『 巨乳学園 』



 ゴールデン・ウィークが明けた朝――。

 夢彦はずいぶんと疲れ切った顔をしていた。

 七日間、それこそ朝から晩までずっとセックスの勉強をしていたのだから、疲れて当た

り前というものである。

 そういうわけで、夢彦は登校するなり朝っぱらから机につっぷして寝ていた。

「おはよう」

 浅い眠りのなかをうつらうつらしていた夢彦は顔をあげた。

 愛嬌のある大きな瞳と、かわいらしいほくろが覗いていた。

 ゆり子だった。

「おはよう。なにしてるの」

「うん、ちょっと」

「どうしたの、その顔?」

 夢彦の顔を見てゆり子は尋ねた。

「目の下に隈なんかつくっちゃって」

「う、うん、ちょっと」

 と夢彦は返事を濁した。

「どうせやらしいことでもやってたんじゃねえのか」

 ぶっきらぼうな声が飛び込んだ。

 嶋田アキラだった。

「やっこさん、なにかの家元の孫だからな。どうせ一週間、ズコズコやりまくってたんだ

ろうよ」

 ゆり子は眉をしかめていやそうな顔をした。

「おまえだって、そんなやつの近くにいると、そのうちバコバコされるぜ」

「鏡君はそんな人じゃないわよ」

「へん、どうしたもんかな。この前だって、自分でスケベだって言ってたしな。なんとい

っても、どさくさまぎれにしっかりとおまえの胸をもみもみしていたやつだからな。どこ

でなにやってんのだかわかったもんじゃねえや」

「あんたといっしょにしないでよ」

「おれと鏡がいっしょだって? ばか言うな。こんなスケベ野郎といっしょにされたんじ

ゃ、たまったもんじゃねえや」

「スケベ野郎はあんたのほうじゃないの」

「おれがスケベ野郎だって? いったいどこがスケベだっていうんだ」

「この間さわったくせに」

「おまえもわからんやつだな。あれは挨拶だって言ったろう。それとも、このごろ挨拶し

てもらってねえんで怒ってんのか」

「だれが」

「してほしいんなら、いつでも挨拶してやるぜ」

 嶋田はすっと近づいた。

 ゆり子はさっと逃げ、夢彦の腕をつかんだ。

 嶋田はにやりと笑った。

「なるほど、そういうことか」

「なにがよ」

「なにがだって?」

 嶋田はにやにやといやらしい笑いを浮かべた。

「おまえ、いったいだれの腕をつかんでんだよ」

 ゆり子ははっとした。

 知らぬうちに夢彦の腕をつかんでいる。

 ゆり子は慌ててぱっと手を離したが、嶋田の目には十分すぎるほど映っていた。

「知らなかったぜ。おまえがそんなスケベ野郎を好きだったとはな」

「そ、そんなんじゃないわよ」

「ほんとかよ、腕つかんどいてよく言うぜ」

「ほんとよ、鏡君はただの友達よ」

 とたんに嶋田はげらげらと大声で笑いだした。

「おい、聞いたか、夢吉、おまえふられたぞ」

 嶋田はひとりげらげらと笑いつづけた。

 夢彦は静かに席を立つと教室を出ていった。

(以下、つづく)


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