『 巨乳学園 』



「依然として変化はありません」

 モニターを眺めながら日向教授は言った。

「いままでのデータによりますと、そろそろ表れてもいい頃ですが、変化はないようです。

依然としてパチニ放射は見られません」

 真田はちらりと日向教授を見た。

 パチニ放射――。

 それは、パチニ小体に刺激を与える周波数域の波のことである。

 性感帯にはパチニ小体と呼ばれる性感の受容感覚器官が分布しており、二百ヘルツ前後

の刺激に反応することがわかっている。パチニ周波とは、そのパチニ小体に刺激を与える

二百ヘルツ前後の周波のことだった。

「人間の手がある種のマイクロウェーブを放っているのはたしかですが、二百ヘルツとい

う周波数域を発しているとなると――」

「考えにくいということですか」

 真田の言葉に日向教授はうなずいた。

「実験が終了するまではなんとも言えませんが、様々な要素が複合してあのような異常な

熱反応が表れたと考えたほうが――」

「わたしも一度はそう考えました。ですが、それにしてはあまりにも頻繁に起こりすぎま

す」

「たしかに、いただいたデータには驚くべき数値が記録されておりました。毎回快感指数

が二七〇から二九〇というのは、さすが家元を継がれる方、まことにすばらしい数値です。

しかし、それは性感が開発されたと考えれば説明のつくことではないかと思えるのです。

お気持ちはわかりますが、人間の手から発するというのは、やはり――」

「変化が表れました」

 助手の叫びが日向教授の言葉を打ち破った。

「熱反応です。少年の手のひら全体に熱反応が起こっています」

「熱反応だと?」

「はい。パチニ放射も出ています」

「たしかか」

「間違いありません。両手から放射されています」

「両手から」

 日向教授は周波数探知機を見た。

 たしかに、二百ヘルツ前後でグラフに反応が表れている。

「七瀬の反応はどうだ」

「依然として変化はありません」

「あまりにもパチニ放射が微弱すぎて反応しないのか」

「そうではないでしょう」

 後ろから真田が静かに言い放った。

「放射が始まったからといってすぐたちどころに効果が表れるというわけではありますま

い。セックスというものは時間がかかるのです。でも、それももうすぐでしょう」

 真田の目は、強い確信の光に輝いていた。

(以下、つづく)


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