「はじめてじゃないでしょう」 みどりは起き上がると、いたずらっぽい微笑みを浮かべた。 「もう童貞は卒業しちゃったんでしょう?」 「え?」 「だめよ、とぼけても。キスのときもはじめてって感じじゃなかったし、前戯も上手だっ たし、挿入してからも慌てていなかったし。わたしの前にだれか教えてくれた先生がいた みたいね。だれに教えてもらったの」 「だれって」 「学校の先生?」 夢彦はぎくりとした。 みどりはくすっと笑った。 「ほんとはね、大お師匠様から鏡君の筆下ろしを頼まれていたの。でも、必要なかったみ たいね。体が女の人を覚えているもの。いったい、どのくらいの子と寝たの」 「どのくらいって」 「二人? 三人? 正直に答えて。これから教えていくのに必要なんだから」 「四人」 「さすがお孫様、ずいぶんと手が早いのね。何回ぐらいしたの」 「わかんない」 「十回以上はしてるでしょう」 「うん……」 「それとも、もう数え切れないほどしたの? かわいい顔してエッチなんだから」 みどりは夢彦の額を軽く小突いてみせた。 「セックスはよかったわよ。おっぱいをさわるのもよかったし――なぜだか知らないけど 、凄く感じちゃったわ。おちんちんもとっても気持ちよかったし――点数にしてだいたい 九十点ぐらいかしら。最後にわたしの足を折り曲げて突いてくれたら百点満点だったんだ けどね。はじめての先生には教わらなかった?」 夢彦はうなずいた。 「フィニッシュのときには相手の尻を抱えて引き寄せ、相手の足を閉じて折り曲げ下半身 を密着させて、腰を振動させるように素早く直進運動を行う。こうすると、子宮口を突く ことができる。そうどこかに書いてなかった?」 「うん……」 「部屋に帰ってから、『色道の書 《技》篇』の体動の章を読み返してごらんなさい。ち ゃんと書いてあるから。やみくもにピストン運動をしても、ただ腰を痛めちゃうだけなん だから。わかった?」 夢彦はうなずいた。 それから二人はシャワーを浴びた。 ローブをまとい、膝を突き合わせて正座すると、はじめのときのように礼をした。 「今日はぐっすりと眠るのよ。また明日があるんだから」 明日だって? 夢彦はみどりの顔を見た。 みどりは意味ありげに微笑むと、部屋を出ていった。