよ! いくらなんでも、ばかにしないでよ! あたしだって、全世界で Merry Christmas がくりすますの挨拶だって知ってるわよ! Merry Christmas は、「クリスマス・おめでとう!」で、 Sorry Christmas じゃ、「クリスマス・ご愁傷様」「クリスマスになって、悲しくて残念ね」って意味になっちゃうじゃない。 そんなの、おかしいわよ!

こぐくん:

それはおかしいよ! まちがってるよ!

ポン吉:

ちっちっち! でもね、それは全世界のおバカな「ぐしゃ」がそう言っているんだよ・・ ちゃんと動物大学歴史科で研究したんだ・・ 三年間もね・・

うさこさん:

よく言うわよ・・ ずっと私たちと動物小学校にいる小学三年生のくせして・・

ポン吉:

とにかく、一体どこがおめでたいんだい? どこがうれしいんだい?

うさこさん:

だって、救い主イエス・キリストさまがお生まれになったんでしょ? そりゃー、おめでたいでしょ?

ポン吉:

そうかな? 考えてもごらんよ、そのイエス・キリストは30年後には、ローマの総督のピラトにつかまちゃって、 十字架にはりつけにされて、しんじゃうんだよ。

うさこさん:

え? まあ、そうだけど・・

ポン吉:

その当時としては、一番悪いことをした人が受ける刑で、死ぬまでに10時間以上かかって、 つらくて苦しくて早く死にたい~って思うほどなんだって・・ そんな死に方をする人が生まれるのが、ほんとにおめでたいかな?

こぐくん:

う~ん、最後には悪いことしてつかまって処刑されるんじゃ、おめでたくないなぁー

うさこさん:

そうだけどーなんか違うような・・

ポン吉:

じゃあ、ちょっと英語のお話を研究したので、うさこさん、ちょっと手伝ってくれない? これ、オーヘンリーの「愚者の贈り物」って言うんだ。

うさこさん:

いいわよ・・ ああ、この女の人のデルの役をすればいいのね・・

ポン吉:

昔、アメリカにデルとジムと言う若くて貧しい夫婦がいました・・

ポン吉:

じゃあ、デル、行ってくるね!

うさこさん:

ジム、今日は早く帰って来てね、クリスマス・イブだもの・・ 二人でお祝いしましょう・・ ごちそうを用意してるわ・・

ポン吉:

わかってるよ・・ ちょっと驚くようなプレゼント、あげるからね・・ お楽しみに!

うさこさん:

ほんとに早く帰って来てよ!

ポン吉:

大丈夫さ! 僕の金時計はいつも正確さ! お父さんの形見のこれは家中で一番の財産だね!

うさこさん:

あーら、私のこのながーい、まっすぐな髪の毛は?

ポン吉:

ごめん、ごめん、それはどんなお金も買えない、本当の宝さ! ちゅ!

うさこさん:

ちゅ! いってらっしゃい・・! うふふ、ちょっと驚くようなプレゼントってなにかしら・・ たのしみ! でも・・、あたしはどうしよう? 一生懸命に貯めたけど、1ドル87セントしかないわ・・ もう、あれしかないわね・・髪は女の命って言うけど、私がジムのためにできることはこれしか・・

ポン吉:

そうです。 デルは、その自慢のながいきらきらの金髪を売ってジムのクリスマスプレゼントを買ってしまったのです。

うさこさん:

大丈夫かしら・・ こんなにショートカットになった私を、ジム、嫌いにならないかしら? でも、遅いわね・・ 心配だわ・・ 事故にでもあったんじゃないかしら・・

ポン吉:

ただいま! あっ! あーっ!

うさこさん:

どうしたの? あ、この髪の毛ね! そうでしょ? きらいにならないでね・・デルは、髪の毛が短くても、あなたが大好きなデルよ・・

ポン吉:

いや、違うよ・・ 短い髪の毛も似合うね、デル。 びっくりしたの理由は、この箱を開ければ分かるよ・・ クリスマスおめでとう、 Merry Christmas!

うさこさん:

わくわく♪ いったい何かしら?・・ あっ!あーっ!

ポン吉:

今度は君がびっくりするばんだね・・ それ、とーっても高かったけど、町に行くたびにティファニーのショーウィンドーの前でデル、 ためいきばかり・・ あのダイヤのついた櫛、ほしいわ・・ でも無理ね・・ 40ドルもするんですもの・・ とか言ってただろ? デルによろこんでもらおうと思って・・ 買っちゃったんだ・・ だけど、髪を短くしたからさぁ・・ おどろいたんだよ・・

うさこさん:

そうなの? ありがとう! ジム! あ、私からのプレゼントよ! Merry Christmas! ジム・・

ポン吉:

ありがとう、デル! なんだろ・・ あっ! あーっ! あーぁ。

うさこさん:

どうしたの? 気に入らないの?

ポン吉:

ふふ、いいんだよ、デル。 ありがとう。 でもね、この金の鎖、高かったろ?

うさこさん:

うん、21ドル、髪の毛売って、貯金も全部つかっちゃった・・

ポン吉:

ありがとう、デル。 でもね、せっかくだけどこの金の鎖をつける金時計、 このくしを買うために売ってしまったんだよ・・ 40ドルで!

うさこさん:

ぐすん。 私たちってばかね・・!

ポン吉:

ああ、おおばかだね!世界中で一番ばかなふたりだ・・ さあ、プレゼントはしばらくはおいておいて・・ ふたりでクリスマスのごちそうをたべよう・・

うさこさん:

うん、わたしたち、おばかさんよね!

ポン吉:

と、まあ、こんな風に終わるから、この二人はばかで、ぐしゃで、あほです。

うさこさん:

えーっ、そんな意味かな? クリスマスだって、絶対 Merry Christmas よ! だって、この話、 知ってるけど、「愚者の贈り物」じゃなくて、「賢者=あたまのいい人の贈り物」でしょ?

ポン吉:

えーっ? そうだったの?

うさこさん:

それにクリスマスだって、神様が最高のプレゼントとして私たち人間に自分の愛する子供をくださったんじゃない? それにイエス様は十字架につけられたけど、それはわたしたちの罪をゆるすためじゃないの? 救う為じゃないの? だから、やっぱり、 Merry Christmas よ!

こぐくん:

というわけで、ファイナルアンサー! 最高のおバカの愚者は、ポン吉でーす!

ポン吉:

がちょーん!

(おしまい)

* とまあ、こんなお話でしたが、三人の博士が行ったのは世界で最初のクリスマス礼拝です。 黄金・乳香・もつやくは博士たちの仕事に一番必要なもので、自分たちの一番大切なものを捧げたのです。 みんなも町では多くのものが Merry ChristmasMerry Christmas と言っていますが、 本当の意味をわかっているのでしょうか? もし、みんながお友達の一人にでもクリスマスの本当の意味を伝えることができたなら、 それは最高のクリスマスプレゼントになるのではないでしょうか?

第7話~第11話へ続く

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