吉井和哉 5th「After The Apples」 2011.11.16
 
 
 前作から早くも約半年後にリリースされた初のミニアルバム。無音という割にはあまりにもやかましい(笑)
「1.無音dB」。”当たり前はもう当たり前じゃないんだ”というフレーズに発表当時の彼の心情がうかがえる。か
き消されていた本心を今こそ解き放とう!というメッセージを感じます。この世がある意味がわからず惑いを
隠せない「2.Next Innovation」はダンサブルなメロディーの中に悲しみが顔を出してる曲。今まで信じていた大
きな何かを失い何を信じて生きていけばいいのかわからない僕らは、確かにプレゼントを持たずにオロオロ
とうろついているサンタクロースみたいなものだよな。まるでこれから「Gメン’75」が始まるんではなかろうか?
(←あくまで個人的感想です(笑))なイントロで始まる「3.母いすゞ」は完全なるヒップホップ。なのに歌われて
る内容はあくまで日本のある港町の風景。どこかヌケているんだけど、根っこの部分はどんな立場の人間より
も強い。それが「日本の母」なのではなかろうか。もし生まれ変われるのなら、また不完全なただの人間に生
まれてきたい。そしてこの生命が絶たれる前に逢えなかった君にもう一度逢いたい。そんな切なる願いが歌
われた「4.ダビデ」は曲全体から光と暗闇が交互に迫ってくるような錯覚を起こす曲。突き抜けるような彼の
シャウトが印象的な「5.バスツアー」。あの世行きのバスに乗った人々は無事天国に着けるのだろうか?そし
て優しく語りかけるように歌われた「6.Born」。まるで空の上からこの世を眺めているような曲だ。もしや?とい
うか、やはりというか、この盤のすべてのトラックは日本じゅうを揺るがしたあの大災害に対する彼からの声
明なのではないかと勘ぐってしまう。当時「がんばろう」とか「絆」とかいう言葉がもてはやされたが、本当はそ
れらが簡単に「言葉」にされてしまうのはちょっと違うんじゃないか。それ以上にもっと深いところで考えてみよ
うよという意図をこの盤には感じてしまうのです。そして、どうしたらいいのかわからない彼の迷いも、見える。
Track No.
1. 無音dB
2. Next Innovation
3. 母いすゞ
4. ダビデ
5. バスツアー
6. Born
 
 
 

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