『 巨乳学園 』



 昼休みだった。

 夢彦は久々に話をしていた。

 小学校時代の友達だった室町俊樹とである。

 二人は昨夜あったテレビ番組のけちをつけて笑い合っていた。

 特に俊樹は、さんざん司会者をだしにしてはからかいまくっていた。

 そのたびに夢彦は笑っていたが、合間合間にちらりとゆり子を伺っていた。

 ゆり子は遠くのほうで友達と静かに話をしていた。

 なんの話かはわからなかったが、髪を何度も自分の指でつまんでは弄んでいた。

「気になるのか?」

「え?」

 ふいに俊樹は声を落としてきた。

「いや、何度も見てるからよ」

「べつにそんなことはないけど」

「それならいいんだけどな。この間、ゆり子ちゃんと二人で話をしたんだよ。おまえのこ

とを話したら結構楽しそうに聞いていたよ。だから――」

 夢彦はうつむいた。

 楽しそうに聞いていただって?

 うそだ。

 もしそうだとしても、友達として楽しく聞いていただけだ。

 でも……。

「よかったらおれが口を利いてやっても……」

「先輩」

 元気な声が入口で響いた。

 ショートヘアの二年生が立っていた。

 ゆり子がさっと入口に首う向けた。

「悦子ちゃん」

 三年D組の教室の入口に立っていたのは、悦子だった。

 夢彦はすまんと俊樹に言って入口に駆けていった。

「どうしたの」

 夢彦は廊下に出るなり尋ねた。

「いえ、なんでもないんですけど、先輩の顔を見たくなっちゃって」

 夢彦は思わず微笑んだ。

 悦子は表現がストレートでかわいい。

 とっても素直だ。

 もちろん、対する人にもよるが、明るく自分を積極的に押し出そうとする。

「あの、少しお話しません?」

「構わないけど」

 悦子は入口からにょきっと顔を出している俊樹に気づいた。

「おまえ、なにやってんだよ」

「へへへ、どうも。こんにちは」

 と俊樹は挨拶した。

「いつも夢彦がお世話になっております」

「だれがお世話だ」

「まあ、細かいことはいいじゃないか」

「あの……お友達ですか」

「うん。俊樹っていうんだ。サッカー部のキャプテンやってるんだけど、知ってる?」

「知ってます。わたしの友達で、すっごく憧れている子がいるんです」

「俊樹はその子のこと知ってるの?」

「たぶん知らないと思います。わたしと同じで話したことがないって言ってましたから。

その子、すっごく元気で強気なんですけど、男の子のことになるとすっごく弱気なんです

」

「内弁慶じゃなくて男弁慶だな」

 夢彦はちょっと待っててねと言って俊樹のほうに歩いていった。

「俊樹、ちょっとあの子と話してくるよ。せっかくいい感じで話してたとこだったんだけ

ど」

「いいってことよ。男は女に勝てぬっていうからな。かわいい彼女じゃないか。いつつく

ったんだ」

「うん、ちょっとな」

 俊樹は夢彦の肩をつかんで、にやりと笑った。

「あとでじっくり話は聞かせてもらうぜ」

「ああ、いいよ」

 夢彦は悦子の肩を叩くと、廊下を歩いていった。

 それを、教室のなかからずっとゆり子は見ていた。

(以下、つづく)


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