『 巨乳学園 』



 七月に入って、ようやく憂鬱な期末試験が終わった頃のことだった。

 別館の二階の部屋でシャーペンをくわえ、ぼうっと外を眺めているとドアを叩く音がし

た。

 開けると、真田が立っていた。

「大お師匠様がお呼びです」

「じいさんが」

「はい。外に車が用意してございます」

「どこか出掛けるの」

「はい。支度はもう済ませてございます」

「どこに行くの」

「それは行けばわかります」

 真田は先に階段を下りだした。

 夢彦もあとにつづいた。

 廊下を渡っているところでゆいに会った。

「あれ、どこか行くの」

「らしいよ」

「どこ」

「知らない。行けばわかるって」

「ねえ、真田さん、わたしもついていったらだめ?」

「大お師匠様にお尋ねしなければ」

「おじいちゃんが呼んだの?」

 真田はうなずいた。

「それじゃあ、しかたないね。夢ちゃんがんばってきてね」

 ゆいは歩いていった。

 なにをがんばるのだろうと夢彦は思った。

 がんばることなど、なにもないのに。

 玄関の前には、時価二千万円の国産の最高級車アフロディアが停まっていた。

 漆黒の艶が夏の陽光を受けて輝いていた。

 月彦老人はすでにシートにすわって待っていた。

「どうぞ」

 真田がドアを開けた。

 夢彦は月彦老人の隣にすわった。

 ドアを閉め、真田は前の座席に乗り込んだ。

 アフロディアはすべるように動きだした。

「体の調子はよいか」

 しばらく進むと、月彦老人は突然尋ねた。

「うん」

「そうか、それならばよい」

 それっきり月彦老人は黙った。

 夢彦はずっと車窓を眺めていた。

(以下、つづく)


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