『 巨乳学園 』



 悦子は二階の自分の部屋で、ベッドに寝ころんでいた。

 天井の明かりを眺めながら、そうして何時間も時間が過ぎていた。

 時計はすでに十時半を回っていた。

 あれから二人は五回もつづけてしたのだった。

 そのたびに二人ともオーガズムに達した。

 二人とも歓喜に頬が紅潮し、耳まで赤くなっていた。

 ほとぼりが冷めるまでの間、二人は待たなければならなかった。

 その間、隆彦は夢彦と別れるように説得した。

 それは、悦子にはつらいことだった。

 昨日まで好きだった夢彦に別れの言葉を突きつけなければならないのかと思うと、気が

病んだ。

 だが、どうにもならないことだった。

 隆彦に好きだ好きだと言われて抱かれているうちに、そうするしかなくなってしまった

のだ。

 悦子は隆彦に付き添われて夢彦に別れの言葉を言いに新体操部の部室まで行った。

 だが、すでに部の練習は終わっていた。

 夢彦の姿はなかった。

 二人はしかたなく学校を出た。

 別れ際に悦子は夢彦に電話をかけるように約束させられた。

 おれ、おまえのこと信用しているからな。

 絶対かけろよ。

 隆彦はつらそうな顔をしている悦子にキスをしてくれたが、ひとりになると、そのキス

もさびしい以外のなにものでもなかった。

 どうしてこんなふうになってしまったのだろうと悦子は思ったが、わからなかった。

 ただ、そうなったのだとしか答えることができなかった。

 悦子はため息をついて寝返りをうった。

 夢彦のことを思い浮かべた。

 先輩と口のなかで言ってみた。

 だが、声にはならなかった。

 どうしようもない悲しみだけがあふれ、悦子は涙を流した。

 枕に顔を伏せて悦子は泣いた。

 ふいに、枕元の受話器が鳴った。

 悦子は涙で濡れたまま顔をあげた。

《悦子? おれだよ》

 隆彦だった。

《もう言ったか》

「う、うん……」

《まだなんだろう? ちゃんと言えよ。約束なんだから》

「でも、隆ちゃん、つらいよ」

《おれだってつらいさ。もしおまえが言わなかったらって思ったら、おれ、なにもできな

いよ。でも、おれ、おまえ信じているから任せたんだ》

「でも」

《がんばれよ、悦子。一言ですむんだから。それでももしあいつが来たら、おれがぶっと

ばしてやるよ》

「うん……」

《じゃあな、悦子。おれ、もう寝るから。おまえのこと信じているからな》

 電話は切れた。

 だが、悦子は受話器を戻さず、持ったままでいた。

(以下、つづく)


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