『 巨乳学園 』



 人のいない薄暗い図書室で、弥生はカウンターにすわって本を読んでいた。

 頬杖をついて何度も頁をめくっていたが、あまり熱心に見ているようではなかった。

 弥生は時計を見てふうとため息をついた。

 もしかしたら来てくれるかもしれない、会えるかもしれないと思ってずっと足を運んで

いたのだが、身体測定のあと一週間がすぎようというのに夢彦には会えなかった。D組の

教室に行けば彼に会えること、そして恐らくそのときに話をすれば願いが叶うだろうこと

もわかっていたが、内気な弥生にはそこまで自分から積極的に働きかける勇気がなかった。

 ことりと音がしたような気がして、弥生は首を向けた。

 薄暗い闇のなかからはだれも現れなかった。

 弥生はまた時計を見た。

 五時〇五分だった。

 あと半時間もしないうちに、閉館の時間が来る。

 そうなれば、また一日が終わる。

 弥生は本を閉じて、カウンターを出た。

 本棚の前に立つと、背を伸ばして棚に本を戻そうとした。

 だが、高いところにあるのでなかなか入らない。

 弥生は爪先立ちになって、やっとこさの思いで本を戻した。

 そのときだった。

 安心したその瞬間、後ろから二本の手が胸に回り込み、セーラー服越しに乳房のふくら

みをつかんだ。

 ぎゅうっ。

 もみっ、もみっもみっ。

 おっぱいを真ん中に寄せ、十本の指を食い込ませた。

「きゃんっ」

 弥生は体をくねらせた。

 指はさらにもみもみと揉みしだいた。

 弥生は声をあげて悶えた。

 もみもみ、もみもみ。

 手はますます弥生の胸を揉みしだいてきた。

 弥生は身悶えした。

 声をあげ、体を振ってなんとか手から逃れた。

 そして、振り返った。

「うふふ、ほんと敏感なおっぱいね」

 ゆり子によく似た顔だちの女の子が立っていた。

 髪形もまったく同じだった。

 ただ、ゆり子ならあるはずのほくろが、唇の左上にも、顔のどこにもなかった。

 ゆり子の双子の姉、るり子だった。

「るり子……」

 一瞬悦びに輝いた瞳は、瞬時にして暗く沈んだ。

「どうしたの、元気のない顔して」

「う、うん……」

「いつもだったらもっとうれしそうな顔するのに、どうしたのよ」

「うん、ちょっと」

 るり子はいたずらっぽい表情を浮かべ、上を向いた。

「鏡君としたんだってね」

「え?」

「とぼけても無駄よ。真紀先生に聞いてきたんだから」

 弥生は真っ赤になった。

「とっても気持ちよかったんだって? イキまくりだったって話聞いたけど」

「そんなことないもん」

「うそ。じゃあ、どうしてわたしがさわったらいやがるの。鏡君だったら拒んでないんで

しょう?」

「そ、そんな」

「もう何回やったの」

「二回……」

「で、今日は三回目を待っていたってわけね」

 弥生は首を振ったが、耳まで真っ赤になっていた。

 るり子は少しの間腕組みをしていたが、ふいにやわらいだ表情になって弥生に近づいた。

「ねえ、弥生」

 とるり子はやさしい声音になって言った。

「わたしたち、友達よね」

「う、うん」

「お互い隠し立てすることなんかないよね」

「うん」

「それじゃあさ、正直に答えてくれない? 鏡君って、そんなに気持ちいいの? 上手な

の?」

 弥生は黙った。

「ほんとにそんなに凄いものなの?」

「うん……」

「ほんと?」

 弥生はこくりとうなずいた。

 るり子は天井を見上げ、ふいに、

「そんなに凄いのなら、わたしもしてみようかな」

 とつぶやいた。

 弥生は顔をあげた。

 るり子はいたずらっぽい笑みを浮かべていた。

「ねえ、弥生。わたしの話に乗らない?」

(以下、つづく)


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