『 巨乳学園 』



 夕暮れが広がっていた。

 美しい、みごとな夕焼けだった。

 細い茜色の雲がいくつも連なり、遠くまで伸びていた。

 そして、その西の彼方は、赤紫色に染まりはじめていた。

 その夕焼けの下を、悦子と夢彦の二人は歩いていた。

 悦子は夢彦にぴったりと体を寄せていた。

 悦子は幸せそうだった。

 頬には明るい満足の笑みがたっぷりと浮かんでいた。

 あれから、悦子はつづけて三回も夢彦の体を求めてきたのだった。

 そして、そのたびにオーガズムに達した。

 二人は汗をいっぱいにかいて、シャワーを浴びなければならないほどだった。

 悦子と夢彦の二人はだれもいない新体操部のシャワー室で再び交わり、悦子はオーガズ

ムに達した。

 だが、夢彦は達しなかった。

 結局六回やって六回とも白い快楽の証は飛びださなかった。

 夢彦がイクよりもはるか前に悦子がイッてしまうのだ。

 結局、悦子とは夢彦はオーガズムは一度も味わえなかった。

「きれいですね」

 西の空を見上げて悦子は言った。

「わたし、空が好きなんです。日曜の暇なときになんにもしないでぼうっとしていると、

なんだか幸せになれちゃうんです。先輩はそんなことありません?」

「おれは見ていると寝ちゃうほうだから」

 悦子はくすっと笑った。

「わたし、青空が好きなんです。夕焼けも好きなんですけど、青空って、すっごく気持ち

よくて、見ているだけでふわあって体が浮かんでいっちゃうような感じになっちゃうんで

す。ほんと気持ちいいんです」

「じゃあ、今度おれもやってみるかな」

「寝たらだめですよ」

「そのときは電話で起こしてね」

 悦子はくすっと笑った。

 二人は、小町通りと花園通りが交錯するスクランブル交差点まで来ていた。

 そこで二人はお別れだった。

 信号は青になっていたが、悦子は渡らずに夢彦のほうを向いて立ち止まった。

「先輩」

 と悦子は言った。

「あの……」

「なに」

「また、明日もいいですか?」

 夢彦は微笑んだ。

「いいよ。でも、いつもそればかり考えてちゃだめだよ。勉強しなきゃいけないんだから」

「はい」

 悦子は明るい表情を浮かべて大きくうなずいた。

「先輩もお勉強のほうがんばってくださいね」

 夢彦はうなずいた。

 悦子は大きく手を振ると、点滅している信号を走っていった。

 夢彦は手を振りおわると、自分の歩くほうを向いて横断歩道を渡りだそうとした。

 だが、そのときにはすでに信号は赤に変わってしまっていた。

(以下、つづく)


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