ずいぶんと積極的になったなと夢彦は思った。 いっしょに歩いているときに体をこすりつけてくるなんてことは全然しなかったのに、 自分から腕をつまかえてきたし。女の子って、あれだけでこんなに変わるものなのだろう か。男はそんなに変わらないような気もするけど。それとも、変わっているのに気づいて いないだけなんだろうか。 夢彦はプールサイドに腰掛けて、反対側のプールサイドにいるゆり子を眺めていた。 目の覚めるような青色のスクール水着が、みごとに盛り上がっていた。 水着からあふれださんばかりに豊かにふくらんでいた。 ゆり子は足をばたばたさせながら水と戯れていたが、ふいに夢彦の視線に気づき、小さ く手を振った。 夢彦は微笑み返した。 「やっぱでかいよな」 男の声が聞こえてきた。 「すげえ胸してるよな」 「ああ。ほんとボインちゃんって感じだよな」 「でも、水原先生もでけえよな」 「たしかにな」 「あれも相当なボインだぜ」 水原法子先生はプールサイドに腰掛けてきた。 明るい水色のワンピースの水着が、まるく盛り上がっていた。 ウエストからのくびれが大人らしい官能性を解き放っていた。 夢彦は、はじめて水原先生会ったときのことを思い出した。 あのとき顔に受けたやわらかい弾力――。 そして、Y字の深い谷間――。 すべては遠い過去のように思われた。 「それじゃあ、最後ひとりラスト五十メートルを泳いで。途中でズルしたら放課後に残っ て五百メートル泳いでもらいます」 うげえと声があがった。 そんなのないよ。 「だめです。水谷先生からのお達しです。くれぐれもズルをしないように。さあ、みんな 入った入った」 不満の声をあげながら次々と水着がプールに入っていった。 元気な男たちは水しぶきをあげてクロールで泳いでいった。 ふいに背中にむにゅりと心地よい感触が走った。 まるい突起が双つ――乳首であった。 「さっき見ていたでしょう」 ゆり子だった。 「気になる?」 「なるよ」 ゆり子は微笑んだ。 「二人きりだったらいいのにね」 「そうだね」 「ほんとうに、近いうちに南沙紀かどこかに泳ぎに行こうね」 「うん」 「なにしゃべってるの、早く泳ぎなさい」 水原先生だった。 夢彦はゆり子のあとにつづいて泳ぎだした。 ほんとうに、二人きりだったらいいのになと夢彦は思った。 そうしたらいますぐにもあの水着のなかに手を伸ばしてあのやわらかいふくらみを揉み しだいてやるのに……そしてあの濡れた水着の食い込みのなかに律動を打ち込んでやるの に……。 二十五メートル泳いで夢彦はプールをあがった。 そのままなにくわぬ顔でタオルを手にしたとたん、 「鏡君!」 水原先生が叫んだ。 「ズルした人は放課後っていうの、聞こえなかった」 「え?」 夢彦は自分の犯したミスに気づいた。 五十メートル泳ぐべきだったのを、二十五メートルですませてしまったのだ。 ゆり子のことを考えていて完全に忘れていた。 「ズルしようったってそうはいかないわよ」 「ズルだなんて違うんです、少しぼけてたんです」 「言い訳はだめよ、ズルしようとしたんだから」 「いますぐ泳ぎますから」 「だめ、おしおきよ。放課後に来なさい」 「そんな、先生」 「いいわね」 水原先生はぴしゃりと言い放った。