ソロ 12thアルバム
「夢回帰線」

1987年7月25日発売

1. バニアン樹に白い月 〜LAHAINA SUNSET〜     6. 時差(タイムラグ) 〜蒼空に25¢〜
2. 6ヶ月の遅刻 〜マリナ・デル・レイ〜     7. 回転木馬
3. pineapple hill     8. 東京
4. シ バス パラ チリ 〜もしチリに行くなら〜     9. 風に立つライオン
5. 男は大きな河になれ 〜モルダウより〜      
 
 当時多大な負債を抱えていたうえに歌作りに煮詰まっていた彼が、日本から飛び出した旅行先ですらすらと書き上げてしまった
と語る旅行記・・・というよりは、時には幻想的な、そして時には現実的な人の心を描いたオリジナルアルバム・・・なんですが、実は
彼のジャンルの中で唯一この手のテーマで描かれたものはボクにとっては苦手だったりします。やっぱり作り手の苦しみの先にで
きた歌こそが歌であると思うし、さださんの音楽には自分勝手ながらそういう印象を自分自身にも植え付けてしまってあるので(笑)
このアルバムと後に発表される『夢回帰線U』はボクにとってはもっとも苦手なアルバムなのです。だ〜がしかし、中にはとても染み
入ってくる歌があるのもまた事実(←どっちだよ(笑))。「3.pineapple hill」は悲しいくらいに幸せを感じていた彼との暮らしに終止符
を打たなければならなくなった女性の悲しみが綴られています。もしかしたら彼は彼女のために別れを選んだのかもしれない。彼女
が貧しい暮らしから抜け出し、裕福な場所へ嫁いでゆけるようにと・・・。「5.男は大きな河になれ」は彼が映画『次郎物語』の主題歌
として、スメタナの交響詩”モルダウ”に詞をつけ歌い上げた一編。本来人間っていうのはこの歌の詞のように育ち大人になってゆく
のが理想なんだろうな。誰もが悲しみを知って大人になってゆく・・・でも今は大人でさえ大人になりきれていない気がする。今の世
にもっと聴いてもらいたい・・・勝手にそう思っている名曲です。「7.回転木馬」は、離婚した妻の元に残された自分の子供との再会を
許されたわずかな時を過ごす男の表情を切り取った一編。世の中簡単に離婚だ、再婚だ、と報じられていますが、やはり一度した
結婚ってそう簡単に破れるものじゃないし、破ってはいけないものだと思います。ましてや子供がいればなおさらね。だって生まれも
育ちも違う誰かと契りを交わすって、そんな安易なものじゃないんだからね。しかし明るい歌だが悲しい歌だ。「8.東京」は空港から
飛び立った飛行機の上から見た街の情景を自分の心と重ね合わせた作品。”孤独で 切なくて 虚しくて 冷たいくせに優しくて弱い 思
えばみな僕の心が町に写っていただけ”・・・なんて素敵でなんて正直な表現なんだろう。「9.風に立つライオン」はある国の僻地医療
に従事する医師が東京の恋人に向けて綴った手紙の内容をそのままメロディーに乗せた名曲中の名曲。かなり当時としては実験的
な歌なのでしょうけど、歌われていることは大人としてではなく、人間として最も生きる上で大事にしなきゃならないことなんですよね。
う〜む、苦手だと書いたわりに、この盤についてここまで文章が書けたってことは・・・もしかしてかなり好きになったんじゃない?(笑)

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