赤い糸をくわえた美しくはかない女性の印象的な肖像をジャケットに据えた一枚。「1.夢百合草」はこのジャケットを象徴するかのような |
切ないメロディーラインを持つ一曲。愛するべき人だけを見つめるその視線は、日本の古きよき情緒をそのままパッケージしたような、そ |
んな趣さえ感じます。何よりこのタイトルじたいがとてもはかない印象がありますよね。今にも切れそうな糸のように、このアルバムの一曲 |
目として、この曲はそっとたたずんでいます。「2.非因果的連結」は、自分の存在する意味はわからないけど、はっきり言えることは僕は今 |
生きてるってこと・・・そんな科学的には説明のつかない”偶然”をテーマにした曲。人は科学を進歩させることで生活を楽にしてきたけれど |
おそらく人自身を解明することはこの先いくら科学が進んでもできないことだろうな、きっと。「3.春待峠」・・・それは架空の峠。もしかしたら |
ここで歌われている峠とは、淋しさを感じる人の心の中のことなのかもしれない。人の心にいつまでも冬が続くことはない。いつか必ず雪 |
が溶けて春が来るんだよっていうメッセージを放つ楽曲。「4.君の歌うラブソング」はラジオから流れてきたラブソングに、もう別れてしまっ |
た恋人との日々を想い出す男を主人公にした、クリスマスムードたっぷりの楽曲。「5.勇気凛凛」は、かの『関白宣言』のアンサーソング。 |
女性から男性に向けて歌われたものですけれど、この内容のような人間になれたら何だか無敵な気がします(笑)。たとえなれなくても、こ |
ういう人に近づいてゆけるようにがんばっていきたいな。あ、だからこのタイトルなのかあ(笑)。「6.岬まで」は「こういう暮らしがしてみたい |
なあ」と思えるほど自然の中に人が溶け込んでる気がします。やさしいメロディーも手伝って、さださんの歌の温かさが十二分に表現され |
た曲。「7.ミスター・オールディーズ」は場末のライブハウスで歌う昔一世を風靡したシンガーをテーマに歌った楽曲。人は誰でも年老いる。 |
でも上手な歳のとり方をするかしないかで、その将来は大きく変わる気がします。たとえ生活が華やかではなくても、自分の一番大切なも |
のを大事にできるのならば、そういう老人になりたいよね。さださんはこの歌手に自分を重ねて歌ってる。そして自分もこんな歌手になって |
いきたい・・・と。「8.September
Moon」は、9.11テロを題材に人はいつまで傷つけあうのだろうか?というテーマを歌った曲。ある人は人間 |
がいるかぎり争いはなくならないだろうと言う。そうかもしれない。だけどたとえそうであっても人間が争わずに生きていける世界を願う心を |
あきらめたくない。永遠は一瞬の中にある・・・争う世界をあきらめるのも人ならば、その一瞬を求め続けるのもまた人なんだ。「9.瑠璃光」 |
は1200年以上の歴史を誇る”薬師寺”をテーマにした壮大な楽曲。気の遠くなるような長い間この建物は人の栄枯盛衰を見てきた。人から |
してみれば1200年はとてつもなく永い。でも薬師寺からすれば、それもほんの一瞬の出来事なのだろうな。「10.小さな手」は人は生まれた |
時に宝物を手にしているんだ、と歌ったバラード曲。その宝物は生きていくうちにどんどん汚れて小さくなってしまうけれど、生きてる限りゼ |
ロにはならない。”可能性”って生きてれば誰にでもあるんだ、と気づかせてくれる歌。このことを忘れずにいたいし忘れちゃいけないよな。 |