『 巨乳学園 』



 第二体育館に出掛けるのは久しぶりのことだった。郁子に呼ばれて以来、実に三週間ぶ

りのことだった。

 シャトルを打つ音、ピン球のはねる音、スポーツシューズが体育館の床を駆け回る音−

−そういった部活の音のなかを抜けて、夢彦はひとり階段を上がっていった。

 掛け声の聞こえる女子レスリング部の前を通り抜けて、夢彦は倉庫の前に立った。

 それほど大きい倉庫ではない。

 扉が少しだけ開いていて、なかが覗いていた。

 夢彦は入口に立ってみた。

 人の気配はまるでしない。

「だれかいるの?」

 声を出してみたが、返事さえもしない。

 夢彦は奥に入ってみた。

 二、三歩歩いたとたん、後ろで扉が閉まった。

 部屋が真っ暗になり、なにも見えなくなった。

 ことりと物音がした。

 そのすぐあと、ふいに、背中にやわらかいものが押しつけられた。

 双つのまるいものがこすりつけられ、背中をくすぐった。

 乳房だった。

 それも、かなりふくよかな乳房だった。

 Dカップは確実にありそうな乳房だった。

「先輩、好きです……」

 耳のすぐ後ろで女の子の声が囁いた。

 両手を夢彦の胸に回し、抱きしめる腕に力を入れた。

 ぎゅうっとふくよかな胸が押しつけられた。

 乳首が強くこすりつけられた。

「あの、君は……」

「永井悦子です」

 夢彦ははっとした。

 数日前に真紀先生が話していたことを思い出したのだ。

 九十一・三というバストの数字が脳裏に浮かび上がった。

 あのボインの子だ。

 女の子はぎゅうっと腕に力をこめてきた。

 乳首が強くこすりつけられ、Tシャツ越しに背中をくすぐった。

 でかい、と夢彦は思った。

 なんてでかいんだ。

 背中越しでもその豊かなふくらみ、瑞々しい張りがはっきりとわかる。

「先輩、抱いてください……」

 女の子はぎゅうっと抱きついてきた。

 張り詰めた豊かな乳房が背中にむっちりと押しつけられた。

 夢彦はたまらず振り返った。

 いきなり背中を抱きよせ、乳房に顔を押しつけた。

「アッ……先輩……」

 吐息がもれ、暗闇のなかで瞳が輝いた。

 女の子は夢彦に乳房を押しつけてきた。

「おっきい胸してるんだね。どのくらいあるの」

「九十……一センチです」

「一ミリ足りなくない?」

「い、いやだ……」

 女の子は恥ずかしがって声をあげた。

「ブラのサイズ、教えてもらえる?」

「でも、恥ずかしい……」

「恥ずかしいのなら、当ててあげようか」

「え?」

「Fカップだろう」

「そ、そんなにありません」

 女の子は恥ずかしがって身をよじった。

「ほんとうにないの」

「い、いえ」

「あるんだろう」

「は、はい」

「ちょっと電気つけてくれるかな」

「え?」

「このままじゃ、お互い、顔が見えないだろう?」

 女の子は腕を伸ばしてスイッチに触れた。

 天井が瞬き、白銀色の蛍光灯が倉庫のなかを照らしだした。

 ショートヘアの女の子だった。

 額の真ん中より左よりで左右に前髪をわけていた。

 マッシュルーム形に近い髪形で、水原先生によく似ていた。

 目は大きかった。

 はっきりした目鼻だちをしていた。

 目の覚めるような鮮明なレオタードを着ていて、その胸が大きく隆起し豊かに迫り出し

ていた。

 そしてレオタードの裾からは、色艶のいいピチピチとした太腿が伸びていた。

 一目見て、かわいい、と夢彦は思った。

 こんなかわいい子が自分をずっと好きだっただなんて、にわかには信じられなかった。

 悦子のようなタイプの子は源氏市にもいたが、夢彦はそういうタイプの子には見向きも

されないのがふつうだったからだ。

 夢彦はまじまじと、文字通り頭から爪先まで女の子を見下ろし、逆に爪先から頭まで見

上げた。

 なんてすばらしい体をしているんだろううと夢彦は思った。

 これで中学二年生だなんて、とても信じられない。

 源氏市だったら、大人でもこんなすばらしいグラマーな女の子なんかいないや。

 夢彦があまりにも見つめるので、 悦子は頬を染めてうつむいた。

「わたし、おっぱい大きすぎるんです」

 と悦子は言った。

「これくらい大きいほうがいいよ」

「でも、みんなからかうんです」

「悦子ちゃんのおっぱいが凄いからだよ」

 悦子はゆっくりと顔をあげた。

「先輩は、胸の大きな女の子は好きですか?」

「大好きだよ」

「それじゃ、あの……」

 と悦子は口ごもった。

「わたしと……」

「なに?」

「付き合ってください」

 悦子はずいと近寄った。

「お願いです。わたし、なんでもします。先輩が言うことならなんでも聞きます。だから

……」

 悦子の目がきらりと光った。

 涙があふれそうになった。

「ほんとうになんでも聞くの?」

 悦子はうなずいた。

「じゃあ、おっぱい見せてくれる?」

 夢彦は悦子の目を覗き込んだ。

 夢彦はこくりとうなずいた。

(以下、つづく)


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