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「夜はいろいろな顔を持っている。その顔をひとつひとつのぞいていく男がいる」
「その名をミッドナイト」
こんなくだりではじまる痛快活劇短編集! *中でもとくにボクの心に残ったエピソードには印がかぶせてあります。
真夜中しか客を乗せないタクシードライバー三戸真也。 *「これから読む」という方のためにある程度ストーリーをぼかしていますが、
今夜はどんな夜の顔を覗くのか。 わかってしまったらごめんなさい。
 
ACT.1
 真夜中に検問を受けたミッドナイトは、警察の捜している赤いタータンチェックの
セーターの子どもを海辺の公園で見つけるが・・・。初回からチキチキマシン猛レ
ース状態!そして彼の知られざる過去が・・・。
ACT.2
 早朝、空港にいる会社の社長から、重要書類を40分で届けろと命じられた研修
社員の日南田は、ミッドナイトをつかまえて車に乗り込むが、急病の息子を抱えた
母親を見つけ・・・。こんなおいしい話があるかーーーー!!!!(笑)
ACT.3
 タクシーにはねられたヤマネコが、行きつけのラーメン屋に逃げ込んだ。手当て
されたネコはラーメン屋のマスコットとして可愛がられたが・・・。野生に返してやれ
とうながすミッドナイトに、情の移ったラーメン屋の親父はネコをかばうが・・・。
ACT.4
 十五年前に自分の部屋に盗みに入ったドロボウから、あの時のお礼にと大金を
受け取った土田だが、実はその直前にある事件が起きていた・・・。まじめに一生
懸命生きてれば、きっといいことがあるよ、ということか。ミッドナイトのちゃっかり
した料金回収システムもおもしろい。
ACT.5
 自称クラブのチーママをのせたミッドナイトは、彼女が十七歳のわりとしつけの
うるさいお嬢様であることを瞬時に見抜いた。彼女は、盛り場で自分の父親とば
ったり出会ってしまったため、逃げてきたのだというが・・・。わずか数ページの中
で二転三転する、痛快ドタバタ劇。
ACT.6
 ミッドナイトは国鉄の駅前で乗せた少年に、信越線の信濃野方駅に目の前を
走っている列車より早く到着してくれと要求された。その列車には彼の母親が乗
っており・・・。この回に限って、話が支離滅裂に感じたのはボクだけだろうか。何
か腑に落ちない・・・。
ACT.7
 ガラの悪い不良少年を乗せたミッドナイトは、初乗料金の距離しか走らされず、
しかも50円踏み倒された。ある建物に入っていった少年が気になったミッドナイト
は後をつけるが・・・。これもちょっとページ的にも無理があるハナシかな・・・!?
ACT.8
 ミッドナイトの目の前を一台の車がヨレヨレ運転で通り過ぎていき、やがて事故
った。ミッドナイトが酔っ払いだと思った運転手は、実は胸を撃たれた刑事だった。
刑事は目の前を走るトレーラーを追いかけてくれとミッドナイトに頼むが・・・。
ちょこっとアトムも友情出演(笑)
ACT.9
 「ワセダ大学の裏通りで飛び出してきたおばあさんをはねたが、車から降りてみ
ると、カゲも形も消えちまった・・・」。こんなウワサ話の飛び交う中、ミッドナイトは
ウワサの場所で、ある奇っ怪な老婆を乗せるが・・・。人の命なんて、かんじんな
ときにはあっけないもんなのだろうか。
ACT.10
 ミッドナイトは、かつて自分のミスで植物状態にしてしまったマリの入院する病院
で、「彼女は脳死だ」と診断された。そこで彼は、金さえ積めばどんな病気でも治し
てくれるという、あの医者のところへ彼女を連れて行くのだが・・・。世界一の天才
モグリ医ブラックジャックと、モグリの天才タクシードライバーミッドナイトとの初顔
合わせ。ふたりともなんか似てるなあ。
ACT.11
 「金太郎」という名の父親をさがしに南の孤島から来た外国人ロ・ブローを乗せ
たミッドナイトは、彼が日本に来てヒドイ目に遭ったことを聞き、気の毒に思い、同
じ名前のいきつけのラーメン屋のオヤジに「1時間ほどオヤジになってやってくれ」
と頼むが・・・。こんな偶然もあっていいよね。
ACT.12
 都心では不景気でなかなか客を見つけられないミッドナイトは、千葉の海岸の
あたりを流していた。そこで真夜中にもかかわらず一人で遊んでいる不自然な
少年に声をかけたミッドナイトだが・・・。悲劇であり、背筋も凍るおっかないハナ
シだ・・・。ぜひご一読を・・・。

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